「横浜市で殺害された75歳の男性は、手足を縛られ全身に殴られた跡がある状態で発見されました。
千葉県白井市の70代のお母さんと40代の娘さんは、侵入した複数の男に縛られ暴行されて、全身打撲や指の骨折などの重傷。現金約20万円と車も奪われました。
自宅にいた方々を襲った凶悪な手口が、今回連続して起きている『闇バイト強盗』の特徴です」
こう話すのは、防犯アドバイザーの京師美佳さんだ。
警視庁と埼玉、千葉、神奈川の3県警は10月18日、首都圏で頻発している一連の強盗事件の合同捜査本部を設置。
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これまで逮捕された藤井柊容疑者(26)、宝田真月容疑者(22)ら実行犯は、SNSで「闇バイト」に応募し、指示役から指示を受けて強盗に入ったとみられる。
「闇バイトの実行犯となる人間に共通するのは、『すぐお金が欲しい』事情がある『若者』ということ。 ふつう相場が日給1万円のアルバイトなのに『5万円支給』などと書かれていれば『あやしい』と判断するはずです。しかし自室でスマホの操作だけで応募できるため、誰に相談することなく話が進んでしまう。そして気づけば後戻りできなくなっているんです」(京師さん)
宝田容疑者は「SNSで『ホワイト案件』という投稿を見つけ、指示役とつながった」と説明し、「途中で犯罪に加担することに気づき、恐怖を感じた」とも警察に打ち明けているという。
だが、すでに個人情報を指示役に握られており、「仕返しや家族にも危害が加えられるかもしれないと考えると(犯行の実行を)断れなかった」と供述しているのだ。
また、実行犯と指示役のやり取りは、一定時間を過ぎると通信の痕跡が消える設定のアプリ「シグナル」で行っているため、「指示役やその上にいる首謀者は証拠が残らず、捜査で特定されにくい」と京師さんは話す。
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「よって指示役からすれば、実行犯は『いずれ逮捕される』ことが前提で、強盗に入って金品を奪ってくれればいい『使い捨て』です。
だから、殴る、蹴るなど凶悪な暴行の指示も平気で出せるんです」
ところが、実行犯には犯罪歴がない“素人”も多いという。
「指示役からの『暴行して金を出させろ』などというスマホ越しの指示に従っているうちに、暴行はエスカレートする。そして横浜の事件では、被害者の男性が命を奪われるという最悪の結末を迎えてしまったのでしょう」
まさに“後先を考えない”卑劣な犯行。そうなると気になるのは、一連の闇バイト強盗でどんな家がターゲットにされるかだが……。
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「犯行グループは、地図アプリや実際の下見で強盗に入る家を物色していると思われます。一連の事件では、『郊外の、防犯カメラが少ない地域にある、セキュリティの低い戸建て』が狙われているだろうことがわかります。
そういった特徴の家は高齢者が住んでいることが多く、実行犯は『たった数万円から数十万円』を奪うために強盗し、被害者は結果、命まで奪われてしまう。
つまり全国の同様の地域で、セキュリティの低い家が狙われる恐れが高まっています」
京師さんに、身を守る方法を解説してもらった。
施鍵をできる限り重ねて自宅の要塞化を目指せ!
■強盗に入られないための対策
「警察庁のデータでは、強盗などの侵入者は、侵入に5分かかれば7割があきらめ、10分かかれば9割があきらめるとされています。よって侵入に5分以上かけさせれば、防止できる可能性が高くなる。
そのための策をひとつずつ積み上げましょう。犯人は下見の際に、その対策が手薄なところから狙うものなんです」
【1】窓に防犯フィルムを貼る
「まずは、すべての窓に防犯フィルムを貼りましょう。全面に貼るものと、鍵の周囲だけに貼るものもあります。フィルムの厚みは350ミクロン以上を選びましょう」
【2】窓に防犯アラームを設置
「窓用アラームや窓用センサーなど、後から簡単につけられるグッズがあります。製品によって音量がまちまちですので、パトカーと同じ程度の大きさである100デシベルを目安に選びましょう」
【3】センサーライトを照らす
「強盗は暗闇から侵入しようとするため、玄関やベランダに人の動きを感知して点灯するセンサーライトを設置しましょう。光量は300ルーメン以上がおすすめです」
【4】防犯カメラを設置し、防犯ステッカーを貼る
「強盗は人の目につくことを嫌がりますので、防犯カメラを取り付けましょう。もし防犯カメラを導入できない場合でも、『防犯カメラ作動中』などというステッカーを玄関や門扉など、目立つところに貼りましょう。強盗は、防犯カメラがある家を敬遠します」
【5】窓は施錠して寝る、上階の窓も施錠する
「強盗や空き巣は窓から侵入しますので、2階以上でも安心せず、戸締まりを確認して寝ましょう」
【6】玄関や窓の鍵を二重にする
「玄関のドアは二重ロックが基本です。スマートロックという、スマホや暗証暗号で開閉操作できるものも市販されており、大掛かりな工事も不要です」
【7】窓の下に防犯ジャリを敷く
「防犯用のジャリは、軽く踏んだだけで大きな音がします。門から玄関までの動線や窓の下にジャリを敷きましょう」
【8】ガレージにロープを張る
「一連の強盗事件では、現金と同時に車も盗まれています。ロープやコーンを置くだけでも、対策ができている家とみなして、犯人は侵入対象から除外します」
【9】風呂やトイレの面格子はステンレスにする
「古い一軒家の場合、風呂やトイレの窓の面格子が木製の場合があります。これらはすぐ壊せるので、下見で犯人から『対策できていない家』と判断されます。頑丈なステンレスなどに付け替えましょう」
【10】高い庭の木は伐採する
「高い塀や生け垣、庭の植え込みが生い茂っている家は、強盗が侵入するところが外部から見えなくなってしまうので、強盗に狙われやすくなります。木は伐採して見通しよくしましょう」
宅配業者やガスなどの点検を装って侵入しようとする相手には、
【11】置き配や宅配ボックスを利用
「業者に『誰からですか?』『誰宛ですか?』と聞くのは鉄則です。そして対面で受け取らず、置き配やボックスを利用しましょう」
【12】サインが必要なときはチェーンをかけて対応
「直接受け取りが必要な際にも、インターホンで対応してドアの前に置いてもらったり、サインならチェーンをかけたまま、もしも強盗だった場合はすぐドアを閉められる状態でやり取りしましょう」
【13】点検商法は身分証を確認、会社に問い合わせる
「点検の事前告知がない場合には玄関を開けない。ガス会社や警察と名乗られても、インターホンで身分を確認し、自分は家の中でスマホなどで電話番号を検索し、その会社や警察に在籍を確認しましょう。確認が取れた場合だけ、ドアを開けましょう」
【14】不審者はすぐ通報する
「突然、玄関をガチャガチャと開ける気配や、不審な人の気配があったら、警察の業務に迷惑だなどと思わず、迷わず通報しましょう」
■強盗に遭遇……命を守る方法
「闇バイト強盗に入られた被害者は、暴行されたり、命まで奪われる残忍な手口に遭っています。万が一、家に入られてしまったら、とにかく『命を守る』こと。犯人に1秒でも早く、家から出て行かせることです」
【1】お金を出す
「『金はどこだ?』と言われ拒否すれば、ひどい暴行をされる恐れが増します。お金の場所はこの際、言うしかありません」
【2】通帳のありかや暗証番号も言う
「下手にかけひきして、ありかと違う場所を言ったりしたら、暴行がエスカレートする危険もあります。言って命を守りましょう」
【3】逃げられるなら逃げ出す
「犯人が窓を割っている最中などで強盗に気づいた場合、逃げられればとにかく外に逃げます。 もし外に逃げる時間がないと判断したら、トイレやお風呂など、鍵がかかる部屋に逃げて110番して、時間を稼ぎましょう」
【4】トイレにもスマホを持ち歩く
「スマホを常時、在宅時でもポケットに入れるなど、携帯しましょう。そうすれば、トイレにいるときに強盗の侵入に気づいても、すぐ110番できます」
【5】トイレや浴室、寝室に置いた防犯ブザーを押す
「児童用の防犯ブザーでいいので、トイレや浴室、寝室にも置いておきましょう」
【6】捨て金を用意しておく
「盗られても仕方がないとあきらめられる『捨て金』を用意しておきます。まず5千円から3万円を用意して、『金を出せ』と言われたら出しましょう」
理不尽で残忍な犯行に、命まで奪われるわけにはいかないのだ。
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