伊勢丹新宿店が、本館4階の婦人服/ラグジュアリーフロアの一部改装中だったエリアを11月1日にリフレッシュオープンした。
ラグジュアリーブランドで「服」を買う顧客層が多い本館4階
三越伊勢丹ホールディングスは、2021年に発表した2022〜2024年度の中期経営計画で掲げた「高感度上質戦略」と「個客とつながるCRM戦略」に基づき、商品や店頭のリモデルを推進している。
伊勢丹新宿店本館では、今年1月に実施した3階「トラストスタイル」のリモデルに続き、今回4階の婦人服/ラグジュアリーフロアの一部ラインナップを新たにリフレッシュオープンした。他フロアも今後順次見直しを行っていく予定だという。
本館4階は、同店の中でも特にファッション感度の高い顧客を擁するフロア。ラグジュアリーブランドの多くの店舗は、バッグやジュエリー等の小物類が手に取られる機会が多いが、同フロアでは雑貨だけではなく服の売り上げ比率が他店舗に比べて高いという。今回のリフレッシュオープンでは、1対1のサポート体制での接客が可能な売り場づくりで、体験とファッション提案の上質化とパーソナライズを追求している。
取締役執行役員 営業本部伊勢丹新宿本店長の近藤詔太氏は「上質、高感度を目指した3年間の再生フェーズは、残り半年を残して、ルイ・ヴィトンをはじめとする上質なブランドが加わることで完成に近づいてきた。とはいえ、お客さまのニーズはどんどん先に進んでいくので、バイヤーはさらに先を見越してニーズを捉えていく。これまでは“品揃えが先”だったが、日々変化する顧客のニーズを捉えた商品を揃え、その“品揃えをお客さまにお伝えしていく”というサイクルが軌道に乗ってきている。今後もお客さまの期待に応えていきたい」と話した。
ラインナップはどう変わる?
◆メンズ館に続き2店舗目 顧客の声が出店を後押しした「ルイ・ヴィトン」
リフレッシュオープンの目玉となるのは、「ルイ・ヴィトン(LOUIS VUITTON)」。今年3月にオープンした伊勢丹新宿店メンズ館 2階に続く伊勢丹新宿店では2店舗目で、新宿エリアでは4店舗目となる。なお、伊勢丹新宿店の向かいにある路面店も引き続き営業を続けている。
ルイ・ヴィトンは長年、伊勢丹新宿店の顧客たちから最も出店を望む声が多いブランドだったが、様々なブランドが融合した“編集的”なフロア構成を目指す同店と、ブランドの世界観を重視するルイ・ヴィトンの店舗づくりの方針がマッチせず出店が叶わずにいたという。しかし、近隣の路面店へ伊勢丹新宿店の顧客たちも多く訪れており、「伊勢丹新宿店とルイ・ヴィトンの顧客層に親和性がある」と理解が得られたことや長年の交渉が奏功し、出店が実現した。こうした背景から、百貨店に入居するルイ・ヴィトンとしては珍しく、フロア内での回遊を意識した開放的な店舗デザインが採用されている。
新店舗では、ブランドを雑貨ではなく服で取り入れる客層が多いという4階の特徴に合わせて、雑貨中心ではなくコレクションに登場したアパレルアイテムやシューズ類を幅広くラインナップ。オープンを記念して高額な限定品や先行販売品も取り扱っている。
◆百貨店初の「フィービー・ファイロ」
日本展開開始が発表され注目を集めている「フィービー ファイロ(PHOEBE PHILO)」の取り扱いも開始した。伊勢丹新宿店は、10月26日に展開をスタートしたドーバー ストリート マーケット ギンザ(DOVER STREET MARKET GINZA)に続く国内2店舗目のフィービー・ファイロの取り扱い店となり、国内百貨店では初。
ローンチに際し、4階の売り場ではフィービー・ファイロにフォーカスしたコーナーを展開している。本国のスタッフが手掛けた店頭空間には、同店の顧客たちの好みに合わせた、ウェアからバッグ、シューズまで幅広いカテゴリーのアイテム約60点を並べている。
◆日本のものづくりを象徴する「オーラリー」と「マディソンブルー」
ルイ・ヴィトンの向かいには、「オーラリー(AURALEE)」初のウィメンズ専門店と「マディソンブルー(MADISONBLUE)」の百貨店初の店舗がオープンした。
今回のリフレッシュオープンの目玉であるルイ・ヴィトンの向かいに敢えて両ブランドの売り場を配置し、日本発のものづくりを行うブランドにフォーカスしている。両ブランドの選定理由に関して、バイヤーは「クオリティの高さ」を挙げ、「フロア内の他ブランドと比べるとややカジュアルに見えるかも知れないが、ものづくりのクオリティという点では納得していただけるのでは。“ステータス性ではない、次世代のラグジュアリー”を提案していきたい」とコメントした。オーラリーは本館3階のリ・スタイルでも取り扱いがあったが、今後は4階の新店舗に集約される。
◆4階フロアでは初のビューティブランド、「パフューマー エイチ」日本1号店
ロンドン発のフレグランスブランド「パフューマー エイチ(Perfumer H)」も、同フロアに日本初となる店舗を構える。伊勢丹新宿店の同フロアにビューティブランドが出店するのは今回が初。同フロアを利用する顧客はビューティブランドへの関心も高いことから、今後はビューティアイテムもライフスタイルの一環として提案していく。
◆エスカレーター横にジュエリーの編集区画が登場
4階では「カルティエ(Cartier)」や「ブルガリ(BVLGARI)」などのジュエリーの売り場があるが、ファッションブティックとジュエリーの区画が分断されがちだったことを受けて、有機的に買い回りがしやすい構造に変更。フロア中央の人通りの多いエスカレーター横エリアにジュエリーの編集区画を設けた。
ここでは、「シシージュエリー(Cece Jewellery)」や「マリーエレーヌ ドゥ タイヤック(Marie-Hélène de Taillac)」、「ソフィ ビル ブラーエ(Sophie Bille Brahe)」、「ロビンソン ペラム(Robinson Pelham)」といった海外のファインジュエリーブランドを取り扱っている。
カラフルな色彩や可愛らしいモチーフを使用したデザインが特徴的なこれらのブランドは、これまで展開してきた宝飾エリアに並ぶファインジュエリーとは雰囲気が異なる。バイヤーは「新しい提案になると思うが、このフロアに生まれつつある若い世代のお客様にも気に入っていただけるのではないか」と話す。
◆「ヘルノ」、「ザ・ロウ」がリフレッシュオープン
このほか、「ヘルノ(Herno)」と「ザ・ロウ(THE ROW)」が4階にリフレッシュオープンした。元々3階に入居していたザ・ロウは4階に移転となった。
◆顧客層の若返りでコンテンツも変化
同フロア独自のセレクトショップ「プライムガーデン」は、これまでは独立したスペースを用意していたが、各ブランドの区画を縫うような配置に変更。ブランドごとの空間と編集コーナーを組み合わせることで、買い回りを促進する。
区画の中心には近代デザインの椅子が並ぶラウンジスペースを設けた。主に接客用に利用されるが、配置されている椅子の注文も受け付ける。
プライムガーデンの客層はこれまで50〜60代が中心だったが、近年は30代半ば〜40代が中心となり若返りが起きているという。客層の変化に合わせてコンテンツを変更し、従来のアイテムショップのようなイメージから「ラグジュアリーでありながらリアリティがある」空間への刷新を図る。