金融庁に出向中の30代男性裁判官によるインサイダー取引疑惑で、裁判官がTOB(株式公開買い付け)の審査業務を自ら担当していない企業の株も売買していた疑いがあることが1日、関係者への取材で分かった。所属部署では毎月、TOBを予定する企業の一覧表が担当者間で共有されていたことも判明した。
証券取引等監視委員会もこうした事情を把握。裁判官が一覧表を基に、担当外の企業についても不正な株取引をしていた可能性があるとみて調べている。
関係者によると、裁判官は金融庁企画市場局企業開示課に所属し、TOBを予定する企業の書類審査を担当していた。4月の出向直後からTOB情報などを基に本人名義で株の売買を繰り返し、少なくとも数十万円の利益を得ていた疑いが持たれている。
取引した銘柄には、裁判官が審査を担当した企業もあれば、担当外のものもあった。同課の担当者間では、月ごとにTOBを予定する企業名などが記載された一覧表が共有され、自身が担当しない企業の情報も知ることができたという。
監視委は今夏以降、金融商品取引法違反容疑で裁判官の関係先を強制調査。東京地検特捜部への告発も視野に、情報入手の経緯や取引状況について調べを進めている。
金商法は、TOBなどの重要事実を知った会社関係者らが公表前に株取引する行為を禁止しており、企業に対して法令に基づく権限を持つ公務員が業務で知った未公表情報を基に取引することも規制の対象となる。