主人公が絶体絶命の窮地に陥り「最悪だ……」とつぶやくや否や、すぐにそのピンチを脱出。かと思えば早くも次の絶体絶命の窮地が訪れ、またもや「最悪だ……」と延々繰り返しながら徐々に潜入先の詐欺組織の本丸に迫っていくドラマ『潜入兄妹 特殊詐欺匿名捜査官』(日本テレビ系)も第5話。
今回も、もう何回訪れたかわからない潜入兄妹の妹・ユキ(八木莉可子)の命が危険にさらされているところからスタートです。
振り返りましょう。
■もはやポカすらも愛おしい
巨大詐欺組織「幻獣」の4幹部の1人である青龍(桐山漣)に拉致されたユキ。イスに縛り付けられて今にも殺されてしまいそうです。
そこに連れてこられた兄・キイチ(竜星涼)に、「おまえカラスだろ」という濡れ衣が着せられているようです。「カラス」とは、運び屋を専門にタタキ(強盗)を繰り返している謎人物。青龍がタタキに遭った運び屋を詰めたところ、カラスの正体を「マルヤマキイチ……」と吐いて死んだことから、キイチとユキは殺されることになりました。
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手始めにユキから殺すことにした青龍ですが、キイチは寸前で自分がカラスの正体を突き止めると宣言。期限は日没までの約3時間。キイチには青龍の手下が見張りとして同行することになりました。
青龍のアジトから出発する寸前、この見張りの電話が鳴り、同行のチンピラ4人ともがその電話に気を取られてキイチを逃がしてしまうという大ポカが発動。1人エレベーターに乗り込んだキイチは自分を潜入させた入間刑事(及川光博)に電話をかけ、ユキの救出を依頼しますが、すげなく断られてしまいます。
そうしている間に見張りに追いつかれ、再び青龍の手下たちと行動をともにすることになったキイチ。とりあえず仲間の美波(入山杏奈)たちが待つハコに戻って作戦を練ることに。
そこから、殺された運び屋の使いだった2人、青龍の手下の見張りらを巻き込んだキイチのカラスあぶり出し大作戦が始まり、今回も見事、キイチはその目的を果たしてユキの救出に成功するのでした。
そして次回はいよいよ幻獣のトップである鳳凰(藤ヶ谷太輔)と対面することになるみたいです。
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ところでこの作品における最大の愛されキャラである幻獣の始末屋・櫛田(フェルナンデス直行)ですが、今回もとってもかわゆい振る舞いを見せてくれました。
ご自慢のネイルガンでユキを殺したくてウズウズしちゃう櫛田、青龍に止められて殺すことだけは我慢していますが、ユキに向けてギリギリのところにネイルガンを打ち込むというウイリアム・テルごっこを楽しんでいたかと思えば、ユキが「トイレ……」というと素直に縛っていたロープをナイフで切って、ご案内。
さらに、トイレからの帰りには油断したところを(油断しちゃうのかわいい)ユキに消火器をぶちまけられ、逃げられてしまいます。
それでも焦ったり走ったりするとキャラが崩れますので、あくまでゆっくり歩きながらユキを探す櫛田。結局、無事にユキの身柄を確保することができましたが、あのまま逃げられる可能性も大いにあったからな。もはやそんなポカさえも愛おしい櫛田なのでありました。
今後、櫛田が顔をゆがめて命乞いをするシーンとかあったりするのかな。興奮しちゃうな。
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■なぜポカが許せるのか
今回、見張りと櫛田が犯した大ポカは、サスペンスにおいて大きく興を削ぐタイプのミスでした。しかも、2人ともケータイに気を取られているうちにスキを突かれるという、同じパターンのミスを犯しています。
でも、全然テンションが下がらないんですよね。作品全体を香港ノワールの雰囲気で統一しているので、これくらいの脚本上のポカは「香港映画あるある」として容易に受け入れることができてしまう。さらにむちゃくちゃなテンポで次々に命の危機が訪れているし、ポカによって大きな逆転が起こっているわけではない、一時しのぎにしかなっていないという状況にポカそのものが押しつぶされていく感覚があるわけです。
第1話のレビューで、「脚本だけ見たら作り込みの甘いところもありそうだけど、いかにも香港ノワールな美学で押し切ってほしい」と書きました。今のところ、めっちゃ押し切られてる。楽しまさせられています。
ノワールの美学はラスボスの美学ですからね。藤ヶ谷くんの鳳凰がどんな感じのラスボス像を見せてくれるのか、楽しみにしたいと思います。
(文=どらまっ子AKIちゃん)