今や日本人の3人に1人は<推し>がいる時代。アイドルやアニメ、キャラクターなどを<好き>という気持ちを超えて応援する活動=<推し活>という用語もすっかり浸透した。推し活にまつわる市場規模もますます成長しており、興味を持ち始めた人もいるはずだ。そこで『推し活を20倍楽しむ 〜オルタナ好きの僕がグループアイドル沼に嵌った15年と学んだ秘訣20』の著者・中村辰之介さんに、推し活初心者に向けて、推し活を満喫するためのノウハウを、自身の経験から語ってもらった。
【写真】アクスタにメッセージカードなど、中村さんの”推しアイドル”グッズ■推し活って何をするの? 初心者にオススメの推し方
「自分の<推し>を誰かに推薦するためには、その対象について自分が知る必要があると思います。今はネット上にいくらでもアーカイブがありますし、最新曲で好きになったらYouTubeで過去曲を聴く、過去のSNSやブログを遡るなど、推しを掘り下げる方法はいくらでもあります。
過去作を掘り下げるのはけっこう時間のかかる作業ですし、タイパ重視の時代にはそぐわないかもしれません。それでも自分の好きな対象くらいは、じっくりと向き合ってみてはどうでしょうか。ある程度の前知識があるのとないのとでは、握手会やコンサートで見える景色もまったく違うものになる、という考え方もあるのではないでしょうか」
■CD・アクスタ・うちわ…、いろんな推しグッズの保管・収納方法は?
「推し活とグッズの保管問題は、常に背中合わせだと思っています。僕のワンルームマンションの部屋も、いつしかCDやDVD、写真集……などなど、気づけばアンコールワットなみの山ができていました。中でもコンサートグッズなど<ここでしか手に入らないモノ>の誘惑にはなかなか抗えません。ガチ勢の中には、グッズ保管用倉庫を借りる方もいるようです。
とは言え、スペースは限りあるもの。僕の場合は引越しをきっかけに、そのグッズの価値はモノとしての<質量>なのか、<思い>なのか? を再考しました。そして大部分のグッズをスマホの写真に撮り、処分することを決意しました。それ以来、僕はよほど手元に置いておきたいモノ以外は、なるべくデジタル(NFTの生写真、電子書籍など)を選択するようになりました。
もしも推しグッズの質量が生活スペースを圧迫しているのなら、データで残すことを考えてもいいかもしれません。万が一デバイスを紛失した時のために、クラウドに保存することもおすすめします」
■地元でできる意外な推し活
「推しのコンサートや活動が行われるのは、主に大都市圏。僕もその1人ですが、地方勢にとって推し活は遠征費をはじめけっこう費用がかさむものです。そこで僕は発想を転換させて、<地元×推し>コラボの可能性を図ってみました。
具体的には地元出身のアイドルをアンバサダーとして市役所に提案したのです。就任したら地元に来てくれる機会も増えるに違いない──。そんな思惑が僕を突き動かしました。残念ながら僕のプレゼンは採用に至らなかったのですが、その翌年になんとそのアイドルが市を超えて県の観光大使に就任したのです!
地元の活性化に前向きな自治体は多いですし、僕の経験からもしっかりした内容なら聞いてくれる団体多いはず。地元出身の推しを盛り上げたいという方は、ぜひ試していただきたいです。
また昨今は、ふるさと納税を推進する自治体でアイドルやマンガとのコラボが進んでいるようです。納税なんてうれしいものではないですが、推しのためになるなら少し前向きになれませんか?」
【中村 辰之介プロフィール】
1983年、愛媛県宇和島市出身。奈良大学大学院文学部国文学科修士課程修了。現在、出身地で会社勤務。「栄、覚えていてくれ」名義でnote、ブログを中心に活動。クラウドファンディングにて自身の雑誌『かける人』を年1回のペースで発刊。kindle電子書籍による著書に『推し事3.0宣言』、『黄昏の彼女たち〜AIイラスト+人間俳句』、『持続可能な推し事〜推しと金、ファンと金〜』がある。
(取材・文/児玉澄子)