みなさんが住んでいる地域では、近隣の学校で運動会がありましたか。ちょうど10月の終わりの頃に開催された学校も多いことと思います。子どもたちががんばる姿は、本当に感動的ですよね。
ですが、子どもたちの活躍の裏で、教員がどのような準備や努力をしているか知っている人は少ないのではないでしょうか。
この記事では、教員がどのようにして運動会という一大イベントを成功に導くのか、その裏側の努力や工夫についてお話しします。準備の過程で直面する課題や保護者との連携など、教員が何をしているかぜひ知っていただけたらと思います。
◆そもそも運動会の意義と目的とは
運動会は単なるスポーツイベントではありません。子どもたちにとっては団結力やリーダーシップを学ぶ場です。たとえば、ダンス(演技・表現)であれば、振り付けや動きを覚えたり、みんなと動きを合わせたりして、全員で一つのものを創り上げる感動を学びます。
リレーの選手であれば、バトンパスの練習を何度も繰り返すことで、協力や信頼の大切さを学ぶでしょう。リレーの選手になりたくて、毎日走り込みをする子もいます。また、競技の中で勝敗を経験し、成功や失敗から学ぶこともあります。
高学年であれば応援団や得点係などの役割をもち、みんなで協力して運動会を運営する経験もします。一方、子どもたちの活躍や成長の裏側で教員がどのような準備をしているのかというと…彼らの成長を見守り、サポートしています。
用具の準備、装飾や安全対策など、準備もかなり念入りにおこなっています。あれだけ大規模なイベントですからね。子どもたちも練習に必死に取り組みますが、教員も運動会の成功に向けて、時間をかけて丁寧に準備をおこなっています。
◆運動会は「一番忙しい時期」に準備が始まる
小学校では、運動会は春か秋に開催されます。私はどちらも経験したことがありますが、春開催の場合、準備はバタバタです。春は1年間の計画を立てたり学級開きをしたりする時期で一番忙しいからです。
4月の混乱の中、体育部が中心になって運動会運営会議が始まります。担任もその頃から「ダンスの指導、誰がする?」「徒競走のレース順は誰が組む?」などの分担を話し合います。
秋開催であれば、少し長めに準備の時間を確保できます。秋開催の場合は夏休みにダンスの振り付けを考えることが多かったですね。ダンスは一から振り付けを考えなければならないので、結構負担が大きかったです。
応援団やリレー選手の指導担当になれば、休み時間の練習や朝練もありました。応援団は人気の役職なので、「先生!もっと練習したいです!」とやる気にあふれていました。
◆観覧席を工夫して保護者もケア
子どもたちの指導だけではなく、安全面や会場の設営についても考えなければなりません。特に安全対策は超重要。ケガの対応や熱中症対策、道具の点検など、安全は第一に考えていました。
また、保護者の観覧席も結構気を遣います。どの保護者も、我が子のがんばる姿を写真や動画に収めたいですからね。演技をしている学年の保護者へ向けた優先観覧席や、徒競走で走っている子の保護者のための優先観覧席の設置もしていましたし、当日の誘導も大切な仕事です。
「我が子が走っているのに全然見えなかった!」だと保護者も残念な気持ちになります。担任は当日、子どもに付きっきりなので、担任以外の先生が誘導をしていました。
一日中保護者に向けて声をかけているので、運動会終了後、その先生は声がガラガラでした…担任でない先生も、めちゃくちゃがんばっています!
◆先生は運動会前日ですでにヘトヘト
運動会の準備期間中、子どもたちの身体的・精神的なサポートにも気を配ります。春開催でも秋開催でも、練習中はかなり暑く、熱中症にならないよう、こまめに休憩をとったり練習場所を変えたりしていました。
プレッシャーを感じやすい子や勝敗によって気持ちの浮き沈みがある子には、個別のサポートやクールダウンする場も欠かせません。保護者とも連絡を取り合って、子どもたちが明るい気持ちで運動会を迎えられるよう、気を配っていました。
運動会前日は、低学年は早めに下校し、高学年の子どもたちと教員が前日準備をします。高学年の子どもたちが下校すると、大人のみで会場の最終確認をおこないます。
テント設営など大掛かりな作業もあるため、PTAのお父さんたちが協力してくれたこともありました。校庭をきれいにならして、白いライン(石灰)を引きます。ライン引きが格段に上手い先生がいるので、その先生の指導の下、みんなでせっせと会場準備を進めます。
高学年の子どもたちが下校するのが3時で、その後休憩もなく、全ての作業が終わるのは5時をまわることがほとんど。ですので、前日にはすでにヘトヘトです。
◆運動会当日は朝5時に出勤する先生も
いよいよ当日。運動会の朝は、みんなめちゃくちゃ早く出勤します。そもそも準備のため「7時半に勤務開始」と事前に言われるのですが、7時20分くらいに出勤すると、すでにみんな校庭にいます。
一番早い人で5時過ぎには出勤しているそうです。体育部は誰が一番早く出勤できるか競っていると聞きました…
そして、朝の準備を終わらせ、やる気いっぱいの子どもたちを迎えるのです。
限られた時間の中で効率的に準備を進めるために教員はがんばっていますが、保護者が協力的だとかなりありがたいです。道具の運搬やテントの設営は人手がいりますし、子どもたちへの応援や体調管理など、当日の運営のサポートをしてもらえると、教員の負担がだいぶ減ります。
私の過去の勤務校は、PTAの役員さんたちだけでなく、進んで協力してくれる保護者が多くて本当に助かっていました。
◆子どもたちにとって安全で学びのある運動会に
運動会の最後には、6年生の代表の子が「終わりの言葉」として、運動会に対する思いと振り返りを話します。その中で、今でも心に残っている言葉が「自分たちの成長を実感できた」「私たちのがんばりを支えてくれた親や先生に感謝を伝えたい」というものでした。
保護者も目に涙を浮かべながら聞いています。この感動的なスピーチをもって、無事に運動会は終了するのです。
みんなで創り上げる運動会。子どもたちが安全で学びのある運動会をおこなうために、教員が様々な準備や配慮をしていることを、より多くの人に知ってもらえたら嬉しいです。
【あや】
勤続10年の元小学校教員で、現在は民間企業人事部に勤める。会社員・副業ブロガー・Webライターの三刀流で働きながら、教員の転職・副業・働き方改革について発信中。「がんばる先生を幸せにする」のがモットー。X(旧Twitter):@teach_happiness