南葛SC(関東1部)は5日、所属する左SB下平匠、MF秋山大地、MF楠神順平、FW森山翔介の4選手が今シーズン限りで現役を引退することを発表した。
元日本代表MF乾貴士(現:清水エスパルス)に「衝撃を受けた」と言わしめた、技巧派ドリブラーがスパイクを脱ぐことを決断した。1987年8月27日生まれのMF楠神順平は現在37歳。地元滋賀のセゾンFCから野洲高校に進学すると、テクニックを重視した流麗なスタイルで、高校サッカー界を席巻した“セクシーフットボール”の主力として、3年時の高校選手権で同県勢初優勝に貢献。その後は同志社大学を経て、2010年に川崎フロンターレに入団。同年5月のガンバ大阪戦ではハットトリックも達成した。
2013年にはセレッソ大阪へと完全移籍。さらに、ウェスタン・シドニー(オーストラリア)や清水エスパルス、モンテディオ山形などの国内外の複数クラブでプレーし、一級品のテクニックとドリブルでサポーターを魅了した。2020年に加入した南葛SCでも、公式戦通算50試合以上に出場している。
1988年10月6日生まれの左SB下平匠は現在36歳。ガンバ大阪の育成組織から、2007年にトップチームに昇格すると、レギュラーにも定着。2度の天皇杯優勝やACL制覇などを経験した。その後は、大宮アルディージャや横浜F・マリノス、ジェフユナイテッド千葉で活躍。2021年に加入した南葛SCではキャプテンを務める他、関東リーグ2部ベストイレブン(2021年)に選出されるなど、実力は今なお健在だ。
1994年7月28日生まれのMF秋山大地は現在30歳。セレッソ大阪の育成組織から、2013年にトップチームに昇格。2017年にはクラブ史上初のルヴァン杯優勝に貢献するなど、“桜の戦士”として公式戦通算100試合以上に出場。2022年に南葛SCへと加入していた。
1999年8月24日生まれのFW森山翔介は現在25歳。桐蔭学園中学から桐蔭学園高校を経て、明治学院大学に進学。ストライカーとして活躍したことが認められ、2022年に南葛SCに加入。今シーズンはここまで公式戦14試合に出場していた。
現役引退を発表した4選手のコメントは、以下の通り。
■楠神順平
「今シーズンを持ちまして、サッカー選手を引退することを決意しました。野球部のキャプテンで野球をやらせたかったであろう父親の気持ちとは裏腹に、私が幼稚園の時にJリーグが開幕し、三浦知良選手の虜になり、サッカーに夢中になっていきました。三浦知良選手の真似をしてずっとドリブル練習をしていたのを今でも覚えています。小学校、中学校、高校、大学でサッカーを通じてかけがえのない友だちがたくさんできました」
「川崎フロンターレでプロ生活をスタートし、セレッソ大阪、サガン鳥栖、ウエスタンシドニーワンダラーズ、清水エスパルス、モンテディオ山形と6チームでプロとしてサッカーすることの喜びや苦しみ、栄光や苦悩、本当に様々なことを経験させていただきました。すべてのチームでたくさんの思い出があり、心から尊敬できる人たちと一緒に仕事ができて、本当に幸せでした。そして、南葛SCというポテンシャルを秘めたクラブで5年間、仕事をしながらサッカーをさせていただき、新たなチャレンジをしながらも刺激のある毎日を過ごせました。このクラブで引退することができて本当によかったです。
「サッカーをしないことが日常になることがまだ想像できないですが、今はやりきった気持ちとちょっとの寂しさとが入り混じっています。ですが、後悔はないと思えるようなサッカー人生でした。サッカーを通じて、出会ったすべての人に感謝したいです。本当にありがとうございました。そして、両親、妻、子供たち、家族がたくさん支えてくれたおかげで常に楽しくサッカーに打ち込むことができました。本当にありがとう。今年でサッカー選手は終わりますが、これからもサッカーには携わっていくと思うので、どうぞよろしくお願いいたします。最後に、これを読んでいただいた皆さまの人生がサッカーによってより豊かになることを心から願っています。本当にありがとうございました」
■下平匠
「今シーズンを持ちまして、サッカー選手を引退します。5歳の時に初めてサッカーボールに触れ、地元の少年団(TSK粟生SC)に入団し、友だちと一緒にプレーすることで、サッカーの楽しさを学びました。ガンバ大阪のアカデミーでは、考えてプレーすることの大切さを学び、自分をプロのサッカー選手にまで育てていただきました。ガンバ大阪時代には、偉大な先輩方のおかげで、たくさんのタイトルを獲得させてもらいました。初めての移籍で不安も多い中、温かく迎えてくれた大宮アルディージャの皆さん。個性豊かなメンバーと刺激的な日々を過ごした横浜F・マリノス。怪我の多かった自分に、もう一度プレーする機会を与えてくれたジェフ千葉。どのチームでも、期待に応えられたという自負はないけれど、ベストを尽くしたので後悔はないです。嫌なことはすぐに忘れるので、本当にどのチームにもいい思い出しかありません。叱咤激励して支えてくださったファン・サポーターの皆さん、本当にありがとうございました」
「そして、最後に在籍させてもらった南葛SC。『キャプテン翼』を何度も読んで育った自分には、本当に夢のような時間で、少年団に入った時と同じ感覚でした。仕事をしながらサッカーをする。システムエンジニアという職業にも出会い、新たな価値観に気づかせてくれました。両立は大変そうに思うかもしれませんが、辛いと思ったことは一度もありません。家族と過ごす時間は少なくなったけど、最後までサポートしてくれて、本当にありがとう。今年はキャプテンもさせてもらい、今までの自分では考えられないポジションでもプレーさせてもらいました。年齢だけで判断せず、期待して起用し続けてくれた風間監督にも感謝しかありません。最後の最後まで、本当に楽しかったです」
「心残りがあるとすれば、入団する時に岩本GMとした約束、“南葛をJリーグのカテゴリーに引き上げる” 在籍した4年間で1つしかカテゴリーを上げることができませんでしたが、この思いは後輩たちに託したいと思います。葛飾はいい街です。この4年間で大好きになりました。南葛SC・南葛サポーター・葛飾区、力を合わせて世界に向かって羽ばたいていってくれると信じています。今後はシステムエンジニアのほうに軸足を置きます。WEB開発・システム開発のご相談は、僕のSNSにDMください。と言いつつ、ボールも蹴りたいなと思っています。今まで応援して下さった方々と、今度は一緒にボールを蹴りたいし、現役中にできなかったことにもチャレンジしてみたいと思います。18年間、本当にありがとうございました。また逢いましょう」
■秋山大地
「2024シーズンを持ちまして、サッカー選手を引退することを決断しました。正直、まだまだできるという思いはありますが、それ以上に、この先、南葛SC以外でプレーをしたいという気持ちになれなかったのが引退の決め手です。南葛SCで過ごした3年間は昇格という目標を掲げましたが、叶わず悔しい気持ちでいっぱいですが、今後絶対に昇格できると確信しています。それくらい魅力ある最高のチームでした」
「思えばプロ生活12年、約半分はケガでプレーに関わることができませんでした。セレッソ大阪、愛媛FC、モンテディオ山形、ガイナーレ鳥取、南葛SC、それぞれのクラブで関わって下さった監督、コーチ、スタッフ、選手、ファン・サポーターの皆さまに支えられ、ここまで続けてくることができました。本当に感謝しています。思い描くサッカー人生ではありませんでしたが、ルヴァン・カップや天皇杯を優勝できたことや、最後にこうして南葛SCに出会えたことは人生の財産になりました。これからは支えられてきた分、少しでも恩返しができるように頑張っていきます。今まで本当にありがとうございました」
■森山翔介
「南葛SCのファン・サポーター及びパートナーの皆さま。今シーズンを持ちまして、現役生活に終止符を打ち、引退することにしました。振り返るとこの3年間、2度の手術もあり、戦力になれない時期が続き、数字としてもチームに貢献できたというにはほど遠く、理想とはかけ離れた結果でした。それでも正直、まだまだやれるという自信と、結果のついてこない現実とのギャップにもがく日々でした。あと1年挑戦するという考えもありましたが、『今シーズン結果を出せなければサッカーをやめる』と決意し挑んだ1年で、結果を出すことができなかったのが自分のすべてだと感じています」
「南葛SCには大卒で加入して3年。本当にたくさんの出会いに恵まれ、毎日充実した日々を過ごすことができました。大学4年の時に、南葛SCでサッカーを続ける選択をしたこと、本当に良かったです。葛飾区という人情に溢れた街で、たくさんの人と出会い、様々なことを学び、彩りがある3年間でした。今後はサッカーとは離れた仕事に就くことになりますが、自分の今回の決断が正解だったと思えるよう、進んだ道で頑張っていきたいと思います。幸せな3年間をありがとうございました。これからも南葛SCのJリーグ入り、そして日本を代表するクラブになっていく過程を陰ながら応援しております。最後に、これまでのサッカー人生、携わってくださった全員に感謝しています。みなさんと出会えたことが自分の財産です。ありがとうございました! これからもよろしくお願いします!」