サンフレッチェ広島は3日、明治安田J1リーグ第35節で京都サンガF.C.とホームで対戦した。首位の広島は序盤からチャンスを作ったが、相手GKの好守連発もあって得点を奪えず。逆に京都の力強いプレスやカウンターに手を焼いて62分に失点。その後は攻撃陣を次々と投入したが、最後まで反撃は実らず、0−1で敗れた。これでリーグ戦2連敗を喫し、2位後退となった。
「試合を通じていつもどおりのサッカーができなかった」。試合後、FW加藤陸次樹は悔しさを滲ませた。「今日は一つのパスやシュートのところで、自分を含めて一人ひとりがミスをしてしまった。それは改善しないといけない」。京都の強い圧力を受けて、持ち前のアグレッシブな攻撃を発揮しきれず、リーグ戦では31試合ぶり今季2度目の無得点に終わった。加藤は、「相手のプレスのかけかたや守備の仕方に僕らがはまってしまった。本当に今日は全体的に最後のクオリティが低かった。それに限ります」と振り返った。
優勝を争うシーズン終盤に痛い2連敗。ミヒャエル・スキッベ監督は会見で「まずは今日の負けをチームとして受け入れる必要がある。次に向けて落ち着いて取り組み、一つひとつやっていくことが大事」と話した。試合直後にピッチで行うお決まりの円陣では、選手たちにいつもどおり試合の振り返りを伝えつつ、残りの試合に向けて「チームとして一緒にやっていこう」と声をかけたという。
キャプテンのDF佐々木翔も「チームとして気持ちが落ちないように、みんなで『まだまだここからだぞ』と認識してやっていきたい」とチーム全員で次に向かうことを強調していた。
「首位ではなくなったけど、僕らにできることはしっかりと結果を出すこと。まずは自分たちに目を向けて、1戦1戦しっかり『堅く守る』、『チャンスを多く作って決め切る』、そういうことをチーム全員で共通意識を持って前を見て進んでいきたい」
リーグ戦はあと3試合。MFトルガイ・アルスランは残りの戦いを「メンタルゲームになる」と見る。「強い気持ちを持って、メンタルをしっかりコントロールして、残りの試合を戦っていかないといけない」。自力で優勝を勝ち取ることはできなくなったが、残りの3試合で何を見せるかはチーム次第。いつもどおりの強気を最後まで貫きたい。
優勝争いの中でプレッシャーとの戦いもある。京都戦でもいつも以上の力みや堅さがあった。DF新井直人は、「それはしょうがないと思います。やっぱり自分たちが獲りたいものは、それだけの(大きな)ものだと思うので」と話す。プレッシャーは当然あるもの。大切なのはどう向き合うか。新井は、「プレッシャーの中でやれる喜びも当然あるし、そこで力を発揮できるチームが最後にシャーレを掲げていると思うので、そのプレッシャーとともに今は楽しんでやりたい」と続け、「まだ3試合あるし、誰も諦めていないし、簡単には諦めたくない。最終節まで自分たちを信じて勝ち続けるだけだと思う」と前を向く。
試合後、新スタジアムにはサポーターたちから、選手たちを鼓舞するような拍手や声援が響いた。スキッベ体制3年目、勝ち切れない苦しい時期を乗り越えて、怒涛の連勝で優勝を争うところまできた。そんなチームを信じている人たちがいる。このままでは終われない。ホームの声援を受けたアルスランは静かに闘志を燃やしている。
「多くのサポーターのみなさんが自分たちを後押ししてくれるので、このスタジアムでプレーするのが大好きだ。ピッチでは彼らのパワーを感じるし、今日観に来てくれて、僕たちがやれるとまだ信じてくれるみなさんには感謝しきれない。優勝の行方は僕らの手にないけど、僕はこのチームを信じているし、このチームの一員であること、そしてこのサポーターのみなさんの前でプレーできることを本当に誇りに思っている」
取材・文=湊昂大