『昼顔』や『あなたがしてくれなくても』など、“女性の性”に踏み込んだドラマを手掛けた三竿玲子氏がプロデューサーを務める連続ドラマ『わたしの宝物』(フジテレビ系、木曜よる10時〜)。夫の神崎宏樹(田中圭)から日々モラハラ被害に遭っている専業主婦の美羽(松本若菜)はある日、かつての想い人である冬月稜(深澤辰哉)と再会して関係を持ってしまう。そして、稜との子どもを妊娠した美羽はそのことを黙って出産することを決意する、というのが本作のあらすじ。
托卵というセンシティブなテーマだけではなく、疾走感あふれるストーリー展開に注目したくなるドラマである。
というのも、1話で美羽は稜との子どもを妊娠するが、その後、稜は仕事のために訪れたアフリカでテロに巻き込まれて死亡。2話で稜の悲報にショックを受ける美羽ではあるが、苦渋の末に“宏樹の子ども”として出産する。
3話で新しい命を迎えて美羽と宏樹の関係は修復に向かう中、実は稜の死亡は誤報で生存しており、ラストに美羽と稜は再々会を果たす。現在3話までしか放送されていないが、アクセルベタ踏みの進み方を見せている。
◆数話にわたると思っていた妊娠編だったが
改めて各話を振り返る。まず美羽が稜と関係性を持つことに納得感を持たせたいからなのか、1話はほぼ宏樹のモラハラ一色。にもかかわらず、美羽が稜と関係を持ち、さらには妊娠発覚。しまいには稜死亡という衝撃的なラストと、あまりの急展開の連続には驚きしかない。
前作『あなたがしてくれなくても』では吉野みち(奈緒)と新名誠(岩田剛典)が距離を縮める姿にたっぷり時間が使われており、本作でも感情の機微に焦点を当てながらストーリーが進行していくものと想定していただけにより一層驚いた。
また、美羽が様々な葛藤を抱える様子が描写されたり、宏樹に子どものことがバレないように必死に誤魔化したりなど、“妊娠編”は数話にわたると思っていたがそれも外れ。2話ラストに子どもが生まれ、妊娠編もわずか1話で幕を閉じた。
◆もしや「夫に不倫がバレるか」はメインじゃない?
3話では1話のモラハラムーブが嘘だったかのように宏樹はすっかり改心。「美羽にずっとひどいことしてた。会社でいろいろあって」と美羽にモラハラした理由を素直に説明したうえでキチンと謝罪した。
宏樹のキツい言動もしばらく続くと思っていただけにこれまた的外れ。それだけではなく稜の生存も判明。さすがにメインキャラである稜の再登場は予想できたが、それでも3話はあまりに早い。しかも美羽との再会を果たすのもやはり早すぎる。
ここまで面白いくらいに予想を外してきたため、「次は何が起こるのか?」ということを純粋に楽しみながら鑑賞したいと思う。ただ、あえて性懲りもなく今後についてフワッと予想したい。
本作は「托卵をいかにバレないようにするのか?」といった“従来の不倫ドラマみたいなストーリー”を当初はイメージしていたが、ここまで怒涛の展開が続いていることを鑑みると「托卵が発覚した際、当事者を含めて周囲の人間はどのような心境になるのか?」にスポットライトを当てていくのかもしれない。
◆「みんなが大好きな田中圭」が再び崩壊する時
ストーリーはもちろん、田中圭も大きな見どころだ。2話では仕事が忙しくなるため「美羽のことも子どものことも何もできない。何もできないというより、するつもりはない」「育児にも口を出すつもりない、でも金は出すから」と出産前からのネグレクト宣言をしていた宏樹ではあるが、3話では育児に苦戦する美羽に助け舟を出す。
それから育児に積極的に参加するようになり、行きつけの喫茶店のマスター・浅岡忠行(北村一輝)から子どもの写真を見せるように催促されると、「えぇ」と嫌そうにしながらもまんざらでもない表情を浮かべる。
さらには、リビングで1か月検診を控える子どもを抱きかかえながら「頑張るんだぞ」とエールを送り、額と額を付き合わせていた。誰かを愛でている時の田中の演技は眼福であり、1話のギャップも手伝ってついつい頬が緩んでしまう。まさに「みんなが大好きな田中圭」が映し出されていた。
とはいえ、托卵の事実が発覚した時のこの優しい表情が失われるのかと思うとゾッとする。どのように壊れるのかも含め、子煩悩な宏樹にも注目したい。
<文/望月悠木>
【望月悠木】
フリーライター。主に政治経済、社会問題に関する記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。Twitter:@mochizukiyuuki