日本人とユダヤ人の祖先が同じであるとする日ユ同祖論など、日本人のルーツを探る様々な説が、怪異やオカルト好きのみならずあらゆる層を引き付けている。日本人はいったいどこから来たのか――その謎に考古学・言語学の視点から迫り、解明を試みたのが『アマテラス解体新書』(内外出版社/刊)を著した岡本佳之氏である。
岡本氏によると、聖書のなかで紙とされるヤハウェと、日本神話に登場するスサノオは同一の神なのだという。こうした日本神話の神々のルーツ、日本の国名の由来は、歴史好きのみならず日本人なら興味をもつテーマであろう。そして、日本神話を読み解いていくと、島国である日本は、世界と密接に結びついていたこともわかってくる。
そんな『アマテラス解体新書』を著した岡本氏にインタビュー。岡本氏は、日本神話を知れば、日本史はもちろん世界史も楽しめると説く。知的好奇心を刺激する一冊がいかに生まれたのか、話を深掘りしてみた。
――神道関係、特にアマテラスについて記された本や、日本人のルーツを探る本がベストセラーになっています。
岡本:もちろん、僕もその流れに感化された1人です(笑)。ブームが起きたことで、外国と照らし合わせて日本人はこれからどう生きるべきなのか、日本人とはいったいどんな民族なのかと、考える機会が増えたと思います。
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――日本人が多民族融合の歴史をもつという説が盛んに提唱されるようになったのは、いつ頃なのでしょうか。
岡本:シュメール人を日本人の起源とする説は、20世紀前半くらいにはありました。しかし、明治維新から第二次世界大戦の頃は、神道の物語のなかにある天皇を重視していたので、あまり顧みられることはなかったと思います。敗戦後にはGHQによって国家神道が取り除かれ、人々は日本が好きか、日本のアンチかみたいな感じに分かれてしまいました。その後、第三者の科学的な視点がもたらされ、比較的客観的に考えられるようになったのだと思います。あとは、日ユ同祖論の影響もあるでしょうね。
――日ユ同祖論を取り扱った本も増えました。
岡本:日本には神道があり、日本人は他国とは違うんだという若干の選民思想的な部分は、日本人にあると思います。朝鮮半島と日本の文化は似ていて当然なのですが、最近でも隣国の朝鮮半島と中国と日本は違うなどと言われますよね。そんな考えをもつ人でも、朝鮮半島を飛び越えてユダヤに繋げ、中東から文化が日本に伝わったという視点に切り替えると、納得できる歴史考察が可能になったようです。
――岡本さんが日本のルーツに興味を持たれたきっかけは。
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岡本:中〜高校の頃、日本人は海外から骨抜きにされているという陰謀論に触れたのがきっかけです。ただ、陰謀論に触れるなか、裏の組織からの情報なんて僕ら一般庶民にはどおう簡単に来ないはずだろと思いました。そして、謎に深く迫るためには外国に留学するしかないと考えたのです。
――イギリスの大学院に進学したのはそのためですか。
岡本:はい。日本を外国が植民地にしているのであれば、その人たちの勉学のフィールドでどれくらい議論できるのかと気になりました。
――それほど没頭していたのですね。
岡本:ただ、感化されながらも僕のなかでたくさんの疑いがあったのです。調べれば調べるほど、ネットでも本でも、掘り下げた話が出てこないためでした。例えば、フリーメーソンの起源や皇室の起源なんてまったく出てこないんですよ。そんな感じで都市伝説を調べていくうちに、日本人とはいったいなんぞや――という起源的な話に関心を持ったのです。
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――そして、日本人のルーツを調べていくと、日本神話に行きつくのは自然な流れですよね。
岡本:都市伝説のように語られる日本神話の真実を語る人はたくさんいますが、客観的に見ても、考古学的な記録は本当にないとわかりました。日本神話にはアマテラスとスサノオがいて、岩戸神話の場所は高千穂にあるとされますが、そんな昔に日本を建国したのであれば証拠くらい出てくるはず。出てこないならギリシャ神話と変わりません。ただ、地に足をつけて神話を考察すれば、本当の日本人の起源が見えるのではないかとも思いました。
――謎を解明するために、岡本さんはどんな調査を始めたのですか。
岡本:2〜3年前くらいから、YouTubeで都市伝説を扱い始めていますが、日本神話や古代の唯一神の神話を掘り下げて調べ、動画にするようになりました。調べているうちに語源に注目しました。語源は民族が受け継いできた重要な存在です。
――岡本さんは、中東に存在する日本語と似た言葉に注目されていますよね。
岡本:中東には古代エジプトなどの歴史が残り、調べると日本語と似た言葉がある。神話も似ている物語があったのです。もしつながりがなければ、神話が時間をかけて自然に伝わったか、神話を知る民族が移動してもたらされたかの2通りしかない。神話が黙っていても伝わるとは考えにくいですから、民族の移動の視点から調べ始めました。
――その結果、日本の起源はメソポタミアまで遡り、倭は「ウル」が起源で、日本の国名も古代都市の「ニッポー」が起源という考えに行きついています。
岡本:最初に「ヤマアト」と「ヤマト」は似ているな、と思いました。ほかにも、掘り下げたら相当似ている言葉がたくさんあります。もともと日ユ同祖論は、ヘブライ語と日本語の意味が似ているというのが要点ですが、発音だけでなく意味まで似ているんですよ。
――日本人のルーツに迫る調査結果だと思います。
岡本:シュメールの言葉と日本語は似ていないけれど、シュメールと関わったアムール人の生み出す言葉が凄く似ていると。そして、彼らのルーツを辿っていったら、セム語系、いわゆるユダヤ人とされる人たちが誕生する前にいたユダヤ系の人たちもいました。彼らは日ユ同祖論と関係があるし、メソポタミアでシュメール人と共存している記録があったら、シュメールがスメラギになってもおかしくありません。
――『アマテラス解体新書』を読むと、こんなに似ている言葉が多いんですね。
岡本:似すぎているんですよ。なお、日本神話の作られた時代の発音は“は行”が“ぱ行”で、“ふじわら”なら“ふじぱら”と発音します。書き言葉と話し言葉をもとに考察すると、日本神話ができた当時の言葉は、大陸の西のほうから来たんだろうなと思いました。遊牧民がアマテラスという最高神を日本でつくるのであれば、アマテラスは中東では根本的な起源ではないかと考え、アナトリアという場所を調べたのです。
――調べてどんなことがわかりましたか。
岡本:一冊、この地の古代史を集めた本を取り寄せたところ、物語の内容も日本と似ているなと辿り着いた。岩戸神話と同じように神様が隠れているし、暗闇になって帰ってきたら光が戻るシーンも同じですから。なので、起源はトルコのアナトリアだと考えたのです。
――岡本さんは目星のつけ方が的確ですよね。
岡本:僕はそんなに知識量があるわけではありませんし、日本神話を隅々まで読んでいるわけでもありません。ただ、外国の論文の書き方は、目星をつけてその道筋の中で証拠を集めていくのです。日本という名前をつけた民族の起源は中東だという具合に、です。神話も歴史も似ているし、語源も似ているから間違いないだろうと。そして、中東のどこかにアマテラスのモデルがいると考え、道筋にある情報を拾っていくわけです。
――アマテラスの正体が太陽の女神のアリンナと聞いて、驚きました。
岡本:僕の調査スタイルは、決めつけないことです。僕が証拠として出しているのは語源と神話の類似、あとはDNAの話もしています。僕自身が日本人が凄いと思っているか、アンチ日本であるのかということでなく、あくまでも客観的な調査にこだわる。言語が似ていないなら、言語学的な資料を見つけてきてほしいと言います(笑)。
――今回の本は神様をゲームのキャラクターのように描いたイラストもたくさん掲載されていて、親しみやすい作りになっています。
岡本:日本神話のコテコテの世界を広げて、こういう想像もしていいんだよと提示しています神様は神話から想像してもいいし、もとをたどれば神様も神話の話も天体現象だったりするので、いわば擬人化された状態で宗教をして広まったものです。書いている内容は難しいけれど、アニメっぽく今っぽい感じで想像してもいい。僕のYouTubeの視聴者は50代より上が多いのですが、若い層に読んでもらいたいと思います。
――ちなみに、お好きな神様はいらっしゃいますか。
岡本:日本のスサノオやアマテラスだったり、同一視される海外の神様などには共通する本質があります。同じような本質を辿っていけば、僕らに近い感覚でいえば太陽と月と地球の話なのです。地球の要素を擬人化したら古代インドのシヴァ神になりますよねと。地球ができるまでの話と、これから地球で起きる話を擬人化して表現したんだなと思います。だから、どの神様が好きかと言うより、地球ありがとう、神様ありがとうという思いですね。
――最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。
岡本:本の内容は難しいと言われますが、そりゃそうですよ(笑)。僕は外国語で書く論文のような内容を、日本語にして出しているのですから。しかも、固定概念を根本からひっくり返すような考察や証拠の出し方ですから。ただ、この本を読むことによって価値観が広がると思います。日本人は単一民族で縄文時代から続いているから、他の国とは違うと思っている人がいるのなら違う。日本という言葉の起源をさかのぼったら、世界中の人が日本人なのです。読み切った後は、日本人が他の民族よりすごいではなく、世界中の人類みんなが日本人だと思える価値観が生まれ、、世界の見え方が変わると思いますよ。
12月24日のクリスマス・イブに、このアマテラス解体新書の続編となる『皇室と王室の解体新書』が発売されます。この書籍は、日本人の根源的ルーツを解き明かしたアマテラス解体新書を踏まえて、では、現在の皇室というのは、いったい誰がルーツなのかということについて考察しています。
皇室はわかるけど、なぜ王室?と思われたかもしれませんが、近代日本史、特に明治維新を解き明かすには、イギリス王朝の歴史もしっかりと俯瞰して見ていく必要があるんです。結構驚きの連続だと思います。
おそらく、日本初、世界初となるさまざまな歴史の骨格が解き明かされる面白い一冊になっていますので、ぜひ読んでいただきたいです。あまり、知られていない朝鮮史の根源についてもここまで考察して言語化した日本の書物はあまりないと思います。陰謀論で語られるロスチャイルド家やフリーメイソンの歴史についても、かなりフラットに解説しています。彼らがどう日本史に絡んでくるのかもぜひ注目してください。
アマテラス解体新書と今回の皇室と王室の解体新書を読んで土台にすれば、おそらく、読者の方の日本史の考察も捗ると思いますよ。
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