最終ラインが“危機的状況”の日本代表。「インドネシア代表の3バック」を攻略する方法を考える

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2024年11月15日 16:11  日刊SPA!

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格下相手との対戦だが、油断は禁物だ
 2026年6月に開催するFIFAワールドカップ26の出場を目指すサッカー日本代表は、今年9月からアジア最終予選を戦っている。今月は15日(金)21:00(日本時間)よりインドネシア代表と、19日(火)21:00(日本時間)より中国代表と、いずれも敵地で対戦する予定で、グループリーグの戦いが一巡して2戦目に入る折り返しのタイミングになる。
 日本は3勝1分の無敗でグループCの首位に立っているが、今回対戦するインドネシアは0勝3分1敗で5位、中国は1勝0分3敗で最下位となっており、比較的に楽勝ムードが漂っている。しかし、今の日本は決してベストな状態ではない。

◆ケガ人多数で「3バック」しかできない

 今回も27名の選手を招集した日本代表だが、先月に引き続き負傷者が続出している。アーセナルのDF冨安健洋やバイエルンのDF伊藤洋輝は本来は招集されていたでのだろうが、先月に引き続きケガが理由で見送られている。加えて、フェイエノールトのFW上田綺世もケガで今回はメンバーから外れている。さらに、シント=トロイデンのDF谷口彰悟も負傷し、9日には代替メンバーとして柏レイソルのDF関根大輝を追加招集することが発表された。

 上田綺世の代わりか、約1年ぶりの復帰となるセルティックのFW古橋亨梧に注目は集まっているが、危機的状況は先月同様に最終ラインで、FC町田ゼルビアのDF中山雄太も負傷中ゆえに左サイドバックを務められる人材がほぼ皆無な状態となっている。

 相手によってシステムを変更できるチームとしてのポリバレントさは、日本代表の特長のひとつ。だが、今回も選択肢は3バックのシステムに限られてしまっている。由々しき事態にも思えるが、相手の戦い方や特徴を見るかぎり、今回に関しては3バックのほうが相性はいい。

◆「3バックの右」に求められるのは…

 インドネシアは日本と同じく3−4−2−1という並び。そして目指す戦い方も日本と酷似している。攻撃時には両サイドが高い位置を取り、3−2−5という並びでサイドから相手の守備を切り崩そうと試みる。特に、主に左サイドのウイングを務めるオランダ出身のラグナー・オラットマングーンは、積極的に突破を狙ってくる。そのときに日本は誰がマークにつくのかが、ひとつのポイントとなる。3バックの右なのか、もしくはサイドを務める伊東純也や堂安律になるか、はっきりしておかないと失点の機会となり得る。

 その守備のやり方にも関わるのだが、インドネシアは守備時には5−2−3という並びになるが、オラットマングーンは守備時には最終ラインではなく3人並ぶ前線にいる。それを踏まえると日本は3バックの右を務める選手が基本的にはマークにつくべきなのだが、攻撃時はサイドライン際に位置取ることも多いので、状況に応じたマークの受け渡しが必須になる。今回、3バックの右を務めるのは板倉滉になるのか、橋岡大樹なのか、高井幸大になるか、その他の選手になるのかはわからないが、ウイングバックを務める選手との連係は不可欠で大きなポイントとなり得る。

◆「インドネシア代表の3バック」を攻略するには

 インドネシア戦では攻撃時にはサイドのスペースが起点となる。

 前述のとおり、インドネシアは守備時に5−2−3という並びになる。攻守の切り替えが速く前線から積極的にプレッシャーをかけてくる。それゆえに、「2」の並びを形成するボランチの脇に大きなスペースができやすい。

 並びどおりで考えれば、日本の最終ライン3人に対して前線3人でプレッシングに来るので数的同数となる。前線へボールを運ぶビルドアップに苦労しそうに思えるが、ボランチを務める遠藤航か守田英正が最終ラインまで下がり、数的優位をつくれば容易に前方へボールを運べるようになる。そうなったとき、スペースのあるサイドにボールを運ぶ機会が多くなる。そこで三笘薫や伊東純也など突破力のある選手が受ければ、1対1の状況ができあがるので日本にとって大きなチャンスとなる。

 とはいえ、それはインドネシアも承知しているはずだ。3バックがボールサイドにスライドしてカバーリングする体制を整えてくるだろう。そうなったときには、コンビネーションを活用したい。

◆「必要以上に人についていく傾向」を狙うべし

 インドネシアの3バックを形成する選手は必要以上に人についていく傾向がある。それを利用し、シャドーを務めるであろう久保建英、南野拓実、鎌田大地らが引いてボランチ脇でボールを受ければ、最終ラインにスペースをつくることができる。そこをFWやサイドの選手、あるいはもうひとりのシャドーが抜け出せれば、一気に得点チャンスとなる。

 コンビネーションを使ってできたスペースを次々に使って迫る場合は、右に堂安律でシャドーには南野拓実と久保建英を起用すべきだし、サイドでの1対1から崩す場合は右に伊東純也を起用し、左には同チームで活躍する中村敬斗を配置するのもひとつの手に思える。また、最終ラインにできたスペースを狙うのであれば、こちらも同僚の古橋亨梧と旗手怜央を同時に起用する方法もある。

◆ピンチをチャンスに変えられるか

 中国戦でも結論は異なるが、同じようなロジックで考えられる。中国は最終ラインに4人を並べる4−4−2のシステムになると予想される。最終ラインに対して前線2人がスライドしながらプレッシングしてくることを考慮すれば、遠藤航や守田英正が最終ラインに下がる必要はない。また、日本は攻撃時に前線を5人にするため、中国の最終ライン4人に対して1人あまる状況を容易につくれる。ボールサイドとは逆サイドの選手がフリーとなっている状況は、前回の対戦時にもよく見られた。そこで素早いサイドチェンジのパスを得意とする田中碧を起用するのも試合を攻勢に運ぶ一手と考えられる。

 最終予選に入ってからは、ある程度メンバーを固定して戦術の幅も狭くなっている。言い換えれば相手に読まれている状況なのだが、選手のポテンシャルと質で勝ってきている。今の日本の選手たちは質が高く、相手に対して多くの戦術で対応できるだけの力を持っている。

 負傷者の続出を悲観して穴埋め的に選手を代替するのではなく、相手の特徴に対してどう戦うのかを考え、現存の戦力を最大限に発揮する戦術で戦う日本代表が見たい。この2戦はピンチをチャンスに変えて、戦術が生きた試合展開になることを期待したい。

<TEXT/川原宏樹>

【川原宏樹】
スポーツライター。日本最大級だったサッカーの有料メディアを有するIT企業で、コンテンツ制作を行いスポーツ業界と関わり始める。そのなかで有名海外クラブとのビジネス立ち上げなどに関わる。その後サッカー専門誌「ストライカーDX」編集部を経て、独立。現在はサッカーを中心にスポーツコンテンツ制作に携わる

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