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■監督がリドリーなら断る理由はない
映画『フライト』(2013)のプロモーション以来、11年ぶりの来日となったデンゼル。今年70歳とは思えない陽気でパワフルな肉声が取材部屋の隣にある控室にまで響き渡る。記者会見とレッドカーペットイベントの合間を縫ってのインタビュー、疲れを見せないメディア対応からもプロ意識の高さが伺える。
グータッチでわれわれ取材陣を迎え入れたデンゼルが、“さぁ始めようぜ!”と言わんばかりに待ち構えている。開口一番、「出演の決め手は?」と問いかけると、「それはもちろん監督がリドリーだからさ」と即答。「どんな口説き文句だったのか」とさらに追い打ちをかけると、「そんなものはないよ、世界の巨匠リドリー・スコットが映画を撮る、もうそれだけで十分。『アメリカン・ギャングスター』もうまくいったし、弟のトニー・スコット監督(『クリムゾン・タイド』『マイ・ボディガード』)ともいい仕事をしてきたし、それに今回は脚本も秀逸だった。もう断る理由なんてないだろ?」と笑顔を見せる。
ひと足先のインタビューでプロデューサーのダグラス・ウィックは、「デンゼルの家まで押しかけて、彼のためにあつらえたあの美しい衣装を着てもらったとき、マクリヌス役はこれで決まった」と確信したそうだが、それをデンゼルに伝えると、「プロデューサーならそう思うだろうね。ただ残念ながら、そのころにはすでにリドリーと話がついていた。だって、映画に出る出ないは、最終的に監督と話をするものだろ? 少なくとも僕はそうしている。ただ、確かに衣装は素晴らしかったし、ダグのなかでそういう美しい筋書きが出来上がっているのなら、その流れでいいんじゃないかな」と笑いながら寛容なところを見せた。
■独自のアプローチで謎の奴隷商人マクリヌスを怪演
デンゼルと同じように、リドリー監督もまた、彼に全幅の信頼を寄せており、「デンゼルに全てまかせておけばうまくいく。だから彼には演出しない」と豪語していたそうだが、実際にそれは守られていたようだ。「リドリーが優れた監督であるように、僕も優れた役者の一人だという自負があるので、お互いを信頼しながら自由にやらせてもらったんだ。リドリーなら、きっと僕のベストの演技を摘み取って映画のなかに入れてくれているはず。彼の手にかかれば僕も映えることはわかっているし…たぶん、映えていたと思う」と自信をのぞかせる。
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さらに、ポール演じるルシアスと対峙するときの心持ちについてデンゼルは、「突如現れたルシアスに対して興味を持ったマクリヌスは、『彼はどういうやつなんだろう』『彼の内側にあるこの怒りは何なんだろう』『この闘争心、暴力的な態度はいったいどこからくるんだろう』…と、円を描くように観察し、少しずつ、少しずつ、彼に近づいていく…そんなイメージを持ちながら演じていった」と振り返る。
すると突然、デンゼルのお茶目の虫が発動! ニヤニヤしながら、急に何かを一生懸命に絞るパフォーマンスを始める。「できれば言語化してください!」と懇願すると、通訳が、「ギューッと絞れるだけ絞り込んで、その絞り汁をなめる…みたいな感じ?」と想像力でなんとか訳すも、その光景を見ながらデンゼルはゲラゲラ笑っている。まるでジェスチャーゲームの様相だが、伝えようとしていることが、なんとなくはわかるので、これはこれで楽しいやり取りとして心に留めておいた。
■芝居の基本は演じる役を深く掘って探索すること
観察しながら少しずつ核心に近づいていく…本作で見せたデンゼル独自のアプローチは、ほかの作品の役でも適応するものなのか? これに対してデンゼルは、「観察」よりも「探索」のほうがふさわしいと語る。「脚本を読むときに、まずやることは、その物語の奥にあるものは何なのか、シャベルで掘って、掘って、深いところまで掘って、突き詰めるんだ。それが終わったら、あとは全身でその役に飛び込んでいくのみ」と力説。
そしてもう一つ大切なことは、「周りがどういう撮影環境か、演じる人物にどんな歴史があるか」ということも影響してくることがあるという。「特に今回のセットはものすごく、見渡す限りそこは、古代ローマそのもの。きちんと準備をしておけば、これほど演じやすい環境はないと思った。それから、サンダルを履くことも重要なこと。スニーカーでセットを歩くこともあったけれど、何かピンと来ないんだ。やはり、砂ぼこりが足にかぶるあの感覚を味わわないと、今一歩、入り込めない感じがするんだ」と独自のアプローチ法を明かしてくれた。
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