【リマ時事】石破茂首相は15日(日本時間16日)、米国のバイデン大統領との初会談、韓国の尹錫悦大統領を交えた3首脳会談に相次いで臨んだ。来年1月に就任するトランプ次期米大統領の外交姿勢に懸念が高まる中、米国の政権交代後を見据え、日米、日米韓が緊密な連携を継続する重要性をアピール。協力の「固定化」を図った。
「トランプ氏との間でも日米同盟を新たな高みに引き上げ、日米韓の戦略的連携を強化したい」。ペルー・リマでの一連の会談後、首相は記者団にこう意欲を示した。
日米首脳会談は約10分間、3首脳会談は約40分間行われた。アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の合間を縫って集まったのは、トランプ政権発足を2カ月後に控え、協力を再確認するためだ。バイデン氏は日米韓協調の継続に期待感を表明。3首脳が発表した共同声明は「末永く続くようにパートナーシップを構築してきた」とうたった。
日韓とバイデン政権に共通するのは「トランプ外交」への懸念だ。3カ国で進めてきた北朝鮮の核・ミサイル開発への対処方針を踏襲するかは不透明。「米国第一」を掲げるトランプ氏が、中国が影響力を増すインド太平洋地域への関与を弱める、との見方が自民党内にはある。
トランプ氏が多国間の枠組みに懐疑的な点も不安材料だ。中国と北朝鮮は日米韓連携の行方を注視しており、外務省幹部は「トランプ氏側に日米同盟を基軸に他国と連携するのが重要だと分かってもらいたい」と説明した。
首相とバイデン氏の会談は今回が最後になる見通しで、日本政府の視線はトランプ氏に移っている。関係者は「日本防衛で自助努力を求めてくる」と予測。防衛費のさらなる増額や、在日米軍駐留経費の日本側負担(思いやり予算)増加を迫ってくると身構える。
トランプ次期政権に対し、外務省幹部は「まずは安全保障政策の共通認識をつくりたい」と強調する。そのためにも、首相自身が一刻も早くトランプ氏と面会し、日米・日米韓協力を続ける重要性を説くことを目指している。周辺は「石破流で本質的な議論をしたい」と意気込む。
ただ、初顔合わせの早期実現は不透明感が増している。首相は南米歴訪後の帰途に米国でトランプ氏との会談を模索していたが、日本政府関係者は「かなり厳しい調整だ」と認めた。首相は15日、記者団に「具体的に決まっているものはない」と述べるにとどめた。