【写真】田中瞳アナ、インタビュー撮り下ろしショットをチェック!
◆ありのままを綴った初エッセイは「同世代の女性に共感していただけたらうれしい」
本書には、田中アナが5年間のアナウンサー生活で出会ったヒト、コト、モノにまつわる書き下ろしエッセイ20編近くのほか、さまぁ〜ず・三村マサカズ、大竹一樹、狩野恵里アナウンサー、友人の白岩佑奈さんとのトークも収録。テレビやSNSだけでは伝わらない、ありのままの田中アナウンサーの姿を伝える。
初めての出版となる本作のオファーに「ちょっと不安もあった」という田中アナ。「自分について綴ることも、写真を撮られるということにも慣れていないので…。でもこういうお話ってたぶん人生に一回きりかもしれない」と思い切って挑戦した。ものを書くという作業について尋ねると、「中継原稿などは書くこともありますが、仕事のなかで随筆的な文章を書くことはまずありません。自分が得意か不得意かも分からないという状態でした。書き溜めていたものもないし、仕事の合間に一から書き進めた」そうで、「最初は苦しみました。途中から、テーマをかっちり決めて書き始めるというよりも、こういう思いについて書いてみようかなと中身から入って。そこから、じゃ、こういうテーマにしてみようという組み立て方になりました」と試行錯誤しながら筆を進めた。
出来上がってみると、アナウンサーという仕事に触れたものもあるが、働く28歳の女性の等身大の姿が映しだされた内容に。同世代の女性から反響を呼びそうに感じたことを伝えると、「本当ですか?」と笑顔。「あまり意識しては書いていないのですが、同世代の女性の方に読んでいただけたらとってもうれしいですね。自分のSNSのフォロワーの割合を見ると、明らかに女性が少なかったりして寂しいなと思っていたんです。働く女性に共感していただけて、それでフォロワーの割合も増えたらうれしいですね(笑)」。
◆さまぁ〜ずらとのトークで気付き「ちゃんと見て分かってくれてる人がいる」
タイトルの「まにまに」は、「こんな機会は最初で最後かもしれないと思いながら書いているので、ちょっと背伸びした自分の姿を見せたいわけではなくて、本当にありのままの自分、28歳の自分が書いたものとして1冊の本にしたかったので、“そのままに”という意味で」つけた。その思い通り、世間一般に広がっている「田中瞳アナウンサー像」や世の中の人が抱えるイメージに対する「焦り」も吐露するなど、ありのままに、ここまで書いて大丈夫なのか?と思ってしまうほど、率直な思いが綴られている。
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「ヒト編」に登場するさまぁ〜ず、狩野アナ、白岩さんについて尋ねると、「自分のことを話してくれる人って誰がいいんだろうと考えた時に、私、限られた人しかいなくて(苦笑)。さまぁ〜ずさんは、アナウンサーになって最初にレギュラーについた番組で一緒にやっているので、ずっと見てくださっているし、絶対お願いしたいなと思いました」と即答。さらに、「私はいろんな人に自分の悩みを吐露したり相談したりすることが得意じゃないのですが、狩野さんにだけ話していたりすることもあるんです。狩野さんとは同じ番組(『モヤさま』)を担当したっていうこともあって、歳は違えど分かち合えることがあったりして、すごく仲良くさせてもらっているので、先輩なら狩野さん。友達も、その子以外にも迷ったんですけど、高校の友達だけどバイトもずっと一緒にしていて、いろんな面から見た自分について話してもらえるのかなと思ってお願いしました」と、さまざまな側面から見た田中アナを知るにはベストな人選だった様子。
今回公の場でのトークの機会を持ち、新たな気付きもあった。「さまぁ〜ずさんだったら、もちろん普段の収録でもカメラが回っていない間に雑談的に話すことはあるんですけど、自分について深掘りしてもらうことなんてないですし。どう思われているのか、改めて聞くのってちょっと怖いし、お願いしておきながらゾクゾクしましたね」と振り返る。「でも私はこれまで、何を考えていてどういう人なのか分からないということばかり言われてきたので、ちゃんと見てくれて分かってくれてる人が周りにいるんだなと、ちょっとホッとしました」と感謝する。
◆新人時代はギャップに戸惑いや悩みも 『WBS』を通して意識に変化
本書の中でさまぁ〜ず、狩野アナ、白岩さんそれぞれから「自分のことを話さない」との田中評が寄せられていた。「昔からずっと私、人の話ばかり聞いていて、自分の話をしないんですよ。どういう人なのか、ミステリアスとか、何考えているか分からないという印象ばっかり持たれます」と、そこは自分でも認めるところだという。「自分がどうだって言いたいわけじゃなくって。自分にあんまり興味がないのかな…」。
田中自身、学生時代にキャスター経験はあるが、そもそもどうしてもアナウンサーになりたいと前のめりな姿勢ではなかった。入社当初は戸惑いもあったという。「学生の時に初めて見たアナウンサーの仕事というのが、裏側というか、表に出ている顔じゃなくて準備中の姿を見たのが初めてでした。なので、キラキラした派手なイメージがあまりない中でアナウンサーを目指して。実際になってみたら、やっぱりそういうキラキラした派手な職業だって世間から思われるんだなっていうのが、最初のギャップでした。キラキラした仕事に就きたいと思ったんじゃなくて、そうじゃないって思ってアナウンサーになったんですよ。だから不思議な感じでしたね。泥臭い仕事だというのは想像通りでしたが」。また、「意識しなくていいと思いながらも、でもやっぱり比べられる対象がいると、どうしても自分でも気にしちゃいますよね。1年目はけっこう悩みました」と新人時代を振り返る。
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そうした意識の変化は『WBS』での経験を通して生まれたという。「今『WBS』で報道のフィールドキャスターという役割でいろんな現場に行くんですけど、せっかく田中が行くんだから、田中が行く意味というのを考えなくちゃいけないと教えてもらったんですよね。そう言われてから、これやれ、あれやれ、ここ行けと言われた通りにするだけじゃなくて、自分がこう考えたからこういうリポートにしたとか、そういう自分が行った意味をちゃんと持たせるようにしようという意識が生まれたことは大きいと思います」と明かす。
今の田中瞳をそのまま映し出した本作についての思いを聞くと、「もちろん本を世に出すために書いたり撮影したりしたんですけど、いよいよ世の中に並ぶのかと思うと不安で(苦笑)。こんないろいろ書いていいのかな、大丈夫かなとも思いますけど、嘘はつきたくないので、ありのままを綴りました」ときっぱり。「アナウンサーなので、私の中身を別に知る必要はないというふうに思われる方もいるかもしれないんですけど、アナウンサーとしてというよりも、1人の人間として、28年間の短い人生をギュッと詰め込んだ本になっているので、ここに書いていることだけを信じてほしいなって思います」。(取材&文:渡那拳 写真:松林満美)
フォト&エッセイ『瞳のまにまに』は、講談社より11月20日発売。定価1980円(税込)。