女子格闘家ファイル(8)
杉山しずかインタビュー 前編
女子格闘家・杉山しずかが、今年10月に開催されたベストボディ・ジャパン「マッスルモデル&フィットネスモデル2024首都圏大会」のレディースクラス(35〜49歳)首都圏大会で優勝を果たした。杉山は総合格闘技で23勝7敗、RIZINにも出場経験があり、今年7月にはパンクラスで自信初のタイトルを手にしている。「強さ」を競う格闘技、「健康美」を競うベストボディ・ジャパンという、ふたつの挑戦をどのように乗り越えたのか。
【ボディコンテストに向けた体作りも「格闘技に活きる」】
――まずは、ベストボディ・ジャパン首都圏大会、優勝おめでとうございます。
「ありがとうございます!」
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――見た目が......。
「日に焼けていますよね」
――ご自身のYouTubeチャンネル『しぃやんチャンネル』で大会にチャレンジするのを発表したのは、その2週間くらい前でしたよね?
「いろいろと準備もありましたし、YouTubeの動画の編集も自分でやっているのでけっこう時間がかかって、ギリギリでの発表になっちゃいましたね」
――そこでも語っていたかと思いますが、きっかけは各界の鍛え上げた女性たちがさまざまな競技で競うテレビ番組『超人女子』(テレビ朝日系)だったそうですね。
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「そうですね。そこで一緒に出ていたモデルの子や、コンテストに出ている子などキツそうに減量をしていて。私も試合前の減量をする時期に出演した時、そういった子たちに『(コンテストなどに)出たほうがいい』と言ってくれたことで初めて意識しました。そこから数年かかりましたが(笑)」
――実際に、大会に出ようとなった理由は?
「常にいろんなことに挑戦したいとは思っていたんですが、今年7月のパンクラスのタイトルマッチの前に、知り合いの方と話をしたりアドバイスをもらったりして。それで『チャンピオンになれたら挑戦してみよう』と思ったんです。5月くらいには、そういう話になってたと思います」
――パンクラスでの初戦(3月31日・ライカ戦)と、タイトルマッチ(7月21日・重田ホノカ戦)の間ですが、同じ筋トレでも格闘技の強さと健康美を競うコンテストを両立するのは難しいですか?
「始める前は、『たぶん両立はできないだろうな』と思っていました。でもやってみると、格闘技に活きるところが多いなと感じて。格闘技のコーチや選手から、『バランスがよくなった』とか言われることが多々ありました」
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――ボディコンテストに向けて、特に意識して鍛えた部分や、逆に絞った部分はありますか?
「大まかに言うと、私の場合は肩周りの筋肉が足りなかったんです。逆に、ウエストの筋肉が少しつき過ぎていました。お尻はドンッとした感じからプリッと引き上げる感じにしようということで、トレーナーさんと話し合いながらスタートしました。筋量自体はOKをもらっていたので、つき過ぎているところを削っていく感じでしたね」
――格闘家として鍛え上げた筋肉とはまた違うんですね。
「周りのフィットネスモデルの友達を見ても、全然違うんですよね。そこはわかっていたので、正直、自分が向いているとは思っていなかったんです。でも『行けるところまでやってみよう』って半信半疑で始めたら、変化が出てきて、それがまた面白く感じました」
【「RIZIN」などとは緊張感が違う】
――食事はどんなところに注意していたんですか?
「体重制限はありませんでしたが、筋肉のカットをキレイに見せるために減量しました。格闘技の時よりもさらに落としたくらいです。その状態で、カーボローディングというんですが、炭水化物を摂るんですよ。トレーナーさんの指示で、大会当日はカラカラの状態で白米とステーキを食べました。それはなかなか大変でしたね(笑)」
――そんな努力もあって初挑戦で優勝、率直な感想はいかがですか?
「正直、必死でしたね。やってみて『まだ全然できていないな』という部分があると感じました。でもその分、次のステージに繋がったのはよかったです」
――「できていない」というのは、具体的にはどんなところですか?
「たとえば、『こんなに震えるんだ』とか、後から映像を見たら『こんなにうまくできてなかったんだ』といったところですね。ポージングもそうですし、実はコケちゃったんですよ(笑)。あとは、体作り。まだ改善の余地があります。だから、もう1回チャンス(日本大会/11月24日)があってよかったなって感じです」
――震えるというのは、緊張のせいですか?
「緊張もあります。そこは(格闘技で)慣れているつもりではいるんですけど、人数も多いなかで、すごいスピードで進んでいくんです。『次のポーズ、はい次のポーズ』って感じで。だからミスしても修正する時間がないまま、頭が真っ白になりながら動いていました。ヒールを履いて足をピタッと閉じるんですが、もう筋肉が限界で......。自分の感覚ではかなり揺れていたんですけど、映像ではなんとか大丈夫に見えました」
――「RIZIN」などで大舞台を経験していても、それとは緊張感が違いますか?
「全然違いましたね」
――優勝して、周りの反応はいかがですか?
「『よかったね』と言ってもらえますが......自分ではまだまだです」
――これまでも、「美女ファイター」などルックスが注目されたこともあったと思いますが、それについてどう思っていたんですか?
「『美腹筋ママ』とかですね(笑)。自分ではあまり気にしていないです。何も愛称がないよりはあったほうがありがたいし、それをきっかけに存在を知ってもらえることもありますから。そう呼んでいる人も本気で思っているわけではないでしょう。
ただ、まったく格闘技を知らない人に茶化されるような感じは嫌だったかもしれません。ちょっと"イロモノ"っぽく見られるというか......。でも、今はそれも気にならないです」
――最後に、日本大会の目標を聞かせてください?
「当然レベルは高くなるので、今のままだったら100%ダメだと思います。絶対に後悔しないように体をしっかり作り込んでいきたいです」
(後編:総合格闘技16年目で掴んだ初のベルト 「やめたら楽になるのに」と思いながら戦い続けたワケ>>)
【プロフィール】
■杉山しずか
1987年2月11日、アメリカ・ニューヨーク州出身。165cm、57kg。東海大学体育学部在籍中にJEWELSでプロデビュー。1年間のオーストラリア修行後に4連勝を飾り、14年5月のDEEP JEWELS初代ミドル級王者決定戦に辿り着いたが、端貴代に敗れタイトル奪取とはならなかった。一時出産と育児で女子格闘技界から離れていたが、17年2月のDEEP JEWELSで約2年ぶりに復帰、奈部ゆかりを相手に勝利。17年12月にRIZIN初参戦。24年3月よりパンクラス参戦。7月に第4代フライ級クィーン・オブ・パンクラシストを戴冠。10月には、ベストボディ・ジャパン協会が主催する『マッスルモデル&フィットネスモデル2024首都圏大会』のレディースクラス(35〜49歳)で優勝。夫は同じく格闘家の中村K太郎。