武田梨奈「アクション映画祭を開催したい」 藤原季節「インディーズ映画に一生出演していく」映画祭審査員を経験した2人の新たな決意【インタビュー】

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2024年11月27日 18:10  エンタメOVO

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武田梨奈(左)、藤原季節(C)エンタメOVO

 得意のアクションに加え、グルメドラマ「ワカコ酒」の主演でも人気の武田梨奈。NHKの大河ドラマ「青天を衝け」(21)のほか、『佐々木、イン、マイマイン』(21)、『あるいは、ユートピア』(24)など数々の映画に出演する藤原季節。俳優として多彩な活躍を見せる2人は、若手映画作家たちが手掛けるインディーズ映画を愛する一面も持っている。そんな2人がこのたび、映画『からかい上手の高木さん』(24)の今泉力哉監督や、大河ドラマ「どうする家康」(23)にも出演した俳優・山田真歩らを輩出したインディーズ映画の登竜門、第18回田辺・弁慶映画祭(11月8日〜10日、和歌山県田辺市で開催)で特別審査員(総勢5名)を務めた。審査員を経験して改めて感じたインディーズ映画への思いを聞いた。




−俳優として数々のインディーズ映画に出演してきたお二人にとって、インディーズ映画はどんな存在でしょうか。

武田 インディーズ映画の良いところは、大きな縛りがなく好きなものを好きなように作れると思うので、それぞれの個性がより際立ちますよね。メジャー作品とは一味違った刺激を受けています。

藤原 僕にとって、インディーズ映画は俳優としてのモチベーションの原点です。「インディーズ映画を通して、世の中に風穴を開けたい」という思いで、日々頑張っています。“インディーズ=インディペンデント”というように、僕自身も何ものにも縛られず、独立して歩んでいきたいと思っています。

武田 藤原さんのような思いを持つ人は、同世代の俳優に多いですよね。ただ、私も以前、インディーズ映画の『ジャパニーズ スタイル/Japanese Style』(21)に企画からかかわったとき、劇場公開にすごく苦労したんです。そこで、体制の整ったメジャー映画との違いを痛感して。そういう苦労を知った上で、これからもインディーズ映画に携わり、海外にも届けられるように盛り上げていきたいです。

−お2人はこのたび、インディーズ映画の登竜門として知られる第18回田辺・弁慶映画祭で、コンペティション部門の特別審査員を務めました。まずは、映画祭の印象からお聞かせ下さい。

武田 私はこれまで、親しい映画人の方と食事に行くたび、必ずと言っていいほど田辺・弁慶映画祭が話題に上がっていたんです。今年の初めにも、昨年の特別審査員を務めた犬童一心監督(『のぼうの城』(11)、『引っ越し大名』(19)など)からお話を伺い、ぜひ参加したいと思っていました。

藤原 実は、僕の出演した映画が、田辺・弁慶映画祭で賞をいただいたことをきっかけに、全国公開されたケースが何度かあるんです。その時、映画祭に参加した監督や俳優たちが、「いい映画祭だった」と、ものすごく喜んでいて。僕の10年来の知り合いで、“戦友”ともいえる映画活動家/放送作家の松崎まことさんも田辺・弁慶映画祭にかかわっているので、よく話を聞いていました。

武田 そういうタイミングで今回のお話をいただき、勝手にご縁を感じていました。実際に参加してみたら、すごくアットホームで、身近に感じられるすてきな映画祭だなと。

藤原 それと同時に、開会式には地元の政治家の方々も出席されていて、しっかりと地元に根づいている映画祭であることがよくわかりました。18回という歴史を重ねてきた関係者の皆さんの努力を肌で感じ、開会式でのあいさつは緊張しました。会場も立派で、あの大きなスクリーンで自分たちの映画を皆さんにご覧いただき、賞までいただいた体験を、当時参加した仲間と一緒に喜びたかったな…という気持ちが今になって湧いてきました。




−特別審査員として、コンペティション部門の8作品をご覧になった感想は?

藤原 どの作品も問題意識が明確で、ものすごく刺激を受けました。「自分たちの葛藤や感性を自分で映画にするんだ」という初期衝動みたいなものがダイレクトに届き、作り手の最もピュアな部分があふれ出た印象もあり、心をグッと動かされて。おかげで、改めて「コンペっていいな」と思いました。前回も出品した監督が、「去年、田辺・弁慶映画祭で賞を取れず、1人で泣いた」と話していたんですけど、そういう悔しさが生まれるのも、コンペならでは。そこまで熱くなれるのは、素晴らしいことだなと。

武田 この映画祭をきっかけにいろんなつながりが生まれ、これからも監督として作品を撮っていく方もいれば、新しい道を見つける方もいるかもしれません。ある意味、この映画祭の3日間で皆さんの人生が変わるかも…という責任を自覚しながら、審査をさせていただきました。

藤原 俳優賞の選出では、僕と武田さんの意見を尊重していただけたことも、ありがたかったですね。授賞式も素晴らしかったです。受賞した方々の喜びと、受賞を逃した方々の悔しさが一体となり、皆さんの映画人生において重要な時間を過ごしていることが感じられて。

武田 その分、責任も感じて、授賞式で名前を読み上げるときは、自分が出品側として発表を待つときの100倍くらい緊張しました。受賞を逃した皆さんの思いもたくさん受け取ったので、これからも皆さんの作品を見ていきたいですし、いつか皆さんとご一緒できるように、私も頑張っていくつもりです。

−第16回田辺・弁慶映画祭の特別審査員を務めた磯村勇斗さんは、それがきっかけとなり、しずおか映画祭を立ち上げました。お二人は今回の経験を経て、新たな意欲は芽生えましたか。

武田 一緒に特別審査員を務めた映画評論家の松崎健夫さんから、今回の応募作の中にアクション作品がなかったとお聞きして、より幅広い作品が集まるといいなと思いました。それも踏まえて、私自身の中に、アクション映画祭を開催したいという思いが芽生えてきました。海外に負けないように、日本のアクション映画界を盛り上げていきたいです。

藤原 僕は今回の経験を踏まえて、二つのことを誓いました。一つは、今後の「田辺・弁慶映画祭セレクション」(田辺・弁慶映画祭の受賞作を東京と大阪で上映するイベント。通称”弁セレ“)には絶対に通うということ。今までも、テアトル新宿で開催された弁セレには通っていたのですが、見逃した作品も多くて。でも、すべて見なければ駄目だなと。それくらい面白い作品ばかりでしたから。もう一つが、俳優仲間に「田辺・弁慶映画祭には絶対行った方がいい!」と触れ回ることです。そうやって、田辺・弁慶映画祭とインディーズ映画の発展に貢献できたらと。そして僕は一生、インディーズ映画に出演し続けていくつもりです。

−それでは最後に、お二人の今後の予定について教えてください。

藤原 僕の主演映画『あるいは、ユートピア』が、渋谷のユーロスペースで11月末まで公開中です。その後も全国の皆さんにお届けしたいと考えているので、ぜひ期待してお待ちください。

武田 年明けの1月8日からドラマ「ワカコ酒」Season8の放送と、映画『室町無頼』が1月17日に公開します。来年はフィリピンやインドの映画も公開を控えており、海外での撮影も予定しているので、国をまたいで映画に携わり、また日本に戻ってきたいと思っています。

(取材・文・写真/井上健一)

【第18回 田辺・弁慶映画祭受賞結果】

弁慶グランプリ:『噛む家族』馬渕ありさ監督

キネマイスター賞: 『よそ者の会』西崎羽美監督、『噛む家族』馬渕ありさ監督

観客賞 :『噛む家族』馬渕ありさ監督

俳優賞 : 山下諒・二田絢乃・さいとうなり(『温帯の君へ』アンサンブル演技)、宮森玲実(『わたしの頭はいつもうるさい』)

映画.com賞 :『天使たち』木村ナイマ監督

フィルミネーション賞 :『噛む家族』馬渕ありさ監督

わいず倶楽部賞 :『噛む家族』馬渕ありさ監督


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