東海大相模の「悲運のキャプテン」は大学日本代表を目指す 守備の名手はプロ入りにも意欲

0

2024年12月02日 07:30  webスポルティーバ

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

webスポルティーバ

写真

 大塚瑠晏(るあん/東海大3年)の素早く、小刻みなステップは、まるで機敏な小動物を見ているようだった。

 ショートの守備範囲に弾んだゴロに対して、跳ねるように一歩目を切る。バウンドの質を瞬時に見定め、ササッと捕球体勢に入る。肉眼で追うのが難しいほどハイスピードな握り換えで、気づいたら送球動作が終わっている。大塚の守備はこのようにスピーディーなのだ。

「自分は守備が持ち味ですし、なかでもスピードには自信があるので。今日は、少しは見せられたのかなと思います」

 大塚はそう言ってはにかんだ。身長169センチ、体重73キロの小兵。あどけない顔つきも、どこか小動物を思わせる。

【高校時代はセンバツ大会で優勝も】

 11月30日、愛媛県松山市で実施された大学日本代表候補強化合宿に、大塚は初めて招集された。シートノックでひと際目を引いたのが、大塚のフィールディングだった。

 大塚の守備力は、東海大相模に在籍した高校時代から有名だった。ただし、大塚に「悲運のキャプテン」というイメージを持つ野球ファンのほうが多いかもしれない。

 2021年春のセンバツ。大塚が主将を務めた東海大相模は優勝を成し遂げている。しかし、歓喜の瞬間、甲子園のグラウンドに大塚の姿はなかった。急性胃腸炎を発症し、入院を余儀なくされていたのだ。当時を大塚が振り返る。

「胃が痛すぎて、チームが勝ち上がっていく試合も見られませんでした。決勝戦も痛みが残っていて、テレビもちょくちょくしか見られなくて。優勝した時はもちろんうれしかったですけど、その場にいられない悔しさのほうが大きかったと思います」

 再起を期した夏の神奈川大会は登録選手20人のうち17人が新型コロナに感染したため、準々決勝で不戦敗。相次ぐ悲劇に見舞われた大塚は、高校卒業後に東海大へと進学する。大学3年生の大塚にとって、大学日本代表に選ばれることは「悲運のキャプテン」という世間のイメージを書き換えるチャンスでもある。

「高校生の時もジャパンに選ばれることをひとつの目標にしていましたし、プロになるためのひとつの通過点になると思います。来年はなんとかアピールして、代表に選ばれたいですね」

 東海大に進学後も得意の守備に磨きをかけてきた。テーマは「正確性」だった。

「『1球の集中力』を意識してやってきました。とくに冬場はノックを受ける本数も多くなりますけど、最後まで気を抜くことなく1球1球集中しています」

【来年はプロを目指したい】

 その一方で、課題にも向き合ってきた。高校時代は非力なイメージのあった打撃も、今秋の首都大学リーグで2本塁打を放つなど進化してきた。大塚は「高校時代と比べたらバットを振る力がついてきて、インパクトが強くなってきました」と手応えを語る。

 大学日本代表の堀井哲也監督(慶應義塾大)は、野手を選考するうえでポイントにしていることのひとつに「バットコントロール」を挙げる。

「早いカウントからヒットを打てるバットコントロール、2ストライクに追い込まれた後に対応するためのバットコントロール。この両方を持った選手が国際試合で勝つために必要だと、選手たちにも伝えています」

 守備力が高く、打撃での対応力がある大塚は、大学日本代表が求める選手像に合致する。もちろん、大塚も自覚している。

「自分は体も小さいですし、打率を残せるバッティングをしていきたいです。いかに粘って、ピッチャーが嫌がることをできるかが大事だと考えています」

 合宿中の50メートル走計測(光電管による測定)では、27選手中5位タイとなる6秒07をマークした。それでも、今秋のリーグ戦は盗塁シチュエーションでのタイミングが合わず2盗塁にとどまっただけに、「来年は盗塁を増やしたい」という野心を燃やしている。

 大塚は力強く宣言した。

「来年はプロを目指してやっていきたいです」

 今年は宗山塁(明治大→広島1位)がドラフトの目玉になったように、守備力の高い遊撃手はプロ側の需要が高い。来年の秋が深まる頃には、大塚のことを誰も「悲運のキャプテン」とは呼んでいないはずだ。

    ランキングスポーツ

    前日のランキングへ

    ニュース設定