劇場版『名探偵コナン』シリーズの最新作『名探偵コナン 隻眼の残像(せきがんのフラッシュバック)』の情報が解禁され、公開日が2025年4月18日と発表された。
(参考:【画像】『名探偵コナン』青山剛昌による作品も! 尾田栄一郎、あだち充、藤田和日郎、板垣恵介らが描いた『うる星やつら』の豪華イラスト)
今年4月に公開された前作『100万ドルの五稜星』の興行収入はシリーズ最高の約157億円を記録し、シリーズ累計の観客動員数は1億人を突破。新作も大ヒットが予想されるが、劇場版『名探偵コナン』はなぜ、映画業界で押しも押されもしないトップコンテンツになったのか。著書に『名探偵コナンと平成』(コア新書)がある、物語評論家のさやわか氏に聞いた。
「面白いのは、原作漫画『名探偵コナン』のなかに、何度も映画産業についての描写が登場することです。劇場版第1作の『時計じかけの摩天楼』(1997年)でも映画館がひとつの舞台になっていましたが、原作にも、昔ながらの映画館がなくなっていき、シネコンに置き換わっていくことへの寂しさや不安を感じさせるようなエピソードがありました。しかし、ある時期から“シネコンに行って、みんなで映画を観るのは楽しい”というノリが描かれるようになり、同時に劇場版『名探偵コナン』もレジャーとして成立する作品になっていったんです。一人ひとりの観客が作品と向き合うーーという名画座的な映画館のあり方も素晴らしいですが、『コナン』は映画産業の現状に自覚的で、“いまの映画館”にマッチした優れた娯楽作品を志向して、実際にヒットを重ねてきたと言えます」
アニメ映画の定番シリーズといえば、ファミリー向けの『ドラえもん』や『クレヨンしんちゃん』があるが、『コナン』は恋愛あり、アクションありでよりエンタメに振り切っており、「テーマパークに行くノリで、大人が恋人や友人と観に行っても違和感がない」とさやわか氏。みんなで連れ立って観に行き、ポップコーンを食べながら楽しむーーという昔ながらの娯楽映画をアップデートした「シネコン映画」になっており、それだけで映画館にとってありがたいコンテンツだが、右肩上がりで興行収入を伸ばしている背景には、その他の要因もあるという。
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「ひとつには、特に最近の作品が原作との関連性を強めていること。まだ謎の多い作中最大の敵・黒ずくめの組織(黒の組織)の秘密が劇場版で一部明らかになったり、人気キャラクター・灰原哀とコナンの関係が描かれたりと、原作でも見たことがなかったエピソードや設定が盛り込まれるようになりました。当然、原作ファンは興味を持ちますし、初見の観客もシリーズ全体に関心が及ぶようになります。さらに、キーパーソンになるメインキャラクターが作品ごとに変わり、最新作『隻眼の残像』では毛利小五郎がフィーチャーされている。これらはマーベルやDCのヒーロー映画を彷彿とさせる手法で、それぞれの作品が単独で楽しめる内容でありながら関連していて、各キャラクターを掘り下げながら、シリーズ全体でより大きな謎に迫っていく……という、正しいヒットの作り方をしています」
そんななかで登場する最新作『隻眼の残像』の注目ポイントはどこにあるのか。さやわか氏は「長野県」という舞台に着目する。
「本作では長野県警にフォーカスが当たるでしょうし、タイトルからも『隻眼=大和敢助』の『残像=過去』が明かされると予測できます。そのなかでキャラクターが掘り下げられ、この10年で作り上げてきたヒットの方程式、横綱相撲が見られるでしょう。また、キービジュアルに国立天文台・野辺山宇宙電波観測所(長野県南佐久郡)のアンテナのようなものが描かれており、これが物語にどうかかわってくるのかにも注目です。劇場版『名探偵コナン』シリーズはこれまでも国内の観光資源をうまく活用しており、全国各地をまわり、恋愛やアクションを絡めながら謎を解いていくという、寅さん=『男はつらいよ』のような存在になりつつあります」
アトラクション的な娯楽映画の要素が強い作品であることを考えると、「映画的な分析が通用しづらい作品かもしれない」(さやわか氏)という同シリーズ。無心で楽しむのもいいいが、一見本筋とは無関係に思える部分にも、観客を飽きさせない合理的な意図がありそうだということを念頭に置いて観てみると、また違った味わい方ができそうだ。
(橋川良寛)
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