12月に突入し、2024年も残すところあとわずか。政治の世界では「裏金問題」、身近なところでは「令和の米騒動」と呼ばれた米不足などが世間を騒がせた。
一方で、明るい話題が目立ったのはスポーツ界だ。夏に開催されたパリ五輪では、日本選手団が金メダル20個、メダル総数45個を獲得。これは海外で行われた大会ではともに過去最多の快挙だった。
◆野球界も明るい話題が多い一年に
また、プロ野球界では混戦のセ・リーグを3位で通過したDeNAが下克上を成し遂げ、26年ぶりに日本シリーズを制覇。つい先日、横浜市内で行われた優勝パレードには約30万人が駆け付けたという。
そして、9月から10月にかけて日本中を熱狂の渦に巻き込んだのが、ドジャース大谷翔平の活躍だ。メジャーリーグ史上6人目の「40本塁打&40盗塁」を8月下旬にスピード達成すると、史上初の「50-50」もあっさり突破。最後はその数字を「54-59」まで伸ばして、打者一本で迎えた充実のシーズンを終えた。
さらに10月のポストシーズンでも3本のアーチを描くなど、チームの世界一に貢献。遠く離れたアメリカから日本に元気を与えた。
◆新語・流行語年間大賞に不満噴出?
そんななか、2日に発表された「2024ユーキャン新語・流行語大賞」の年間大賞がちょっとした批判にさらされている。
1984年に始まった師走の恒例イベントは、文字通りその年に話題になった新しい言葉や流行った言葉の中から、その年に話題となった新しい言葉や流行語の中から、世の中の状況を巧みに反映したものや、強い印象を残して広く知られた言葉を選出する。まず『現代用語の基礎知識』(自由国民社)の編集部が30語をノミネートし、その中から選考委員会が10語を厳選。さらに年間大賞が毎年12月1日ごろに発表される。
今年の年間大賞に輝いたのは「ふてほど」という言葉だったのだが、これには「初めて聞いた!」「そんな言葉知らなかった!」という意見も少なくなかった。
「ふてほど」とは、今年の1月期にTBS系列で放送された金曜ドラマ「不適切にもほどがある!」を略したワードで、脚本・宮藤官九郎と主役・阿部サダヲがタッグを組んだ今年一番の話題作だった。ただ、全10話を通しての平均世帯視聴率は7.6%にとどまり、大ヒットしたとまではいえず……。放送終了から8か月以上がたっていたことも相まってか、「ふてほど」の年間大賞選出に対して、違和感を抱く声も目立つ結果となった。
◆「50-50」ではなかったことに反発する声も
SNS上などのコメントを見ても、「ドラマの存在は知っていたが『ふてほど』って意味わからず初めて聞いて検索した」という声もあり、ドラマを視聴していたとみられるファンからですら理解を得られなかった様子。
さらに、SNSには「今年は明らかに大谷君の「50-50」だっただろ」、「毎年のように野球界の言葉が選ばれているのに今年に限って『50-50』じゃないの?」など、トップ10に名を連ねていた「50-50」が年間大賞を逃したことに反発する声も少なくなかった。
◆選考委員が“空気を読んだ”可能性も
実は2021年から23年の3年間は、野球界から新語・流行語の年間大賞が選ばれていた。21年は大谷翔平の「リアル二刀流/ショータイム」、22年は村上宗隆(ヤクルト)の「村神様」、そして23年は阪神・岡田彰布監督(当時)の「アレ(A.R.E)」である。
ただ、その3語はいずれも、野球ファン以外にはなじみがないという意見が多かったのも事実。そんな背景もあって、今年は“空気を読んだ” 選考委員が、過去3年の言葉以上に浸透していたと思える「50-50」をあえて避けた可能性も考えられそうだ。
◆数字を伸ばしすぎたことも要因?
また、大谷が「50-50」を凌駕する「54-59」までその数字を伸ばしたことも要因の一つになったかもしれない。
もし大谷が最終的に、「50本塁打&52盗塁」などギリギリで達成していれば、「50-50」と呼んでも違和感はないが、あまりにも打ちすぎた、走りすぎたがために「50-50」の数字がやや違和感を醸し出す結果になったとも考えられる。
いずれにしても、毎年のように規格外のパフォーマンスを披露する大谷だけに、来季は「20勝&50本塁打」など、我々の想像をはるかに超える新しい言葉を流行らせてくれることに期待したい。
文/八木遊(やぎ・ゆう)
【八木遊】
1976年、和歌山県で生まれる。地元の高校を卒業後、野茂英雄と同じ1995年に渡米。ヤンキース全盛期をアメリカで過ごした。米国で大学を卒業後、某スポーツデータ会社に就職。プロ野球、MLB、NFLの業務などに携わる。現在は、MLBを中心とした野球記事、および競馬情報サイトにて競馬記事を執筆中。