高木豊氏が語る現役ドラフト
セ・リーグ編
今年で3回目を迎える「現役ドラフト」が12月9日に開催される。第1回の現役ドラフトからは阪神・大竹耕太郎(元ソフトバンク)や中日・細川成也(元DeNA)などが活躍し、第2回の現役ドラフトからは日本ハム・水谷瞬(元ソフトバンク)が交流戦でMVPを獲得するなど、新たなチームで花開く選手も出ている。
今回はどんな選手が、どのチームに移籍するのか。かつて大洋ホエールズ(現横浜DeNAベイスターズ)で活躍し、現在は野球解説者やYouTubeでも活動する高木豊氏に、現役ドラフトでチャンスが広がりそうな選手について聞いた。
【巨人は投手が候補になる?】
――まず、昨年の現役ドラフト組で印象的な選手はいますか?
高木豊(以下:高木) やはり水谷瞬(日本ハム)です。交流戦で歴代最高の打率(.438)をマークしての首位打者ですから。短期間の交流戦とはいえ、現役ドラフトで移籍した選手がタイトルを獲れるというのは相当なことですし、名前が残る。それも、昨季まで一軍のピッチャーとの対戦がなかったのに、あれだけ打ったんですから立派ですよ。
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佐々木千隼(DeNA)もよかったです(28試合、6ホールド1セーブ、防御率1.95)。DeNAは中継ぎが崩壊気味だったのですが、そこを助けてくれたピッチャーのひとりだと思います。今年は中川颯(DeNA)といい、変則のピッチャーがけっこう活躍しましたよね。短いイニングの中継ぎとして今後も重宝されるかもしれません。
――それでは、今回の現役ドラフト候補となりそうな選手をセ・リーグから聞けたらと思います。まず、巨人からお願いします。
高木 巨人はピッチャー陣の層が昨年よりも厚くなってきましたよね。将来的に有望な若手も育ってきていますし、そういう意味で畠世周(はたけ・せいしゅう/30歳)が候補になる可能性があるんじゃないですか。2016年の大卒ドラ2右腕の畠はデビュー当時から見ていますが、ボールの質がいいですし僕の中では「いいピッチャー」という印象です。
ただ、頼れるボールが真っすぐとフォークぐらいなので、先発よりも中継ぎ向きかなと。ファームで短いイニングを投げていましたが、1イニングを腕を振って、真っすぐとフォークで抑えていくスタイルが確立できればいいですよね。
――ほかに挙げるとすれば?
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高木 大江竜聖(おおえ・りゅうせい/25歳)です。変則左腕だと、どうしても高梨雄平との競争になるでしょうから。ほかにも左腕だと、横川凱が中継ぎに入ったりもしますし、チャンスが少ないんですよ。変則ピッチャーは需要があるので、環境を変えると活躍の場が広がるかもしれません。ヤクルトのようにピッチャー陣の層が薄いチームなんかはハマるんじゃないですか。
【チーム事情で「溢れる」選手も注目】
――阪神はいかがでしょうか?
高木 森下翔太や前川右京、今後の成長が期待されている井上広大、野口恭佑など若手の外野手が増えてきましたよね。それと、甲子園球場の浜風が左バッターに不利なので、阪神は右バッターを多く獲ってきています。その点から考えると、外野手で右バッターの豊田寛(とよだ・ひろし/27歳)あたりは可能性があるかなと。
それか、同じく右バッターで外野手の小野寺暖(おのでら・だん/26歳)。現役ドラフトも駆け引きがありますからね。豊田より実績のある小野寺を挙げておき、他球団が出したいい選手を獲りにいく、という可能性もゼロではないでしょう。
――DeNAはどう見ていますか?
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高木 年齢が引っかかるのですが、候補を挙げるとすれば神里和毅(かみざと・かずき/30 歳)の可能性はあるのかなと。日本シリーズでは守備固めや代走で出ていましたが、打席数は年々減っていますよね。外野手の層が薄いチームのほうがチャンスはあるかもしれません。ただ、現役ドラフトでは若い選手のほうが人気が出ると思うので、そこをどう考えるかでしょうね。
内野手では知野直人(ちの・なおと/25歳)も候補かもしれません。若いですし、内野のユーティリティープレーヤー。パンチ力もありますし、環境が変わってチャンスが増えれば面白い選手だと思います。
――広島で候補になりそうな選手は?
高木 広島は全体的にピッチャー陣がよくなってきました。特に森浦大輔、黒原拓未、塹江敦哉ら左ピッチャーが多いので、同じく左の高橋昂也(たかはし・こうや/26歳)はコントロールに課題がありますし、どうしても溢れてしまうのかなと。真っすぐの球威はけっこういいと思うので、左ピッチャーが不足しているチームなどに行ったらチャンスがあるかもしれません。
ほかに挙げるとすればケムナ誠(けむな・まこと/29歳)。長身からの力のある真っすぐが魅力なのですが、コントロールがまとまりませんからね。なので、制球面がある程度改善されれば、という条件つきです。改善されなければほかのチームでも厳しいような気がします。
【ヤクルト、中日は中堅どころ?】
――ヤクルトはいかがでしょうか?
高木 報道によると、ヤクルトはFA権を行使した楽天の茂木栄五郎の獲得に乗り出しているようですが、そうなると茂木と同じ左打ちの内野手の太田賢吾(おおた・けんご/27歳)あたりは候補になってくるかもしれません。
それと、長谷川宙輝(はせがわ・ひろき/26歳)。ヤクルトはリリーフ左腕に田口麗斗や、2年連続で40試合以上に登板した山本大貴らがいるので、チャンスは少ないんじゃないかなと。サイドスローに挑戦したり試行錯誤しているようですが、それがどう出るかという問題もあります。ただ、真っすぐにキレがありますし球種も多彩なので、使い方によっては面白いかなと。先ほど挙げた広島の高橋と同じく、環境を変えたほうがチャンスが増えるかもしれません。
――最後に中日はいかがでしょうか?
高木 挙げるとすれば、石垣雅海(いしがき・まさみ/26歳)は可能性があると思います。内野の複数ポジションをこなせますし、長打力を秘めていますよね。ただ、近年の中日の内野は若い選手が増えてきて渋滞気味ですし、石垣よりも若い選手を優先して起用していくと思います。試合に出られたとしても基本は控えでしょうし、他のチームのほうが活躍の場があると思いますよ。
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【プロフィール】
高木豊(たかぎ・ゆたか)
1958年10月22日、山口県生まれ。1980年のドラフト3位で中央大学から横浜大洋ホエールズ(現・ 横浜DeNAベイスターズ)に入団。二塁手のスタメンを勝ち取り、加藤博一、屋鋪要とともに「スーパーカートリオ」として活躍。ベストナイン3回、盗塁王1回など、数々のタイトルを受賞した。通算打率.297、1716安打、321盗塁といった記録を残して1994年に現役を引退。2004年にはアテネ五輪に臨む日本代表の守備・走塁コーチ、DeNAのヘッドコーチを2012年から2年務めるなど指導者としても活躍。そのほか、野球解説やタレントなど幅広く活動し、2018年に開設したYouTubeチャンネルも人気を博している。