「開業延期でしばらく使われなくなってしまった空間を何かに利用できないか」。そんなアイデアが先月、相模原市で建設中のリニア中央新幹線「神奈川県駅(仮称)」の工事現場を活用した「さがみはらリニアフェスタ」開催につながった。広大な地下空間で、歌手の河村隆一さんのライブなどが行われた。
リニアは2027年の開業が予定されていたが、JR東海は今年3月、静岡工区の工事遅れなどを理由に延期を表明した。新駅の広さは長さ約680メートル、最大幅約50メートルで、大半が掘削済み。開業は34年以降にずれ込む見通しであることから、神奈川県の黒岩祐治知事は「あの広い敷地が10年近くそのままになってしまうのか」と、延期期間中の活用方法を模索。同駅では地元高校生が吹奏楽コンサートを開いた実績があったことから、音楽イベントでの活用を目指し、同社と相模原市に声を掛けた。
先月9、10日に開かれたイベントには約6000人が来場。深さ約30メートルの地下トンネルにステージが設置され、音が強く反響する中で、河村さんが歌声を披露した。また、トンネル掘削の先端部では県の名所やリニアをテーマとしたプロジェクションマッピングが上映され、地元小学生らが歓声を上げた。
イベントを訪れた同市緑区の中学2年塩谷裕斗さん(14)は「こんなに深いとは思っておらず、異世界のようだった。ここにリニアが来るんだという現実感が湧いた」と話した。
黒岩知事は「今後もエンタメ拠点として活用していきたい」と語った。工事の進捗(しんちょく)状況によって入れる場所や広さが変わることから、今後は観客を入れない動画撮影などでの利用も視野に入れているという。
さがみはらリニアフェスタで歌声を披露する河村隆一さん(奥左)=11月9日、相模原市
さがみはらリニアフェスタで上映されたプロジェクションマッピング=11月9日、相模原市