在京テレビキー局の日本テレビホールディングス(HD)が11月29日、札幌テレビ放送、中京テレビ放送、読売テレビ放送、福岡放送の系列4社が来年4月1日付で経営統合すると発表した。
「読売中京FSホールディングス」を設立し、系列4社が完全子会社として傘下となり、日テレHDが「読売中京FSホールディングス」の株を20%以上持つ形になるという。
今回の発表では「4社を統合して経営基盤を安定させるため」としているが、経営統合する放送局の関係者は今回のドタバタ劇の内幕を次のように明かす。
「4社が経営統合するとの話は今年の春ごろから噂レベルで耳にはしていましたが、実際に説明があったのは発表当日の11月29日の昼ごろのこと。聞けば他の3社も同時間帯に一斉に社内説明会を開いており、情報漏洩にかなり気を使っていたようです。説明会では雇用の維持や働く場所、給与体系などはこれまでと変わらないとの説明がありました。HD化によって新規事業の資金調達などスケールメリットを生かしたビジネス展開に軸を置くことはできますが、地域密着の広域ローカルテレビ局の使命がこれまで通り果たせるかは極めて不透明です」
また、別の放送局で説明会に参加したスタッフは次のように語る。
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「当初は親会社の読売新聞社がトップに入り、4社と日テレの計5社が傘下に入るとの情報もあったのですが、いざ蓋を開けてみれば新聞は外されていました。日テレを軸にテレビをまとめようとする意図は分かるのですが、紙離れなどにより親会社の読売新聞社の経営が右肩下がりなのは明らかで、いずれは介入するでしょう。我々の売上が新聞社の赤字補填に使われるなんて構図も想像してしまいます」
いずれにせよ経営統合となれば、当然それぞれの局の“色”や地域に根差した番組制作などの“個性”は薄まっていくことになるだろう。テレビ局の事情にも詳しい芸能ジャーナリストの竹下光氏は語る。
「地方局においては昔から地元の有力企業が株主や番組スポンサーになっていて、強固な関係性を築いているケースも多いのですが、他の地域の局と経営統合するとなれば、そうした昔ながらの地元の企業との関係も今後希薄化していく可能性はありますよね。それに、気になるのは今回の経営統合からあぶれた他の系列局の今後の動向です」
テレビ誌ライターが後を引き継ぐ。
「大都市にある4社は地方局の中では比較的“体力”があるということで、ある意味、経営統合で済みますが、他の地方局に関しては将来的には子会社よりも規模の小さい“支局”のような扱いや、最悪の場合は統廃合の対象にもなりかねませんからね。例えば、九州を例にすると福岡放送以外の各県にある“支局”には撮影スタッフなど番組制作に最低限必要な人材だけを置いておき、編集業務などはすべて福岡放送に集約する。当然、総務や人事、経理、広報などの業務もしかりです。そうなると当然、各地方局で大規模なリストラなども敢行されることになるでしょう」(テレビ誌ライター)
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経営統合する4社のみならず、他の系列局は今後さらに深刻な状況に追い込まれる可能性が高いというのである。別の在京テレビキー局の局員はこう話す。
「地方局を束ねてHD化したということは近い将来、社員をHDに転籍させることができる。そこでの給与体系は今から自由に決められるので、間違いなく今より下がるだろう。賃金が下がれば優秀な人材が離れ、悪循環にハマってしまう。さらに、今回の日テレのHD化がある程度成功を収めたら、他の民放キー局にもその流れが飛び火するのは必定。経営状況が芳しくないフジテレビ系列あたりが真っ先に着手しそうだ」
日テレ系列4社の経営統合はまさにテレビ業界の地盤沈下を象徴するような出来事と言えそうだが、果たしてテレビがかつての輝きを取り戻す日は来るのだろうか。