池田理代子原作による
劇場アニメ「ベルサイユのばら」の完成披露試写会が本日12月8日に東京・TOHOシネマズ六本木ヒルズで行われた。イベントにはオスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ役の沢城みゆき、マリー・アントワネット役の平野綾、アンドレ・グランディエ役の豊永利行、ハンス・アクセル・フォン・フェルゼン役の加藤和樹、ナレーションを担当した黒木瞳、吉村愛監督が登壇。サプライズゲストとして池田も出演した。
【写真】池田理代子が自身の生き様振り返ったイベントの様子(写真33枚)2025年1月31日に上映される「ベルサイユのばら」。同作を鑑賞した観客に沢城が「楽しんでいただけましたでしょうか」と問いかけると、大きな拍手が送られる。公開を控えた心境を聞かれた平野は、同作に携わることにプレッシャーを感じていたことを明かしつつ、「これだったらずっとファンでいてくださる方々も、納得していただけると思えるような作品に仕上がりました」と自信を見せた。
「ベルサイユのばら」への思いを「大好きな作品です」と熱のこもった声で伝える黒木。「池田理代子先生の世界、そして自由・平等・友愛という尊い志を持った人々が、美しくも切なく生きていくこの物語を早くいろんな方にご覧いただきたいなと思っておりました」と目を輝かせた。吉村監督が「ベルサイユのばら」の制作には、企画から8〜9年の期間を費やしたと述べると会場はどよめく。「私も原作のファンなので、原作の表現をそのままアニメにして動かしたいというのが大前提としてあって。各スタッフもみんなそうなんですけれど、そこを大事にしながらアニメを作っていった」とこだわりを伝えた。
沢城は平野と多くのシーンを一緒にアフレコできたと振り返り「相手がいるってことが大きな支えで、よかった」と笑顔。オスカルとアンドレの一部のシーンについては、一度沢城がアフレコしたシーンを、豊永と録り直したいという沢城の願いで再アフレコしたという。「相手がいると温かい気持ちになるので、アンドレとのシーンは音色が少し和らいだかな」と満足げな様子を見せた。対する豊永は「みゆきち(沢城)が『もう1回やりたい』って言ってくれて作ったオスカルを、きちんと受け止められる器の広さというか、ちゃんと受け止めてあげなきゃみたいな気持ちで一緒に現場にいた」と沢城とのアフレコにかけた思いを述べた。
加藤と平野は以前共演の経験があり、その際の役どころもアントワネットとフェルゼンのように身分違いで結ばれない関係だったのだという。平野は「そういった意味でも、お互いわかり合って息もぴったりだった」と冗談めかして笑う。2人はスケジュールの都合で一緒にアフレコすることができなかったそうで、加藤は「彼女のお芝居を思い描きながら、常に心に感じながら(演じた)」と少々寂しげに語り出す。「フェルゼンの男泣きのシーンがあるんですけれども、感情が止まらなくて。今思い出しただけでも涙腺が崩壊しそうなんですけれども。そこでけっこうリンクした部分もあった」と述懐した。
同作は、キャラクターの心情を描く挿入歌も重要な要素の1つとなっている。キャスト陣はアフレコ前に挿入歌のレコーディングに挑み、豊永は役作りに悩んでいる中でのレコーディングだったと打ち明ける。「キャラクターソングみたいな感じにはしたくないなと思っていたので、なるべく心で歌うように、口先・小手先の技術だけに頼らない表現方法ができないかっていうのは、ずっと悩みながら歌唱させていただいていた」と真剣な表情を見せた。加藤が楽曲の難しさについて言及すると、キャスト陣は深く頷いて同意する。一方、「一生懸命歌いました」とシンプルな回答をする沢城。メインキャスト陣の歌唱力を讃えつつ、自身の歌唱については「みんなみたいに細やかなことはできないし、どうしても私はセリフ屋さんなので、歌詞のことばっかりに気が行っちゃうんだけど。今回の私の小さなスローガンは『今回こそ音楽と一緒にキャラクターを作る』ってことをやってみせると思って」と語る。続いてオスカルらしさを出すための手法として、「上(のメロディ)と、1オクターブ下を歌って2線流すことによってオスカルを補完した」と明かした。
「ベルサイユのばら」が自身に与えた影響について、黒木は「『ベルサイユのばら』があったからこそ、今の自分がいると思っているくらい、とても宝物のような作品」と熱弁する。出演のきっかけを尋ねられると、ニュースで「ベルサイユのばら」が劇場アニメになると聞いて自ら出演を希望したのだと答える。「民衆の1人でもいいから『わー』とかっていうのでもいいので、参加させていただきたいって申し上げたんですよ」と黒木が話すと、一同は驚きの声を上げた。さらに黒木からは、20年ほど前に子役をしていた豊永と親子役で共演したことがあるというエピソードも飛び出す。そして母から子にお願いするように、豊永に「私の好きなセリフ言っていただいていいですか」とおねだり。豊永が驚きながらも「オスカル、これが終わったら結婚だ」とアンドレのように凛々しく言うと、黒木は手を叩いて喜んだ。
ここで池田がサプライズゲストであることが発表され、加藤のエスコートで入場するとこの日一番の盛大な拍手で迎えられる。完成した映像を観ての思いを「自分の信念に忠実に生きるという自分の思いが少しも変わっていないこと。周りに迷惑もかけると思いますけれど、そのように生きようと思ったことが少しも変わっていないことに、自分なりに感動しています」と自身の歩みと重ねて語る。「原作にこれほど忠実に仕上げてくださって」と評する映像では、特にフェルゼンの最期のシーンに思い入れがあると言う。「『フェルゼンはアントワネットとの約束を守って、生涯独身を通した』という一節を入れてくださいとお願いしたんです。それを聞いてくださいまして、本当に感動いたしました」と微笑んだ。
「ベルサイユのばら」の50年以上にのぼる歴史に触れられると、池田はその年月に思いを馳せながら「オスカルではないけれども、自分はどういうふうに死ぬのかなと真剣に考えるような歳になりまして。卑怯者としては死なないようにしようと、死を受け入れようと改めて今日思いました」とコメント。少々しんみりとした空気を一変させるように、来る12月18日の池田の誕生日を祝って、サプライズでバラの花束とケーキが贈られる。「もう誕生日を祝うような歳ではなくて。なので、すごく意外でうれしいです」と顔をほころばせた。
最期の挨拶では沢城が「『フランス万歳』という言葉がオスカルのセリフの中にあるんですけど、これがちゃんと言えないとこの作品は終わらないなと思って」と語り出す。「透徹した意志でアフレコを進めていったら、なんとなく自分としては腑に落ちる『フランス万歳』にたどり着けたかなと思っていました」と前を見据えた。そして「貫いたものの先にあった『フランス万歳』だったら、これは絶対大丈夫だと、今とても自信を持って(公開を)迎えることができています」と観客に視線を送る。続いて吉村監督が「これから先もずっと愛され続ける作品の歴史の1つになるっていうことが本当に幸せだなと改めて思いました。これからもずっと愛して、この劇場版も愛していただけるとうれしいです」と挨拶し、イベントを締め括った。
■ 劇場アニメ「ベルサイユのばら」
2025年1月31日(金)全国ロードショー
□ スタッフ
原作:池田理代子
監督:吉村愛
脚本:金春智子
キャラクターデザイン:岡真里子
音楽プロデューサー:澤野弘之
音楽:澤野弘之、KOHTA YAMAMOTO
アニメーション制作:MAPPA
製作:劇場アニメベルサイユのばら製作委員会
配給:TOHO NEXT、エイベックス・ピクチャーズ
後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ
□ キャスト
オスカル・フランソワ・ド・ジャルジェ:沢城みゆき
マリー・アントワネット:平野綾
アンドレ・グランディエ:豊永利行
ハンス・アクセル・フォン・フェルゼン:加藤和樹
アラン・ド・ソワソン:武内駿輔
フローリアン・ド・ジェローデル:江口拓也
ベルナール・シャトレ:入野自由
ルイ16世:落合福嗣
ジャルジェ将軍:銀河万丈
マロン・グラッセ・モンブラン:田中真弓
ナレーション:黒木瞳
(c)池田理代子プロダクション/ベルサイユのばら製作委員会