12月8日に鈴鹿サーキットで開催された2024スーパーGT最終戦の決勝。2024年シーズンから独自開発したGTA-GT300規定車両で戦うGAINER TANAX Zは、レース中にリヤハッチが外れるアクシデントに見舞われるも、そのまま走行を続け8位入賞を果たした。
2024スーパーGT最終戦決勝レースの40周目、GAINER TANAX Zのリヤハッチがバックストレートで外れ、コースサイドに飛んでいく光景が中継映像のリプレイで流された。あまりにも突然すぎる事態だったが、ステアリングを握っていた富田竜一郎は「飛んでいったことも知らなかった」と振り返る。
「チェッカーフラッグを受けてクルマを止めてリヤを見たら『あぁ、ないんだな』と。あとから残り10周くらいで(リヤハッチ)がなくなったことを聞きましたけど、たしかにそのあたりから急にオーバーステアが強くなっていました」
「でも、僕はタイヤが終わってしまったのかなと思っていました。チームも無線で(リヤハッチがないことを)伝えていてくれていたのですが、聞き取ることができていなかったようなので、もう何が起こっているのかはさっぱり分かっていませんでした」
ドライバーも気が付かなかったGAINER TANAX Zのリヤハッチ脱落。ゲイナーの福田洋介代表兼チーフエンジニアは、原因について「今回に向けてフロントカナードを新しくして、ダウンフォースが増えたのですが、どうしても走行時間が足りないのでリヤウイングの角度は『えいや!』で合わせにいきました」と説明する。
「GAINER TANAX Zのリヤハッチマウントがリヤウイングに付いていおり、前側(クルマのフロント向き)のステーはピンで固定していて、今まではその状態で大丈夫でした。ですが、今回はダウンフォースが増えた影響か、もしくは風向きが変わったことで、想定よりもたわんで(ピンが)抜けてしまったのだと思います」
「ハッチがなくなったことで、リヤウイングに当たる風がしっかりと当たらず(下方向への)抑えがなくなって、富田選手はオーバーステアに感じたのだと思います。外れたリヤハッチが他車に当たらなくて良かったです。ご迷惑をおかけしました(苦笑)」
リヤハッチを失ったことで1秒ほどタイムが落ちたGAINER TANAX Zだったが、その状態で残り10周を走り抜け、今季三度目の入賞となる8位フィニッシュを果たした。チームが独自で開発を行ったGTA-GT300規定車両を投入し、ここまでやや苦戦気味に見られたものの、この最終戦で希望が見えてきたと福田エンジニアは言う。
「ようやく『この状態からセットアップを詰めたい』という段階に到達することができました。なので、来年は今回走行して調整幅の真ん中に持ってくることができた状態でスタートできるように“ものづくり”をしなくてはいけない状況です」
「現代のスーパーGTは昔のように甘くはありません。ただ正直、今年はもっと苦戦すると思っていました。車両設計としては安全性を最優先していて、速さを求めたものではなかったので、中団以下の結果で終わると予想していました。ただ、結果が出ていないなかでも得られるものはいろいろとあり、想定よりポイントを獲得することができました」
「来季は、もう少し開発を進めればさらに上位を狙えるのかなと思っていますけど、スーパーGTは速さだけのレースではないので、“運”とあわせて、できれば優勝もしくはチャンピオンを狙うことができるように開発を進めていきたいですね」
チームのエースたる富田も「これからまだまだ育っていくクルマだと思うので、来年以降はもっとしっかりとしたかたちで選手権を争えるマシンにしていけたらなと思っています」と総評したGAINER TANAX Z。ひさびさに登場した“GTらしさ”を備えるマシンが、今後表彰台、そして優勝を争う姿を見てみたい。