韓国では美容クリニックでの定期的なケアや自身のスキンケアを徹底する“肌管理”のほかに、頭皮ケアや髪質ケアを行う“髪管理”の考え方が美容のトレンドとなっています。近年、日本でも“髪管理アイテム”が続々と登場し、SNSではトリートメント、ヘアオイル、ドライヤーまで多岐にわたるケアツールが話題に。様々な商品や手法があるなかで、どのようなケアに着目すればいいのか。COA(コア)表参道の美容師・ゆうだいさんに話を聞きました。
【韓国風巻き髪】”全工程”を写真で見る、ブローから巻き方まで徹底解説■「日本では“毛先”、韓国は“頭皮”」異なるヘアケアの着眼点
日本ではヘアケアにおいて“うるおい”を重視してきたので、毛先のダメージケアに重きが置かれてきました。その一方で、パーマ文化が発達している韓国では、“根元のボリューム感”を大事にする考え方が男女ともにあります。「だからこそ、韓国では髪の根元にパーマをあてるのが流行っています。男性も、ダウンパーマやプリカールが流行っているので、日本よりも、より頭皮に着目が向いていると現地の美容師から聞いています」(COA表参道の美容師・ゆうだいさん、以下同)。
日本でも近年のヘアトレンドが“うるおい&ツヤ”ではなく、“少しドライでナチュラルな質感”に寄ってきている傾向があり、「いかに健やかな髪であるかという点で“頭皮の健康”を気にする人は多い」とゆうだいさん。
■頭皮を健やかに保つ“髪管理”とは?「顔と同じ“肌”であると意識すること」
頭皮は顔と一枚皮でつながっている“肌”ですが、ゆうだいさんは「顔のスキンケアはきちんとするのに、頭皮はほったらかしの人が多い」と指摘。
「顔や髪を洗うとき、どんな行動をとるか考えてみるとわかりやすいです。洗顔はぬるま湯で済ませるのに、髪にあてるシャワーは“熱め”という人も多いです。同じ肌なのに扱いが違いすぎると僕は思っているのですが、スキンケアと同じかたちで頭皮にも頭皮用の化粧水を使用するなど、“同じ肌として扱う”ことに目を向けてほしいと感じます」
ケアの方法として、日本と韓国で共通して話題となっているのは、美容室でのヘッドスパメニュー、シャワーヘッド、シャンプー&トリートメントなど、プロの手を活用すること、ヘアケアツールを使ってホームケアで管理をしていくことの2軸がある。それぞれのケア方法を紹介していく。
【ヘッドスパ・シャワーヘッド】
頭皮の毛穴が汚れて詰まったり、パーマや染髪の薬剤が落ち切っていなかったり、頭皮に負担をかけてしまうケースも多いので、しっかりと汚れや薬剤を落とし切るために使用。最近では“炭酸系のヘッドスパ”が増えてきているそう。
【ケラチントリートメント】
髪の主成分であるケラチンは、日本・韓国ともに注目されています。「これまで、市販の商品では、シリコンでコーティングすることで指通りが良くなるものはあったと思うのですが、髪の表面を油やシリコンで保護してごまかすよりは、髪本来の健康な状態に導くケアとしてケラチンはすごく注目されていると思います」とゆうだいさん。韓国でも日本でも、低分子で奥まで浸透するケラチントリートメントが最近注目されているそう。
【オイルスプレー】
韓国はパーマ文化なので、ドライするだけでスタイリングはある程度仕上がります。そのため、スタイリング力のあるスプレーよりは、ツヤ出しのみのオイルスプレーが注目されています。日本でも美容師の間では必須アイテムで、最近ではSNSでオイルスプレーが話題となることが増えました。「手でつけると1ヵ所に重たくついてしまうこともあるのですが、スプレーなら全体に自然なツヤ感が出せます」。
【縮毛矯正・ストレートパーマ】
クセ毛や毛量で悩む人は“縮毛矯正”や“ストレートパーマ”をあてることを選ぶ人も。生え際ギリギリからあててほしい要望がある一方で、髪がペタッとなってしまうことに抵抗感があるという声も聞きます。「そういう場合は、根元のボリュームをコントロールできるストレートパーマもありますし、髪を立ち上げるピンやカーラー、ドライヤーまで出ています。縮毛をかけても根元は上がるよう、アドバイスは僕たち美容師側でできるので、ぜひ相談してほしいと思います」。
【ドライヤー】
熱い風も出ても温度調節ができたり、低い温度設定も可能だったり、「大風量だけど熱すぎない」というのは、どのメーカーさんも気にしているポイントだといいます。「乾かすけど水分は守りたいという欲張りな考えではあるのですが、そういうドライヤーが流行っていると思います」とゆうだいさん。「風の出方も、ただ強いだけではなく、あまり髪が暴れずに、やさしく乾かしてくれる、乾かしすぎないようにしてくれるものは、今トレンドとして来ていると思います」。
■根元の立ち上げ、うるおいキープまで…プロから見た、“使いやすいドライヤー”とは?
熱すぎず、高温ではなく、速く髪が乾く温度の目安として“表面温度60℃”をいかに保ち続けることができるか。これは、美容師の間でも課題であり、共通認識としてある考え方。「各ドライヤーメーカーさんは、表面温度60℃というのは必ず意識していると思います」とゆうだいさん。
「大体60℃ぐらいが、まろやかな風で根元がふんわり立ち上がる温度と言われています。髪のダメージを防ぐために、美容師は温度管理を徹底しなければなりません。ドライヤーが熱くなりすぎないように、乾かしすぎないようにする練習をアシスタントの頃から常に行っています。それでも、温度管理を全員が完璧にできるとは言い切れないのですが、管理自体をドライヤーがしてくれるようになったことは革命的。近年のドライヤーの機能の高まりを痛感しています」。
美容師目線で見て、ユーザーが使いやすそうだと思うのは、「温度の設定ができるもの」だとゆうだいさんは解説。「髪を乾かしていてもパサパサには乾かない。水分を残すことを求めるとちょっと乾かすのが遅くなってしまうかもしれないですけど、そこは風量でカバーする。軽くて時短、乾かすのもラク…というドライヤーが理想的ですね」。
ケアの方法を考えるときに、「髪の毛にいろいろと足しがち」ですが、「いかに奪わないかを考えたほうがいいです」とゆうだいさん。「ドライヤーで水分を奪わないこと、シャンプー・トリートメントも髪の油分や水分を奪わないこと、お湯の温度も熱いと一気に突っ張ってしまうので、頭皮や髪の毛に必要な油分や水分を奪わないこと。お湯の温度を1℃下げてみたり、洗浄力のやさしいシャンプーに替えてみたり、温度を管理してくれるドライヤーに替えたり、まずは奪わないケアから始めて、そこに必要なものを足してあげたら綺麗になると思います」。
PROFILE/ゆうだい
COA表参道スタイリスト。きれいめカジュアルなボブヘアのスタイリングを得意とし、ボブカットの店内指名率ナンバー1を誇る。2024年のカットコンテストでは全国1位を獲得し、専門学校で講義も受け持っている。Instagram:@yudai_bob