高級腕時計「パネライ」の“希少性が高い”モデルを一挙出し。腕時計投資のプロが「中古614万円でも“安い”」と断言するワケ

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2024年12月15日 16:01  日刊SPA!

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ダイヤ文字盤のPAM00030
―[腕時計投資家・斉藤由貴生]―
腕時計投資家の斉藤由貴生です。今回は、希少性が高い腕時計を紹介しようと思っているのですが、その存在こそが初期リシュモンの時代に存在したパネライ限定モデルの数々であります。

早速「初期リシュモン」という時計マニアじゃないとわからないようなワードが出てしまったわけですが、パネライは1993年に高級腕時計を一般向け売り出し、1997年にリシュモングループ入りした経緯があります。

リシュモングループ入りする前/後ということがパネライの価値に重要な要素となるのですが、そうなると「古ければ古いほど評価される」ということになります。ですので、リシュモングループ入りする前のパネライや、初期リシュモンといった時代のモデルは価値が高いわけです。

◆評価が高いパネライは型番で判断可能

現在、パネライは「ルミノール」や「ラジオミール」、「サブマーシブル」「ルミノールデュエ」といった様々なモデルを展開しており、型番もPAM02000番台まで存在する状態。1997年にリシュモングループ入りしたパネライは、PAM00001という型番から始まったのですが、それが2000番代まで達してしまったというのは、いろんなモデルがありすぎて、「どれがどれか分かりづらい」といえるでしょう。

しかしながら、「評価が高いパネライ」は、コツを掴めばすぐに把握することが可能。先のようにパネライの評価の高さは、「古さ」ですから、PAM00150ぐらいまでの型番において、価値が高いモデルの可能性があるといえます。また、リシュモン以前の型番は全く異なる(例:5218-205/A)ため、ひと目で違いがわかります。

◆評価高となる要素

パネライの「高評価」を決める要素は、ざっくり3つ。1つが、リシュモングループ入りする前に販売された、いわゆる「プレヴァンドーム」という世代。これは、新品時の定価が30万円程度だったのに、現在の評価では200万円以上といった状態になっています。そして次が、発光塗料が「トリチウム」という点。これは、初期リシュモン世代の一部に見られるのですが、1999年の途中まで作られた個体の発光塗料に「トリチウム」が採用されており、数があまり多くないため高値となっているのです。

ちなみに、同じ型番、例えばPAM00001の場合発光塗料が「ルミノバ」の個体は現在50万円程度ですが、「トリチウム」となると120万円といった相場。「トリチウム」という違いだけで、価値が倍以上となっているのです。

「トリチウム」は、1998年頃まで各腕時計ブランドで採用されていた発光塗料でありますが、放射性物質であるため、2000年頃までに各社が採用を廃止。その頃から、日本の企業が開発した「ルミノバ」が一般的となっています。

トリチウムは、経年劣化による「独特の焼け」が、現代の価値観では「格好良い」とされているのですが、その“焼け”が軍用時計であるパネライと相性抜群。また、トリチウムの時期においてパネライは今ほどメジャーな存在ではなかったため、生産数も少なく、希少性の高さも評価されているといえます。

そして3つ目の評価ポイントが「限定モデル」であります。高級腕時計の限定モデルは、ブランドによって“評価される場合”と“そうでない場合”があるのですが、パネライの場合は“評価されることが多い”といえます。

というのも、初期リシュモンの時期において、パネライは他のブランドでは考えられないぐらい、尖ったモデルをいくつも作ったから。最もわかりやすいのは、PAM00021というモデルなのですが、なんとこれ、ロレックスのデッドストックムーブメントを搭載しているのです。

当時も今も、新品として売られる高級腕時計にデッドストックのムーブメントを搭載するなんて、あまり例がないわけですが、それをパネライというメジャーブランドが実施しているのがなんともツボであります。

また、デッドストック系以外の限定パネライとして、「ダイヤ」という要素を含むモデルも重要。他のブランドの場合、通常文字盤とダイヤ文字盤とで、中古相場の差が“ほぼ無い”ということもあるのですが、パネライの場合はそうでありません。例えば、ダイヤ文字盤であるPAM00130の現在相場は約207万円〜といったところですが、それに対応する通常モデルともいえるPAM00112は44万円ぐらいで程度の良い個体を買うことができるのです。つまり、パネライにおいて「ダイヤ文字盤」は、なんと通常モデルに対して約4.7倍といった相場なのです。

評価されるパネライの特徴は、「プレヴァンドーム」「トリチウム」「限定モデル(特に初期リシュモン世代)」ということをご説明しましたが、その限定モデルの中で評価されるのは、主に「デッドストックムーブメント系」と「ダイヤ」だといえます。

ということで、ここからは腕時計投資家を名乗る私が今、個人的に気になるパネライをいくつか紹介したいと思います。

◆◯エントリー1: PAM00021

これこそが、パネライ限定モデルの元祖。先程も紹介したロレックスのデッドストックムーブメントを搭載するモデルであります。裏蓋はいわゆる「裏スケ」仕様となっているのですが、PANERAIと表記されたケースの中に収まっているROLEXと書かれたムーブメントがたまりません。

また、ケース素材はプラチナとなっているのですが、実はパネライにおいて「プラチナ」という要素もまたレア。現在では、通常ラインナップとしてプラチナモデルが存在しているのですが、遅くとも2010年頃までにおいて「プラチナモデル」はほぼ展開されていなかったのです。

なおこのモデル、当時の雑誌を私が調べてみたところ、そもそもが抽選販売だった模様。新品時から入手難易度が高かったモデルであるため、中古市場にはめったに出てきません。

そんなPAM00021でありますが、直近では2022年1月に中古売り出しがあった模様。その際の価格は約614万円でした。

ロレックスデッドストックムーブメント搭載、なおかつめったに売り出されないモデルとして、この614万円という価格は「安い」と私は思ったのですが、すぐに売れるという状況にはならず、少なくとも1ヶ月以上にわたって売られている状態が続いていたのです。

1999年の雑誌に記載されていたPAM00021の新品時の価格は400万円(税別)。そうなると、1999年から2022年までの上昇は200万円程度となります。他の人気モデルの場合、1999年との比較では価値が「倍以上」となる事例が珍しくありませんから、PAM00021は意外と評価されていなかったといえます。ですから、今後同じような水準でこれが出できたならば、「買い」だと思っている次第です。

◆◯エントリー2:PAM00066

これはラジオミールのバケットダイヤ文字盤モデルなのですが、当時のラジオミールとはケース形状が若干異なるという特徴を備えています。ラジオミールは2004年頃まで、パネライのフラッグシップモデルという位置づけで、ラインナップされたモデルはK18がメイン。今のロレックスでいう「デイデイト」のような存在でした。

初期リシュモン時代のパネライは、通常モデルのムーブメントがETAが基本だったのですが、ラジオミールにはゼニスベースのムーブメントを搭載。それが、この限定ダイヤモデルとなると、更に豪華な「フレデリックピゲ」ベースのムーブメントを搭載していたのです。

ちなみに、ゼニスはLVMHグループ、フレデリックピゲはスウォッチグループ傘下でありますが、2000年代前半頃までは、親会社が違っても各社がムーブメントを供給していたため、リシュモングループであるパネライに、これらムーブメントが搭載されていたのです。

しかし、今ではパネライにフレデリックピゲのムーブメント使うというのは、考えられない組み合わせ。そういったことからしても、このPAM00066はデッドストックムーブメント搭載モデルに近い「レア感」があるといえるかと思います。

また、デッドストックムーブメントを搭載するモデルには、クロノグラフが多いのですが、かつてパネライはクロノグラフのラインナップ自体が稀で、ラジオミールのクロノグラフは、これら限定モデルにしか存在しませんでした。そのため、かつて「クロノグラフのラジオミール」は、それ自体が「激レア」ということがひと目で分かったのですが、2005年頃からは通常モデルとしてクロノグラフモデルがラジオミールに存在。そのため、今の価値観では、希少なデッドストックムーブメント搭載モデルは、ひと目で「特別な存在」と分かりづらくなっています。

もちろん、デッドストックムーブメントのパネライは、今でも評価が高く、なおかつその格好良さ、輝きは今でもかつてと全く変わりないといえます。しかしながら、ダイヤモデルについては、クロノグラフのように通常展開された形跡がないため、2024年現在でもひと目で「見たこと無いパネライだ!」となります。

ですから、そういった分かりやすいレア感が、ダイヤ文字盤のパネライにあるわけで、その最高峰ともいえるラジオミールが、今とても輝いて見えるのです。

なお、現在このPAM00066は中古で売られているのですが、その価格は約284万円。いわゆるロレックスの人気モデルと同価格であるため、私は「買い!」だと思っているわけです。

ということで、レアパネライをお伝えしてきましたが、ラグスポといったいわゆる人気モデルに飽きてしまった時計ファンたちが、次に「ハマる」腕時計として、とても良い存在ではないでしょうか。

<文/斉藤由貴生>

◆レアパネライ各型番一覧(主に2002年頃までに出たモデル)

生産年型番モデル素材特徴
1997PAM00021ラジオミールプラチナロレックスデットストックムーブメント搭載
1998-2005PAM00030ルミノールステンレスバケットダイヤ文字盤
1998-2005PAM00031ルミノールステンレスダイヤベゼル
1998-2000PAM00032ルミノールステンレス竜頭ガード部分がダイヤ
1998-2000PAM00033ルミノールステンレスラグ部分がダイヤ
1999PAM00036ルミノールチタンMarina Militare
1999-2001PAM00041ルミノールステンレス文字盤、ベゼル、竜頭ガード、ラグ部分がダイヤ(流通ほぼなし)
1999PAM00045ルミノールWGエルプリメロベースムーブメント搭載
1999PAM00046ラジオミールWGGMTアラーム
1999PAM00047ラジオミールステンレスクロノグラフ、ヴィーナス179ムーブメント搭載。20本程度限定と言われている
1999PAM00052ルミノールステンレスクロノグラフ
2000PAM00060ルミノールSS&チタンフライバッククロノグラフ
2000PAM00065ラジオミールプラチナフレデリックピゲムーブメント搭載
2000-2005PAM00066ラジオミールWGバケットダイヤ文字盤
2000PAM00067ラジオミールWG「ゼログラフ」1940年代のデットストックレマニア キャリバー15搭載。1プッシュクロノグラフ
2000-2005PAM00068ラジオミールWGベゼル部分がダイヤ。フレデリックピゲ搭載
2000-2005PAM00071ルミノール40mmステンレスベゼル部分がダイヤ。
2000-2002PAM00077ラジオミールプラチナトゥールビヨン
2001PAM00078ラジオミールWGデットストックのオメガ920キャリバー搭載
2001PAM00080ラジオミールWGChezard Cal 7400搭載。秒針がクォーツのような動きをする
2000PAM00082ルミノールチタン青文字盤(この時代、44mmの青文字盤が珍しい)
2001-2005PAM00096ルミノール40mmステンレスベゼルと文字盤部分がバケットダイヤ
2001-2005PAM00099ラジオミールWG文字盤12部分がダイヤ。フレデリックピゲ搭載
2001-2005PAM000100ラジオミールPG文字盤部分がバケットダイヤ。フレデリックピゲ搭載。(PAM00066のPGバージョンといえる)
2001-2005PAM000101ラジオミールPG文字盤12部分がダイヤ。フレデリックピゲ搭載(PAM00099のPGバージョンといえる)
2001-2005PAM000102ラジオミールPG文字盤とベゼル部分がダイヤ。フレデリックピゲ搭載
2001PAM000105ルミノールWGAMGコラボモデルのクロノグラフ。エルプリメロ搭載
2001PAM000108ルミノールSS&チタンAMGコラボモデルのクロノグラフ。エルプリメロ搭載
2002-2003PAM000127ルミノール1950ステンレス初代「ルミノール1950」
2003PAM00158ラジオミールプラチナヴィーナス158ムーブメント搭載。クロノグラフ

―[腕時計投資家・斉藤由貴生]―

【斉藤由貴生】
1986年生まれ。日本初の腕時計投資家として、「腕時計投資新聞」で執筆。母方の祖父はチャコット創業者、父は医者という裕福な家庭に生まれるが幼少期に両親が離婚。中学1年生の頃より、企業のホームページ作成業務を個人で請負い収入を得る。それを元手に高級腕時計を購入。その頃、買った値段より高く売る腕時計投資を考案し、時計の売買で資金を増やしていく。高校卒業後は就職、5年間の社会人経験を経てから筑波大学情報学群情報メディア創成学類に入学。お金を使わず贅沢する「ドケチ快適」のプロ。腕時計は買った値段より高く売却、ロールスロイスは実質10万円で購入。著書に『腕時計投資のすすめ』(イカロス出版)と『もう新品は買うな!』がある

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