「托卵(たくらん)」をテーマに描いたドラマ『わたしの宝物』(フジテレビ系、木曜よる10時〜)。
そんな同作を牽引するのは、『昼顔〜平日午後3時の恋人たち〜』や『あなたがしてくれなくても』を手掛けてきた三竿玲子プロデューサーだ。
今回は、そんな三竿プロデューサーに座長・松本若菜の魅力やテーマについて深掘り。深澤辰哉の魅力なども語ってもらった。
◆「誰一人、ひとりぼっちにしない!」座長・松本若菜
――今回、松本若菜さんがフジ初主演かと思うのですが、プロデューサーから見た松本さんの魅力を教えてください。
三竿:若菜さんは、お芝居が素敵なのはもちろんなのですが、すごく明るくて気遣いができる方なんです。ご一緒させていただくたびに「また仕事したいな」って思うほど、本当に素敵な方です。
――座長としては、どのような振る舞いをされているのでしょうか?
三竿:「ついてこい!」というよりは、「みんな一緒にいこー!」みたいなタイプの座長だなと感じています。主演をするにあたって「誰一人、ひとりぼっちにしないぞ!」っていう感じが伝わってきます。本当に共演者の方にも、スタッフにも目を配ってくださっていて、ご自身も疲れていて大変だろうに、そんな表情は全く見せずに明るく声をかけてくれています。
◆お互いを思い合う楽しい現場
――素敵ですね!
三竿:すごく楽しい雰囲気で「私たち、すごく重い作品を撮っているんだったよね?」ってときどき忘れちゃうくらい。彼女が大きな声で「いくよー!」って言ってくれると、本当に助けられるんです。スタッフもみんな「若菜さん大好き!」っていう感じで、和気あいあいとした現場で撮影しています。
――作品の裏で、そんなに明るい光景が広がっているなんて。驚きました。
三竿:そうなんです。わりと撮影中と撮影していない時でパッと切り替えられるタイプの役者さんが多いというのもあって、本当に明るい現場です。お互いを思い合っていて、楽しい現場ですよ。
◆托卵というテーマに決めた背景
――そもそもの話に戻りますが、托卵というテーマに決めたのはなぜなのでしょうか?『昼顔』のときから構想自体はあったようですが。
三竿:そうですね。托卵について知ったのは、『昼顔』の最終回をやっていたあたりでした。いろいろ調べている中で、このワードに出会って。調べていくと、なかなか、おどろおどろしい内容のエピソードが出てきました。
――そうなんですか?
三竿:「良い遺伝子が欲しい!」と言う女性が一定数いるお話とか。それで、こういうのをドラマにしたら、ちょっとヒリつくというか、ザワザワするドラマができるんじゃないかなと漠然と思いました。ただ、企画を考えれば考えるほど、やっぱり地上波のゴールデンタイムのドラマとしては、ちょっと向かないなって思いまして。企画に落とし込むことに苦戦していたんです。
◆キーワードは「せざるを得なかった女性」
――なるほど。
三竿:ただ『あなたがしてくれなくても』をやったあとに、もう1回大人のヒリつく恋愛ドラマというか、夫婦のタブーに切り込むような物語をやりたいなと思いまして。ずっと温めていた“托卵”を何とか企画にできないかと考えている中で、「せざるを得なかった女性」「どうしてもいろんな条件が揃ってしまってもうこの選択肢しかないとなってしまったお話」というのを思いついて。それであれば視聴者の方も「わたくしごと」と思えるんじゃないかなと、企画に落とし込みました。
――たしかに1話の宏樹(田中圭)はなかなかでしたもんね。その中で、ドロドロしすぎないように意識した点があれば教えてください。
三竿:5話とかは、急に別のドラマが始まったかのようにドロドロさせていたんですけども、全体的には『昼顔』のときからそうだったように、身近に起こりうる話というのは意識しています。また、“罪を犯したら罰を受ける”っていうワードは大切にしています。やっぱり誰かを傷つけることをする女性を描いているので。
――たしかに『昼顔』『あなたがしてくれなくても』にも通じますね。
三竿:はい。婚外恋愛みたいなことをすると、どんな事情があったとしても、それは誰かを傷つけることにはなるので。それに対しての代償というか、キレイごとでは済まされないようにはしようと思っていました。今回は特に、それによって子どもができてしまうので、人のせいにしたりするのではなく、ちゃんと自分で罪を背負っていく覚悟を主人公に持たせるっていうのは意識しています。もちろん揺れたりとか迷ったりとかはするんですけど。
◆宏樹派?冬月派?2人の魅力は?
――今回のドラマにおいて、視聴者が共感するには、宏樹のことも冬月くん(深澤辰哉)のことも魅力的に描くのは必須だったのではないかと思いました。そのために意識したことがあれば教えてください。
三竿:おそらく婚外恋愛のような題材を扱う時って、どうしても恋に落ちるほうを良く描きがちだと思うんです。今回の場合で言うと、冬月くんが魅力的で、宏樹は永遠にモラハラをしているようなタイプになるのかなと。
――なるほど。
三竿:ただ、今回は恋愛要素にプラスして“托卵”というテーマ、子どもを守る母親の姿もあったりしたので、そういった意味で夫が改心していくっていうところがあると面白いなと思いました。そこでモラハラから育児に協力的で優しい父親になっていくという設定を思いついたのですが、予想以上に田中さんがうますぎて、SNS上でもみなさんの評価が高まっていますね。「宏樹、いいヤツだ」って。こちらとしては、「え、1話のモラハラ、忘れました?」っていうくらい(笑)。
――たしかに(笑)。
三竿:冬月くんに関しては、誰しもが持っている昔の素敵な思い出、夫のことを好きになって結婚していても、どこかで忘れられない初恋の人のような存在だといいなと思い描きました。だから良い意味で、大人になってはいるけど中学のときの冬月くんのまんま、同じように自分に手を差し伸べてくれる、昔と変わらない感じは意識しています。それを深澤(辰哉)さんはよく理解して、自分に落とし込んで演じてくれていますね。苦しくて悲しい役で大変だと思いますが。
◆深澤の魅力は「感度が高いところ」
――最初深澤さんの出演が決まった時、田中さんと松本さんと比べると、実年齢的に少し離れているのかなと感じましたが、いざドラマを見ると違和感なく見れています。
三竿:そうですね。冬月の年齢設定が35歳とか36歳なんですけど、実際の35歳の人よりもキャラクターとしては、もうちょっとピュアであるという感じがハマっているのではないかなと思います。さっき言ったみたいに中学のときの冬月くんが、そのままそこにいるというイメージを深澤さんならやってくれるんじゃないかなと思ってキャスティングしました。
――現場での深澤さんはどのような様子でしょうか?
三竿:深澤さんは「昔から友達だったかな」っていうぐらいにみんなに気さくに話しかけてくれています。田中さんとはライバルのはずなんですけど、すごく仲良くなっていて。ずっと2人でキャッキャキャッキャ笑い合ってふざけ合っているのを、松本さんが“学級委員”のように「そこの男子二人」って注意したりするっていう。その関係性が見ていてすごく和みますね。ただ、その一方で「ここは俺、頑張らなきゃいけないシーンだから」って、気合いを入れる瞬間もあったりして。素敵だなと思って見ています。
――三竿プロデューサーから見た、深澤さんの役者としての魅力を教えてください。
三竿:やはりお芝居だけでなく、ダンスもやっていらっしゃるからなのか、感度がすごく高い方だなと感じています。映像でのお芝居の経験がすごく多いとういわけではないというのはご本人もおっしゃっていたんですけど、お芝居に対して「ここはこういうことで」って説明をすると、すぐに理解して落とし込んでくださって。きっと田中さんや松本さん、先輩たちのお芝居を見ながら、すごいスピードで成長していっているんじゃないですかね。見ていて非常に頼もしいです。
<取材・文/於ありさ>
【於ありさ】
テレビ・ラジオ・映画・アイドル・お笑い・恋愛番組・ガールズムービー…とにかくエンタメ好き!サウナと旅で体を癒しながら、マイメロディに囲まれた自宅でエンタメ漬けの毎日を送っている。