【写真】松山ケンイチ&染谷将太、撮りおろしショット
■「お芝居ってなんだろう」と考えさせられた福田組
――ついに映画化です。
松山:最初のうちはブッダとイエスが家のなかで話をしているシーンで、短編みたいな距離感だったのですが、そのうち家の外に出ますからね(笑)。普通の演技プラス、なんか忍耐みたいな感じのものも追加されてきたよね。
染谷:クランクイン前に、アクション練習とかがあって、そのとき「あーやっぱ映画なんだ」って思いました(笑)。東宝スタジオでアクション練習やったときは、すごい映画が始まるぞって思いましたね。
松山:確かに神様なのに何をやるんだろうな……という思いはありましたよね。
――劇場版ということで、何か構えるようなところはあったのですか?
松山:真面目な話をすると、ちょっとビクビクしていたところはありました。イエスとブッダって宗教の代表的な存在でもあるわけで、それを題材にするとき、どこまで表現的に許されるのかというのは難しいのかなと。海外の人が観たらどんな反応するんだろう……みたいなのはちょっと怖いなと。だから真面目にやろうとは思ったのですが、佐藤二朗さんをはじめとする出演者の方たちに暴れ散らかされてしまって……(笑)。
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――「お芝居ってなんだろう」という疑問は、撮影中に解消されましたか?
染谷:僕らの前にやってくる方たちが本当に豪華で面白く、毎日のようにすごい方がやってくるので、日々刺激的な毎日でしたね。笑いを堪えるのだけで必死でした。本当に忍耐のような日々でした(笑)。
松山:普通、本番であれだけ笑ったらNGだよね。でもそのNGになるものを使っていたりするんですよね。そういう意味でも、福田監督の価値観みたいなものと、映画一般的な現場での価値観みたいなものが、ごっちゃになっていく状況というのは、すごく刺激的でしたよね。
染谷:そうですよね。イエスとブッダの日常的な会話から始まったのに、気がついたら、ニチアサ(特撮ドラマ)までぶっ飛んでいく展開は驚きです。演じる側としても、ブッダの格好をしつつ、ニチアサを経験できるって、なんてカラフルな作品なんだと思いました。
■「久々に東京に来たらこんなことになってんだ!」
――そもそも、イエス役、ブッダ役を演じるという話があったときは、どう思ったのですか?
染谷:無敵だなと思いました。ブッダさんの格好さえすれば、何もしなくても立っていられるぐらいの勇気をもらえるぐらいの存在感なので、そこに乗っかって楽しもうと思っていました。
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染谷:松山さん「久々に東京に来たらこんなことになってんだ!」って言っていましたよね(笑)。
松山:福田監督って本当に愛されている方なので、みんなが「絶対福田監督を笑わせてやろう」みたいな思いで、いろいろなことを持ち込んでくるんだよね。本当に笑いを堪えるのは忍耐だよ。
――個性的なビジュアルですが、それぞれ最初にイエスとブッダの姿を見たときはどんな印象を持ちましたか?
松山:いや、大丈夫かなというのがやっぱり大きかったよ。
染谷:めっちゃイエスさんでした。
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染谷:似ていましたよ、ジョニー・デップ。
松山:染谷君のブッダは(大きな耳をつけているけれど)聞こえているの?
染谷:あれ聞こえているんです。すごく考えられて作ってあって、ヘッドフォンみたいな感じで耳に装着するのでノンストレスなんです。耳には負荷がかからず快適でした。
松山:昔、知り合いの俳優さんが、染谷君のこと「日本で一番死んだ目をしている俳優」って言っていたんです。独特な感じがすごい印象的で。それが今や仏の目ですからね。真逆じゃん。やっぱすごいよね。
染谷:おかげさまで(笑)。
■藤原竜也のルシファーに「最後全部ぶん殴られた感じ」
――お二人がおっしゃるように豪華ゲストたちがイエスとブッダの前に現れますが、印象に残っている方はいますか?
松山:みんなすごかったよね。全員台本で想像する以上に暴れていました。僕はまだ本編を観ることができていないので、山田孝之さんとか、ムロツヨシさんとか、藤原竜也さんとか、僕は一緒に撮影していない人たちがどんな暴れ方をしているのか、とても楽しみです。特に竜也さんは全部持っていったって聞いていますよ。
染谷:本当にやばかったです。
松山:そうなんだ?
染谷:ガチです。爆発力がすごかった。
松山:多分竜也さんも福田組初めてですよね。
染谷:そうですよね。でも本当にイエスとブッダが奮闘しているお話なのですが、最後全部ぶん殴られた感じ。(藤原演じる)ルシファーにしか見えなかった。
松山:あのシーンは台本読んだだけで本当にヤバイと思ったので、どんな感じになっているのか楽しみです。ここでは言えませんけれどね。(その後、藤原のシーンにまつわるネタバレトーク全開で)やっぱりあの人は最高です。
――そもそもなのですが、お二人が「ぜひイエス、ブッダに」というオファーの理由は聞いているのですか?
松山:今回の作品に限らず、あまりそういうのって聞かないんですよね。変なことを言われたら嫌だなって。
染谷:変なこととは?
松山:いやプロデューサーさんや監督さんから「こういう理由だから選んだんですよ」と言われると、なんかそういうことを期待されているのかなって、そのイメージから抜け出せなくなりそうなんだよね。
染谷:なるほど。でも福田監督は我々に対してずっと一緒に仕事がしたかったっておっしゃってくれましたよね。
松山:それはめちゃくちゃありがたいよね。
染谷:それが一番嬉しいですね。
松山:今回僕たちは、迎え入れる側だったけれど、もしゲストとして暴れる役だったらどう?
染谷:めちゃくちゃ不安ですよ。皆さんを見てしまったから。
松山:あれ見ちゃうと何やればいいんだよってなるよね。神木隆之介くんとかも、めちゃくちゃ面白かったけれど、どう思っていたんだろうね。賀来賢人くんとか岩田くんとか、二朗さんとかムロさん、山田さん、(仲野)太賀くんとか、勝地(涼)くんもみんな福田組経験しているから、安心して暴れていたよね。
染谷:窪田(正孝)さんも福田監督とやっていますしね。
■松山&染谷、次の共演は父親同士、PTAでバチバチ!?
――お話を聞いていると、ミラクルだらけだったようですが、劇場版の撮影で得たことはありましたか?
松山:多分福田組でやったことってほかの現場だとNGなことなんだよね。迷惑行為かな。現場の進行を妨げる行為(笑)。他の現場ではできないことを実験的にできる場という感じでしたね。その意味で懐の深い場所だったかな。でも福田監督が笑わないで真面目な顔してダメ出しするの、マジで怖いよね。
染谷:そんなシーンありましたっけ?
松山:あったよ。岩田くんと白石さんの二人の真似してって言われたとき。やったら「松山くんダメ、うますぎる」って。すごい真剣な顔をして言われて「えー」って思った。
染谷:僕はその光景を見て笑いましたけれどね。岩田さんも「うますぎるよ」って突っ込んでいましたよね。でもいろいろな意味でメンタルは鍛えられましたね。何が起こるか分からない。台本以上のことがどんどん現場で起きるので。割かしブッダはツッコミ的な役割だったので、冷静に務めることが大変で。本当に修行でした(笑)。
――お二人は映画『聖の青春』で兄弟子、弟弟子的な立場で共演されていますが、改めて『聖☆おにいさん』でご一緒していかがでしたか?
松山:染谷くんはどんな役でも馴染むよね。狂気もできるし、普通の人もできる。一緒にやっていても、どうやって演技を組み立てているのかってあまり聞いたことない。本当に不思議な俳優さん、どこにでもスッと馴染んでしまう。敵でも味方でもいけるよね。
染谷:僕は勝手に安心しています。とても居心地良くいさせてもらえる先輩ですね。『聖の青春』でも『聖☆おにいさん』でも近い関係性だったので、まったく違う関係性でご一緒したときどんな感じなんだろう……というのはあまり想像できないですね。
松山:でも絶対どこかでありそうだよね。大河で織田信長やっていたじゃない。何かそういうところでも一緒になったらいいなと。
――先ほど、染谷さんはどんな役でも馴染めると松山さんはお話されていましたが、松山さんもそういうイメージなのですが。
松山:いや全然役柄の幅が広くないんですよ。変人しかやっていない。
染谷:そんなことないですよ。
松山:敵役とかあまりないし。あとはお父さんの役ほとんどない。実際はお父さんやっているんだけどね。なんでだろうね。染谷くんもお父さんだよね。お父さん同士でバチバチの役とかやってみたいね。PTAでどれだけ成り上がれるのか……みたいな。そこに竜也さん出てきて……(笑)。
(取材・文:磯部正和 写真:高野広美)
映画『聖☆おにいさん THE MOVIE〜ホーリーメンVS悪魔軍団〜』は公開中。