俳優の神木隆之介が主演を務める、TBS系日曜劇場『海に眠るダイヤモンド』(10月20日スタート 毎週日曜 後9:00)。物語終盤からは、過去の端島と現代の東京が交錯。第8話では物語が大きく動き、これまでの伏線が徐々に明らかになってきた。ここでは、最終回を目前にして新井順子プロデューサーにインタビュー。過去と現代のつながりを通して、視聴者に届けたかったものとは。制作の裏話をたっぷりとお届けする。
【写真あり】 “息子”を抱っこする池田エライザ――物語の真髄に近づき一層の盛り上がりを見せていますが、新井さんのもとにはどんな反響が届いていますか?
後半に突入した第6話の放送では、「これが最終回でいいんじゃないか」という声がたくさん届きました(笑)。予告を見て、第7話はイヤな予感しかしないと。物語の序盤から台風やストライキ、戦争の話が描かれてきたなかで唯一平和な回になったので、急にほっこりし過ぎと指摘されるかと思っていたのですが、鉄平と朝子(杉咲花)の告白シーンの評判がものすごく良かったのも印象的でした。知り合いの俳優さんたちからも「何なんですかあのお芝居は!」と、驚かれましたね。
――ちなみに、どのような撮影だったのでしょうか?
実はあれ、神木さんが恋愛リアリティ番組のようにドキュメンタリータッチで撮るのはどうかと提案してくれたシーンなんです。望遠カメラで遠くから撮影しているのですが、素人が撮影したような映像に近づけたかったので、監督がカメラマンに「下手に撮ってくれ」と異例のリクエストをしていました。神木さんがいつ「好きだ」と言うのか、どんなリアクションをするのかなども誰も知らない状態。放送された尺よりも実際はもっと長く撮影していて、告白前の絶妙なタメもありました。
――その告白を受けた杉咲さんのお芝居も素晴らしかったですね。
カメラに背中を向けて涙を拭いていて、敢えて後ろを向くのか!と驚かされました。神木さんのお芝居を受けて、つい涙を流されたみたいで。以前にも思わぬところで涙が出たことがあって、「すみません…! 泣いてしまいました。もう一回やったほうがいいですよね?」と確認していたのですが、監督から「そのままがいい!」と採用されたこともしばしば。杉咲さんを見ていると、心で芝居していることが伝わってきますね。
――撮影後にはどのような会話がありましたか?
神木さんはその撮影の後に現場にやってきた人に「こういうシーンだったんだけど、見て!」とアピールしていました(笑)。第6話では賢将(清水尋也)と鉄平、2つの告白シーンがあったので、正統派の賢将とどう差をつけるか神木さんも考えていたのだと思います。ご本人としてもチャレンジングで、気合いを入れていたシーンだったのかもしれませんね。
――百合子(土屋太鳳)と賢将のプロポーズシーンも話題でした。
監督の狙いで、日常のなかでプロポーズすることになりました。ドライでは向き合って普通にプロポーズしていたのですが、本番ではエキストラさんが周りにたくさんいて、賢将が抱きしめようとするから「こんなところでやめてよ」という2人らしい押し問答みたいなシーンになりました。
――第7話の炭鉱火災は、端島を語るうえで外せないと思います。進平(斎藤工)が炭鉱火災で亡くなってしまう展開はもとから決まっていたのでしょうか?
全体の構成を決めているときから、第7話で進平が亡くなってしまう展開を入れる案が出ていました。なので、斎藤さんにもオファー時からそのように説明していました。
――炭鉱内の撮影でのエピソードを聞かせてください。
第7話の坑内のシーンは丸4日かけて実際の炭鉱で撮影しました。端島の海底炭鉱は地熱の影響で暑い設定なのですが、撮影でお借りした場所は山にある炭鉱なので、息が白くなるほど寒い。長く滞在すると感覚が鈍ってきて、炭鉱員の皆さんの苦労が身に染みた4日間でした。
――爆発シーンはどのように撮影されたのでしょうか?
あれは本物の炎を使用していて、お借りしている場所での許可をいただいて実際に放水作業も行っています。炭鉱員キャストの皆さんは「粘土を運んでください! 放水してください!」と指示されるがままに動いてくださって、どのシーンを撮っているかわからないほどだったはず。もはやお芝居ではなく、リアルに近いシーンとなりました。
――制作チームの努力が映像ににじみ出ていますね。
そうですね。特に美術チームには作品を通して本当に助けられています。先日も、とあるいづみ(宮本信子)のシーンを撮影したのですが、季節的にリアルな風景を作り上げることが難しいシーンでした。CGでどうにか…という話にもなったのですが、さすがに何もないところで宮本さんにお芝居していただくのは厳しいんじゃないかと頭を抱えていて…。そうしたら、美術部さんがどうにか季節外れの“あるもの”をかき集めてくれたんです。加えてCGの力もお借りしたのですが、少しでもキャストの皆さんがお芝居をしやすいよう配慮を怠らないスタッフの姿勢に感動しました。
――緑なき端島は、現代・東京のコンクリートジャングルとどこか重なるような気がしています。
屋上の緑化活動は、実際に端島で行われていたことをベースにしています。リアルな現代で屋上緑化が進んでいることもあり、設定をかけ合わせるため朝子にその役割を担ってもらうことにしました。屋上緑化だけでなく、過去と現在をどのようにリンクさせていくか常に考えていたのですが、挑戦してみたら意外と難しかったですね。視聴者の皆さんは「どこに連れて行かれるのかな、このドラマ」と思っていたのではないかと思いますが、第8話からようやく端島と現代がしっかりリンクするようになりました。複雑ですが、その分最終回は謎解き甲斐があり、見応えがあるはずです!
――考察も盛り上がっていますね。
さまざまな考察がされていますが、編集ではなるべくバレないようにしているつもり。監督が怪しげに撮影するので、編集で塩梅を調整しているんです(笑)。そういえば、物語序盤では、いづみと朝子をリンクさせる演出で正体を匂わせていたのですが、皆さん全て見つけられましたか? キラキラしたものと花が好きなのはもちろんですが、第1話の八宝菜にキクラゲが入っているのもポイントでした。第6話ではカステラが好きという設定もリンクしてきたんですよ。
――そういった演出も含め、野木亜紀子さんの緻密な脚本が丁寧に描写されてきましたね。
そうですね。脚本の緻密さに、映像になってからの驚きが加わっています。第8話の着炭に喜ぶシーンは、台本では動きの説明が多い場面だったのですが、本編ではとても感情豊かに撮られていてグッときました。炭鉱員の皆さんの顔が生き生きしていましたし、終盤に撮影したこともあってより一層チーム感が出ていましたね。最終回で、炭鉱員の北村(中村シユン)がタバコをくゆらせているシーンがあるのですが、その撮影ではスタッフさんたちが大号泣。人生の酸いも甘いも経験されてきた俳優さんの表情やニュアンスは、20、30代には出せないもの。貫禄、切なさ、寂しさを一気に感じ、塚原監督も思わず階段を駆け降りてきて「泣きました〜!」と言っていました(笑)。どんなシーンなのかは放送を楽しみにしていてください!
――本作の物語そのもののテーマに、未来につながっていく力を感じます。
時代はつながっていて、自分が歩く道の先にも未来があります。便利な物であふれる現代ですが、そんな時代を生きる玲央(神木隆之介が一人二役)は第8話で「もっと思いっ切り笑って、誰かのために、泣いたり、幸せになってくれって祈ったり。石炭が出ますようにって心の底から願ってみたい。…俺もダイヤモンドがほしい」とこぼします。きっと玲央はその“ダイヤモンド”を見つけて歩いていくでしょう。本作を見たことで未来が変わるのか、それとも変わらないのか。皆さんにも地続きの人生から、未来につながる何かを見つけてもらえたらうれしいです。
――最終回に向けて視聴者の皆さんにメッセージをお願いします。
全ての謎が解き明かされる2時間になっています。視聴者の皆さんもそれぞれ興味や着眼点が違うので、注目しているキャラクターも違うと思います。現代パートでは滝藤賢一さんと麻生祐未さんが演じる新しい登場人物も出てきて、より一層、人生は地続きであると実感していただけるはず。考察してくださっている方々には答え合わせをしていただき、していない皆さんにはキャラクターたちの人生をただ温かく見守ってもらえたら。最終回を見て、もう一度第1話から見返していただくと、格別の感動を味わっていただけると思います。
過去と現在を結びつける壮大な物語が描くのは、時代を超えて繰り返される人間ドラマそのもの。時代の波に翻弄されながらも歩み続ける人々の姿は、私たち自身の人生とも重なる。歩んだ道の先に待つ未来は、変えられるのか、それとも変わらないのか。70年の愛の物語が残すメッセージには、未来と向き合うきっかけが隠れているかもしれない。