今年も1週間後に迫った『NHK紅白歌合戦』。SNS上では出場者の面々について、
《圧倒的にショボい》
《特に目玉がない感じ》
など、かなり手厳しい言葉が並んだ。『週刊女性』が全国の40代〜60代の男女、500人にアンケート調査をした結果では、今年の『紅白』を見る人、203人。見ない人は297人と、約60%の人が見ないと答えている。毎年、友達と一緒に『紅白』をツッコみながら見ているという漫画家のカトリーヌあやこさんは、
「アンケート対象がこの年代層だからこのくらいだけど、若い層を入れたら“見ない”人はもっと増えると思います」
と、バッサリ。
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「毎年一緒に見ている友達も、今年は見なくていいかな、と言っているくらい肩透かしの出場歌手になりましたね(笑)」(カトリーヌさん、以下同)
紅白歌合戦のキーマンたち
そんな中で、「期待している出場歌手」にランクインした歌手たちを見てみると、
Mrs. GREEN APPLE以外は毎年出場している常連組と、その間を縫うように何十年ぶりかの顔が─。
「逆に、この世代が答えるアンケートで、Mrs. GREEN APPLEが1位に入っていることが驚き(笑)。ベテランのみなさんが並ぶ中、南こうせつさんと並んでトップというのも不思議な感じですね。
あと、NHKは“周年”というキーワードが好きなんだなと。こうせつさんは来年で55周年だし、THE ALFEEさんは今年で50周年。ベスト5には入っていないけど、GLAYさんもデビュー30周年ですよね。昨年も椎名林檎さんが25周年で出場していましたし。絶対にタレントさんの周年を調べてキャスティングしていますよね」
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確かにランキング外の6位に入り、32年ぶりの出場となるイルカも、持ち歌の『なごり雪』が50周年だ。
「あと“復活”というキーワードもありますよね。昨年だと、ポケットビスケッツとプラックビスケッツが『紅白』だけで復活し、25年ぶりの出場と話題になりました。まだ今年は発表されていませんが、同じような特別枠という“隠し玉”があるのでしょう」
昨年は出場者発表の後にデビュー50周年のQUEEN、12月に入ってからは寺尾聰や薬師丸ひろ子などの特別枠での出場が発表された。
「でもわざわざ見ようと視聴者に思わせるのは、SMAPや嵐クラスの復活じゃないと厳しいでしょうね。嵐は今年が25周年の年だから、もしかしたらあるかも、という淡い期待はありますが、SMAPはあと何年かしないと無理でしょう。それまで『紅白』が続いているかという問題もありますけど(笑)」
根強い中森明菜待望論
復活という“枠”では、中森明菜が毎年、話題に上がる。アンケート結果でも、「この人が出場すれば見る」というランキングではトップの票数を集めた。
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「NHKは、まだ明菜さんを口説こうと頑張っていると思いますよ。今年はBSで過去のライブ映像を流したり、少し前に放送された、『紅白』のスタートアップ企画のような番組で、懐かしの名場面コーナーでは、明菜さんの映像を流していました。
今、1980年代〜90年代にかけてのアイドルたちって注目されているじゃないですか。“今、見たい”“もう一度聴きたい”という声は多いと思うので、明菜さんを含めてそのあたりの歌手が復活すると視聴者も喜ぶんじゃないかな」
アンケートの「この人が出場すれば見る」の結果は、明菜に続いてサザンオールスターズや、中島みゆき、米津玄師らの名前が並んだ。
「朝ドラの『虎に翼』と『おむすび』の主題歌を担当した、米津さんもB'zも今年は選ばれませんでした。発表前には絶対出るだろう、なんて予想されていましたけど。
特別枠なら、今年は、29年ぶりに武道館でライブを開催した、とんねるずなんて狙い目じゃないですか? 初出場の新浜レオンさんのプロデュースを木梨憲武さんがしていますし。そこでの絡みがあったら面白そうですね」
今回のアンケートで、興味深い数字がある。今年は「『紅白』を見ない」と答えていた人たちの中で、「誰が出ても見ない」と答えていた人は137人。ということは、今年は見ないと答えた人の中でも「この人が出れば」見るのは、500人中160人もいるのだ。
「ここ何年かの『紅白』は、歌手の人選が絶妙に外れているというか……。中途半端なんですよね。高齢者をターゲットにするなら、そういう人たちが喜ぶキャスティングにすればいいし。若い層を呼び込みたいのなら、そっちに振り切ればいいのに、どちらも取ろうとするから、両方の層からソッポを向かれてしまう。各層をターゲットにした人選をして、別番組に分けるくらいしないともう無理な時代だと思います。
音楽番組が少なくなった今、フジテレビ系の『FNS歌謡祭』とか日本テレビ系の『THE MUSIC DAY』といった大きな歌謡祭として、『紅白』のような番組を各局が作っています。年に一度、スターが集まることで視聴者が喜んでいた『紅白』の価値が、なくなってきているのでしょう」
見る、見ないはアンチも人選次第!?
出場する歌手側にしても、昔は“『紅白』出場歌手”という肩書を欲しがっていたが、今やNHKからのオファーを断る歌手も多い。世間から“オワコン”と呼ばれてしまうのも仕方のないことなのかもしれない。
「昔は夜9時から12時前までの放送でしたが、今は前振り番組とかを合わせると、1日中放送している感があります。お笑い芸人さんに頼りながら、副音声で座談会をやったり。もうそういうのをやめて、純粋な音楽番組に戻すのがいちばんいいのかなと、私は思います」
止まらない若い世代のテレビ離れ。カトリーヌさんは、視聴者として確実に見てくれる層に向けての企画にしてしまうことを提案した上で、
「今は音楽の聴き方も多様化していて、今年いちばん聴かれた曲といっても、誰もが知っているわけではなくなりました。そういう時代の流れも『紅白』の寿命を縮めているのかもしれませんね」
老い先短い(!?)定めといわれても、やはり歴史のある歌番組。視聴者が見たいと思う歌手をキャスティングできれば、人気は復活するはず。年末になると噴き出てくる“『紅白』不要論”が、「この歌手に出てほしい」の“希望論”に変わるよう、NHKの踏ん張りどころなのかもしれない。
取材・文/蒔田 稔