同志社大学と佐賀大学の研究グループは、硫化水素中毒の解毒剤の開発に成功した、と発表した。
硫化水素は火山や温泉地などで自然発生するガスで0.3ppm程度の低濃度では独特の腐卵臭を発するが、50ppmほどになると嗅覚がまひして臭いを感じなくなり、毒性が顕著に現れ始めるという。100ppm以上の濃度で吸入すると死亡する危険性がある。空気よりも比重が重いため地下にたまりやすく、石油やガスの生産工場では最も危険な化学物質とされている。硫化水素は下水処理作業や農業施設、学校での理科の実験などで不意に発生しまうことがあり、救急搬送される事例が年間十数例報告されている。
研究グループは、硫化水素を生体内で補足し、無毒化する人工ヘモグロビン化合物を開発した。この化合物は、血液中で酸素や一酸化炭素(CO)などのガスと結合することから、同志社大の研究チームが人工血液の素材として研究開発を進めている。
解毒作用はマウスを使った動物実験で実証された。致死量以上の硫化水素ナトリウムを投与したマウスに、中毒症状が出た後すぐに化合物を投与すると約8割のマウスが死亡を免れたとしている。投与された化合物は分解されずそのまま尿中に排泄され、安全性が高いことも確認された。
研究グループのリーダーである同志社大理工学部の北岸宏亮教授は、救急救命医薬品としての実用化を目指している。
成果は英科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」に掲載された。
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