2016年にジョイントライブを行ったことをきっかけにアルバム制作、その後もライブ活動を続けているのが南佳孝と杉山清貴のユニットHalf&Half。不定期ではあるがライブ活動も積極的に行っており、2人のコラボが見られる場所としてチケットも争奪戦となっている。
【ライブ写真】新曲2曲含め85分のクリスマスライブ 今年は12月23日に大阪、そして12月25日にビルボードライブ横浜の2ヶ所でクリスマスプレミアムライブを開催。1日2回公演のチケットは早々とソールドアウトし、ファンの期待は年々高まっていることがうかがえた。今回は25日クリスマスの最終公演『南佳孝&杉山清貴Half&Half Xmas Premium Live2024 〜Holy Brother Night〜』の模様をレポートする。
■まるでリビングに招かれたようなリラックス感のあるライブ
クリスマス当日の横浜みなとみらい地区は人と車であふれていた。その景色は立ち並ぶ高層ビルや観覧車の無数の光できらめき、シティポップの草分けといわれる南佳孝とシティポップの代表格の一人、杉山清貴のライブはまさにその地にふさわしく、集まったファンの期待は高まりを見せていた。
ステージはビートルズのカバー曲「Baby‘s in Black」からスタート。この2人のユニットは邦洋の良質なスタンダード楽曲を歌い継ぐことも大きな目的であり、ユニットのファーストアルバム『Nostalgia』収録のこの曲からのスタートは納得なのだ。
その後もピーター&ゴードンの「愛なき世界」やエバリー・ブラザーズの「Let it be me」、あおい輝彦「あなただけを」と続いていく。
客席を埋めているのは40代から60代の男女と思われる。みな歓声をあげるわけでもないが、拍手はしっかりと大きく、心から楽しんでいること、2人の声を堪能していることがわかる。まさに会場の雰囲気も極上なのだ。日本のポピュラーミュージックも成熟したと感じる。
だからか、2人のトークも決して客席にぐいぐい入り込んで来るような内容とせず、淡々と楽曲解説をしたり近況を報告したりといった具合。特に、この日のライブは、2人それぞれにとっての今年の最後の仕事のようで、明日はサーフィンに行くのが楽しみと杉山清貴が語ったかと思えば、南佳孝は愛用のパソコンがクラッシュして飛んだデータを500GBだけ救出できた話をする、などなど。まるで2人の自宅のリビングに招かれてライブを聞いているようなリラックス感が会場全体に漂っているのが面白い。
■新曲2曲含め85分、これからもクリスマスにライブを
今回のライブのために2人は新曲も2曲用意した。「MISS YOU」と「二人だけのMerry Christmas」だ。特に、銀座の華やかなイルミネーションをイメージして作ったというそのクリスマスソングはソフト&メロウで2人のボーカルが心に残る。ぜひレコーディングしてもらいたいと思える楽曲だった。
アンコール最後の曲「Nostalgia」まで計14曲、85分のステージ。クリスマスらしく「Jingle Bell Rock」をカバーするなどの特別感を盛り込みながら、「Pink Flamingo」や「愛を歌おう」などのオリジナル曲も披露し、誰もが楽しめる時間となった。
終了後、2人にステージの感想を聞いた。
「佳孝さんがクリスマスソングを仕込んでくれたんで、通常のライブとはちょっと違った特別感のあるひとときになったんじゃないかと思います。とても楽しく今年最後の仕事をやらせてもらいました。来年もぜひクリスマスに横浜でやりたいですね(笑)」(杉山清貴)
「お客さんがいつもよりちょっとおめかししているように思いましたね。聴いていただいた方たちにとっても特別感のあるライブになったように思います。少しトークでは無礼講的になりましたが、それも特別なライブということで許してもらえるかな」(南佳孝)
今回のクリスマスライブは好評のうちに終了した。大人のボーカリスト2人の相性は抜群だったと言って良いだろう。すでに来年の開催に向けビルボードライブ側とも話し合いがもたれているという。開催が確定すれば、ファンにとっても、今後恒例のイベントとなることは間違いなさそうだ。
■3月には鈴木茂含めてのライブ、異質の3人で、どんな展開になるか
ところで、南佳孝と杉山清貴にもう1人、レジェンド・ギタリストの鈴木茂を入れた3人の特別ライブが2025年3月7日と9日の2回、有楽町のI’M A SHOW(アイマショウ)で行われることが決定した。最後はその情報を2人に確認した。アイデアは南佳孝のスタッフから出たという。
「(鈴木)茂さんは佳孝さんのバックでいつもギターを弾いていたりもしますが、僕の方は一度だけ茂さんと2人でライブをやったことがあるんですよ。かなり不思議なライブだったので印象に残っているんですが、これが3人になると一体どうなるのか、楽しみでもありドキドキでもありますね(笑)」(杉山清貴)
「(鈴木)茂にはバックを務めてもらったりもありますし、さまざまな共演はしていますが、この3人でライブをやるのは初めてですからね。まだ何も決定していないのですが、オリジナル曲をやることも考えてみたいなと思います。ただ異質の3人ですから予定調和ではないライブになると思います。年明け早々には3人で話をしないといけないですね(笑)」(南佳孝)
南佳孝&杉山清貴のユニットは、時にアメーバのように形を変える。でもカバー曲を歌いコーラスを楽しみ、自分たちならではの楽しい音楽を追求し続けていくという気持ちに揺るぎはない。年齢に応じて音楽活動を変化させていくことはどんなミュージシャンも通る道。こんな風に年齢を重ねられれば素敵だなと思わせてくれたのが今回の2人のコンサートだった。
文・垂石克哉