日本有数の映画ガイド・高橋ヨシキが新作映画をレビューする『高橋ヨシキのニュー・シネマ・インフェルノ』。映画オタクが現実に直面する、ほろ苦くも温かい青春コメディ!
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『I Like Movies アイ・ライク・ムービーズ』評点:★3点(5点満点)
周囲の人のナイスさに助けられる青春
映画が大好きで、将来は映画の道に進みたい! そのためには尊敬するトッド・ソロンズ監督が教鞭をとるニューヨーク大学に行って、16ミリフィルムを使った映画作りを学ぶしかない! と決め込んでしまった夜郎自大な高校生が主人公の、まあまあ痛々しい青春ドラマである。
「まあまあ痛々しい」と表現せざるを得ないのは、確かに主人公は尊大で生意気で困ったやつではあるものの、周囲の人々が総じてナイスなので、彼の「みっともなさ」も極限までエスカレートせずに済んでしまっているからで、結果として「まあいろいろ思うままにならないこともあり、焦りもあって大変かもしれないが、でもまあ青春というのは大概そんなものだからなあ」というホンワカした青春映画に仕上がっている。
そこには挫折があり、自分を見つめ直すきっかけがあり、やがて一歩大人への階段に歩を進めるときが来て、そこで映画は終わる。ホンワカして優しい映画なので、その先の退屈で凡庸な人生を意地悪く予感させたりはしておらず、それがいいとも言えるし、物足りないとも言える。
とはいえ主人公はじめ役者陣の見事な芝居もあり、ホンワカした世界にもちゃんとリアリティがあるのが面白い。
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STORY:カナダの田舎町で暮らすローレンスは、周囲となじめない映画好きの高校生。唯一の友達マットとつるみながら、ニューヨーク大学で映画を学ぶことを夢見る。学費をためるため、地元のビデオ店でアルバイトを始めるが......
監督・脚本:チャンドラー・レヴァック
出演:アイザイア・レティネン、ロミーナ・ドゥーゴ、クリスタ・ブリッジスほか
上映時間:99分
全国公開中