Gグローブ賞4冠の『SHOGUN 将軍』には原作小説があった。「史実を知ってる日本人」でも“架空”の戦国大戦に胸を躍らせるワケ

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2025年01月07日 16:11  日刊SPA!

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『将軍 1』(全4巻 扶桑社)
 ハリウッドにおけるテレビ・映画の祭典であるゴールデングローブ賞で真田広之さんがプロデュース・主演したアメリカの作品「SHOGUN 将軍」がテレビドラマ部門の作品賞を受賞。さらに、真田広之さんが日本人俳優として初となる「主演男優賞」を受賞、浅野忠信さんも「助演男優賞」を受賞するという快挙を達成した。
「SHOGUN 将軍」は戦国時代の日本を舞台にしたドラマシリーズで、ハリウッド映画の制作陣が手掛けた。実は本作品は、書籍『将軍 1・2・3・4』(ジェームズ・クラベル著、扶桑社刊)が原作となっている。

 ドラマでは真田広之が演じた吉井虎永の視点が中心だったが、ジェームズ・クラベルの原作では日本に漂着した英国人ジョン・ブラックソーン(ドラマではコスモ・ジャーヴィスが演じた)の視点に重きが置かれており、より繊細かつエロティックに戸田まり子との恋模様が描き出されている。

 映像以上に残酷でドギツい描写など、異国の目線で描かれた「フィクションの中の日本」の姿に思いを馳せるのも一興だろう。

『将軍 4』では、アメリカTVドラマ評論家・堺三保氏が原作小説ならではの魅力を次のように解説している(以下、解説原文を掲載)。

◆日本人俳優たちのアメリカでの需要に変化が?

 いま、アメリカで大きな話題となっているドラマがある。それが本作を原作とした『SHOGUN /将軍』だ。

 この作品のドラマ化は実は2度目なのだが、今回のリメイク版の評判は前作を凌しのぐ大きなもので、アメリカのレビューサイトRotten Tomatoes では批評家スコアが99%、視聴者スコアが91%という高評価を記録、配信サービス「ディズニープラス」による世界配信では第1話の配信開始から6日間で全世界900万回の再生回数という記録を達成、2024年にエミー賞を受賞した。

 また、主演の真田広之、ヒロイン役の澤井杏奈の2人は、アメリカの雑誌やテレビに引っ張りだこの人気ぶりで、長年アメリカで活躍してきた真田はもちろん、まだ出演作の少ない澤井はほぼ一夜にしてハリウッドの大物スターの仲間入りをはたしたと言っても過言ではない注目ぶりとなっている。

 いや、この2人だけでなく、今回のドラマ化によって、日本を舞台にした作品や日本人俳優たちのアメリカでの需要が、大きく加速するかもしれないという勢いなのである。

 では、その『将軍』とはどんな物語なのか。

◆関ヶ原の戦いをモチーフに

 舞台は西暦1600年の日本。日本に漂着したオランダ船のイギリス人航海士ジョン・ブラックソーンは、日本の侍たちに捕らえられ、最終的に関東の大物大名である吉井虎長の家臣となり、大坂で政治の実権を握る石堂和成と虎長との、日本の覇権を懸けた戦いに巻き込まれていく……。

 と、こう書くと、ほとんどの読者の皆さんは

「ちょっと待った! 吉井虎長? 石堂和成?それは誰!? 1600年の日本で争ったと言えば、徳川家康と石田三成でしょ!」
となるだろう。

 本作はあくまでも実際の史実をベースとしたフィクションであり、そのため、モデルとなる人物たちの名前を使わずに、それぞれ別の名前をつけてあるのだ。

 なんでそんなことを、とお思いの方もおられるかも知れないが、実はこれ、日本でもわりとお馴染みの手法ではある。

 もっとも顕著な例は、NHKのテレビドラマである〈朝の連続テレビ小説〉だろう。あの枠のドラマでは、実在の人物をモデルにした場合、主要登場人物たちの名前を変更し、史実にある程度沿いつつも、あくまでも架空のドラマとして物語がよりドラマティックになるよう、脚色が為されている。

 本作もまさに同じ意図のもと、登場人物たちに新たな名前を与え、史実の大枠からははみ出さないようにしながらも、より劇的で波瀾万丈な展開を用意している。それはまた、元々の史実を知らない英米の読者に対して、よりわかりやすい物語にすることで読みやすさを担保するためでもあったと考えられる。

◆細川ガラシャ以上に悲劇的な運命を

 何にせよ、海外の読者にとっては問題はないものの、日本の読者にとってはいちいち「これ、誰だっけ?」と脳裏に疑問符が浮かびがちなのは事実だろう。

 だが、それは逆に言えば、我々史実を知っている日本人にとっても、物語の次の展開が読めない、ということであって、まるで未知の物語のように「このあと、いったいどうなるのか?」とどきどきしながら楽しめるようになっているのだ。

 読者の皆さんにも、一度頭をまっさらにして、この「知っているようで知らない」もう1つの戦国最後の対決を楽しんでいただきたい。

 中でも、本作のヒロインである戸田まり子は、史実における細川ガラシャをモデルとしているのだが、ある意味、本作の真の主人公は安針でも虎長でもなくまり子なのだと言うこともできるほど、史実のガラシャ以上にドラマティックで悲劇的な運命を辿ることになるので、ご注目いただきたい。

<構成・文/日刊SPA!編集部>

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