お互いを大切に思っている家族同士でも、考え方の違いやタイミングによっては相手を不快にさせてしまうこともあるかもしれません。
「修復には時間がかかることもあるので、家族だからこそ、時には行動に注意してほしいです」と苦い経験を話すのは、岩井未希さん(仮名・30代後半)。
未希さんの父親は、娘の帰省や電話のたびに「結婚しないのか」と口うるさく言ってきていました。実家はとある地方の田舎町で、遅くにできた一人娘ということもあり、お父さんが心配してくる気持ちは未希さんも理解していたといいます。
そんな二人の間に起こってしまった“二度にわたる大ゲンカ”とは――。
◆結婚を催促する父のため、サプライズで彼氏を連れて帰省
「結婚を催促する父の気持ちはわからないでもないですが、それでもあまりしつこく言われると、だんだん気持ちも滅入ってくる。お酒が入ればなおさらです。
ある年の帰省で、お酒に酔ったことも手伝い、『お前の将来が心配なんだ』『人生に伴侶は絶対に必要』などとダル絡みしてきた父と大ゲンカになりました」
未希さんいわく、「父は、“女性の幸せ=結婚”と考えている古い人間。幼少期から、父がご飯を作ったり洗濯したりしているのは見たことがありません。ただ、仕事は休んだことがなく、進んで残業をし、休日にはゴロゴロして過ごす昭和を絵に描いたような人」なのだとか。
「母が数年前に亡くなってからは、余計に私の結婚について気にするようになっていたのです。
そのときは、『結婚より仕事がしたい!』『仕事に命をかけている!』と大袈裟なことを言って実家を飛び出し、そのまま2年ほど帰省を控えていました」
でもある日、運命の出会いが訪れたのです。漣さん(仮名・30代後半)と知り合い、結婚も視野にお付き合いするようになった未希さん。「父も絶対に喜ぶはず」と考え、ある年の年末、彼氏といっしょに帰省することにしたのです。
◆「涙を浮かべて喜ぶ父」を思い浮かべていたのに
「心配性で慎重な性格、悪くいえば小心者の漣は、『本当に大丈夫?』『連絡してから行ったほうがいいんじゃない?』と心配していましたが、『絶対に大丈夫!』と押し切りました。そして漣に運転してもらい、実家へと向かったんです」
漣さんには家の外で待機してもらい、未希さんが先に実家を訪問。
「今年は紹介したい人がいる」「実は今年、結婚も視野にお付き合いしている人を連れて来ている」と話し、父親が喜んだところで、漣さんに登場してもらう予定でした。
「父が涙ぐむことまで想像していた私は、自分用のミニタオルまで準備。感動の初対面となるのを期待し、漣のことを話したんです。ところが……」
◆父親は大激怒!「まさかの反応」の理由は
「次の瞬間、『仕事が命と言っていたのはウソか!』と父は大激怒。予想外の反応に、一瞬、思考が停止しました」
「父は、『俺はいろいろ考えて、そういう人生もアリかと腹を括ってお前を出迎えたのにコロコロ変わりやがって』『お前の仕事への熱意はそんなもんか!』など、次々と不満を口にします。
実家は古い木造の一戸建て。換気のため開け放している窓もある状態でした」
どう収拾をつければいいのか戸惑っていると、LINEの通知音が。嫌な予感がしてLINEを見ると、彼氏からのメッセージでした。
「ごめん、いったん帰るね」という文字に、思わず玄関から飛び出した未希さん。
けれどもう、そこに彼氏の姿はありませんでした。
「すぐに電話もかけましたが、ずっと話し中。すぐに実家を飛び出し、彼氏の元へ向かいました。でもその日、彼氏は自宅マンションへ戻って来なかったのです。そして、LINEも既読にならず、音信不通になりました」
◆彼氏とは破局、父親とも再び大ゲンカ
数日後、漣さんから「僕には、あんなに結婚に反対しているお父さんを説得できるだけの勇気も気力もないです。ごめんなさい」というメッセージが送られてきましたが、未希さんからはまったく連絡がつかずそのまま破局。
「またまた父と大ゲンカになりました。怖気づいた彼氏にも腹が立ちますし、事前に彼氏のことや帰省することを伝えず実家に帰った自分の行動にも問題があったとは思います。
だから反省すべき部分もあるとは思いますが……もうしばらく実家には帰省しないと誓いました」
誰かのことを思って行動したとき、予想していた反応や結果とは違うこともあるかもしれません。たとえ相手が家族や身近な人であっても、考え方や想いを見極めることは難しいもの。
コミュニケーションをしっかりと取りながら、上手にお付き合いしたいものですね。
<文/山内良子>
【山内良子】
フリーライター。ライフ系や節約、歴史や日本文化を中心に、取材や経営者向けの記事も執筆。おいしいものや楽しいこと、旅行が大好き! 金融会社での勤務経験や接客改善業務での経験を活かした記事も得意。