【動画】私たちが歩む道の先には、石のように重い扉が立ちはだかる――『石門』日本版予告
本作は、望まぬ妊娠に直面した20歳のリン(ヤオ・ホングイ)を主人公に、女性の前にあるさまざまな壁を静かに見つめる作品。“中華圏のアカデミー賞”と称される金馬獎で最優秀作品賞と最優秀編集賞の2冠に輝いたのをはじめ、バンコク世界映画祭で最優秀脚本賞、香港国際映画祭で火の鳥賞・最優秀女優賞・国際批評家連盟賞、全州国際映画祭でNETPAC賞を受賞し、ベネチア国際映画祭では「ベニス・デイズ部門」にノミネートなど世界の映画祭で絶賛され、これまで8受賞&11ノミネートを果たしている。
監督は、北京電影学院で脚本を学んだ中国湖南省出身のホアン・ジーと、日本でドキュメンタリー制作に従事した後2005年に中国へ移住した東京出身の大塚竜治。夫婦でもあるふたりは、一貫して女性の視点や経験を重視し、社会的なタブーを映し出すことに挑戦している。封建的な湖南省の農村で出稼ぎをする両親と離れて抑圧された生活を送る14歳の少女を描き、ロッテルダム映画祭タイガー・アワードを受賞したデビュー作『卵と石』、学校で没収されたスマホを売ったことで見知らぬ男たちと知り合うことになる16歳の少女を追った2作目『フーリッシュ・バード』では、ベルリン国際映画祭ジェネレーション14+スペシャルメンション賞を授与された。『石門』に続き、この2作品も日本初公開が予定されている。
2019年、中国湖南省の長沙市。単発の仕事で日々お金を稼ぎながら、客室乗務員になるための勉強をしている20歳のリン。郊外で診療所を営んでいる両親は、死産の責任を求めて賠償金を迫られていた。ある日リンは、自分が妊娠1ヵ月であることを知る。子供を持つことも中絶することも望まなかったリンは、両親を助けるため、賠償金の代わりにお腹の子供を提供することを思いつくが…。
日本版予告編は、客室乗務員を目指す主人公のリン(ヤオ・ホングイ)が、英会話教室のパーティに参加している場面から始まる。大学に通いながら英会話のスキルを高める努力を続けている地方出身の彼女は、パーティで自分の居場所を見つけられない。「何が得意?」という問いに「客室乗務員の学校に通っています」と答えると、「美人向きの仕事だね」と言われてしまう。そんなやりとりと共に映し出されるのは、リンが客室乗務員の実習をする風景と、宝飾店の店頭でドレスを着てたたずむ姿。診療所を営んでいる両親が、死産の責任を求めて賠償金を迫られているため、彼女はアルバイトをして仕送りをしているのだ。
|
|
だが、交渉相手は子供の面倒は見ないと突き放す。養子として引き取るのであれば、その子が健康体であることが確認できるまで受け入れないというのだ。その渦中、定期検診を終えたリンは、母親になる女性に「あなたが育てるのよ」と診断書を手渡すが、彼女は興味がないとばかりに一瞥(いちべつ)するだけ。
慰謝料返済のために「月に1万5千元」かかると言う母は、マルチ商法まがいのビジネスで稼ごうとしている。家族の誰もが「人に借金はしたくない」と思っているが、松葉杖の父を交えて親子3人で口論する羽目に。そして、屋上にプールがしつらえられたビルからの眺望と、卵子ドナーとなる女性たちが食事する姿が映し出される。急激に都市化が進んだ地方の街で、今、何が起こっているのか。望まぬ子を身籠(みご)もった20歳の女性の前には、全世界共通の他人ごとではない石のように重たい扉が立ちはだかる―。
場面写真は、宝飾店の店頭でドレスを着せられ佇むリンの姿などを収めている。
ホアン・ジーと大塚竜治は、主人公が生きる世界を、一定の距離感を保ちながらドキュメンタリータッチで撮影した作品を作り続けてきた。そんな彼らが『石門』を通して、今を生きるすべての人に問いかけることとは何か、スクリーンで確認したい。
|
|