久保建英に続くのは誰だ? 日本人選手にとって鬼門、スペイン挑戦の候補者を探る

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2025年01月19日 17:20  webスポルティーバ

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リーガ移籍候補を探る(1)〜ストライカー編

 今冬のマーケット、レアル・ソシエダ(以下ラ・レアル)の久保建英の「プレミアリーグ移籍の噂」がまことしやかに報じられている。結末がどうなるにせよ、活躍ぶりを考えると、移籍は時間の問題か。

それだけ熱烈なラブコールを受けているわけで、久保がラ・リーガで道を広げた、とも言い換えられる。

「ラ・リーガで結果を出した日本人選手」

 多くの選手が挑戦しながら、そう言いきれるのは、久保以前は乾貴士(清水エスパルス)ひとりだった。シーズンの半分程度の期間、上々の結果を残した選手はいたが、1シーズンを通して活躍できたのは乾のみ。ただし、それは1部では下位のエイバルでのプレーだった。

 久保は18歳でマジョルカに入団し、1年目から乾に肩を並べた。ビジャレアル、ヘタフェ、マジョルカと流転するなかではやや停滞したこともあったが、ラ・レアルに移籍後、輝きを放った。ダビド・シルバのような天才レフティとプレーすることで、才能が解き放たれた。チームをチャンピオンズリーグ(CL)出場にけん引し、CLベスト16の立役者にもなった。

 その点、彼は特別な日本人だ。

 たとえばプレミアリーグのスター、三笘薫(ブライトン)は久保と双璧を成す日本人選手と言える。しかしプレミアでは、香川真司(セレッソ大阪)、南野拓実(モナコ)、冨安健洋(アーセナル)、遠藤航(リバプール)が、悪戦苦闘しながらも、マンチェスター・ユナイテッド、リバプール、アーセナルというメガクラブに在籍。岡崎慎司はレスターでリーグ優勝に貢献し、吉田麻也(ロサンゼルス・ギャラクシー)もサウサンプトンで長くプレーした。三笘は彼らに続く存在だ。

 一方、久保はスペイン、ラ・リーガの"開拓者"と言える。

 今回は、久保がスペインで成功した理由を解き明かしながら、後に続く日本人選手を考察する。ストライカー、サイドアタッカー、トップ下、ボランチ、センターバック、サイドバック、GK......ポジションごとに、最適の人材はいるのかを探る。

【図太さが要求されるストライカー】

 第1回はストライカーだ。

 率直に言って、ストライカーの挑戦は難しい。ラ・リーガではタフさが求められる。それはゴール数の要求であり、正念場でのゴールであり、実際に90分、1シーズンを戦う体力、メンタルでもある。

 マーキングのタフさは、プレミアのほうが激しい。ただ、スペインでは駆け引きで頭を使う。多くのディフェンダーが非常にずる賢く、嫌らしく、執拗で、たとえば腕を使う術にも長ける。久保が受けている徹底したマーキングを見てもわかるだろうが、ピッチでは手段を問わない。そしてストライカーが受けるプレッシャーはサイドアタッカー以上だ。

 ラ・リーガで活躍できるストライカーは、超人性が求められる。過去のクリスティアーノ・ロナウド、ディエゴ・コスタ、ルイス・スアレス、ダビド・ビジャ、カリム・ベンゼマ、あるいは現在のロベルト・レバンドフスキ(バルセロナ)のように、心身ともに図太さが要求される。何度も駆け引きし、マークを外す能力に長け、ボールをゴールに飛ばすスキルとパワーが必須だ。

 日本人でも、大久保嘉人は匹敵するセンス、パワー、気性を持っていた。だからこそ、マジョルカでは1年目デビュー戦でいきなりゴールし、終盤5試合で神がかった活躍を見せた。しかし、その戦闘力を90分、あるいは1シーズン、コントロールする力が足りなかった。

 コミュニケーションの問題も見逃せない。

 スペイン人選手は、スペイン語ができない外国人選手を軽んじる傾向があるし、今も潜在意識で日本人サッカー選手を下に見ているようなところがある。

 郷に入っては郷に従え、だ。

 たとえばドイツでは、日本人の勤勉さや規律正しさが尊敬の対象になる。生き方の姿勢でコミュニケーション不足を補えるからこそ、ドイツ語をマスターしなくても、多くの成功者が出ている。しかしスペインでは、ずる賢さや奔放さ、明るさが美徳で、寡黙を気取ると孤立する。日本人は語学力が低く、関係性を作ろうとすると、それだけで疲弊するのだ。

【高く評価されていた岡崎慎司】

 大久保だけでなく、城彰二(元バジャドリード)、西澤明訓(元エスパニョール)、ハーフナー・マイク(元コルドバ)、武藤嘉紀(ヴィッセル神戸、元エイバル)など、いずれ劣らぬ日本代表FWがスペインに挑戦した。数試合は非凡さを見せたが、1シーズンにわたって活躍はできていない。消耗戦に勝てなかったのだ。

 スペイン人指導者やスカウトなど関係者の意見を総合すると、過去の日本人FWで最も評価されたのは岡崎慎司だろう。

「岡崎のプレーは知的だ。それが効率的なプレーにつながり、ストレスが少ない。ゴールに近づくにつれ、抜け目のない動きができる。多くのアタッカーは逆だ」

 Sportivaのご意見番で、ラ・レアルの強化部長、育成部長、スカウトなどを歴任したミケル・エチャリもそう証言していた。

「私は南アフリカワールドカップ前から『岡崎はラ・リーガのミドルクラスのチームでプレーできる』と評価してきた。ゴール前のポジション取りが天才的。ディフェンスライン、パス、走り込むスペースを瞬時に計算し、最高の答えを出す。とりわけ、ダイアゴナルに走り込む感覚も百点満点。ゴールに向かう意識が高く、そこでのミスが少なく、ヘディングも高い技術で、欠点を探すのが難しい」

 岡崎は2部ウエスカで12得点を決め、1部昇格に貢献した。その点、エチャリの評価を裏付けたと言える。1部ではわずか1得点に終わり、チームも降格したが、当時34歳と最盛期を過ぎていた

 岡崎の知性こそ、今後もラ・リーガ挑戦の日本人FWの鑑とすべきだ。

「誰が通用するか」

 その議論で言えば、現在では上田綺世(フェイエノールト)が条件を満たすだろう。論理的なアプローチをするFWで、激しいせめぎあいの中でプレーするタフさもある。シュートのバリエーションやパワーは瞠目すべきだ。

 しかし、「通用する」と「活躍する」は違う。やはり、フェイエノールトで20得点を取るようなFWでないと、ラ・リーガでは厳しい。なぜなら、浴びるプレッシャーはオランダの比ではないからだ。

 チームが奉じるプレースタイル次第では、古橋亨梧(セルティック)も面白い。マンチェスター・シティの名将ジョゼップ・グアルディオラの参謀フアン・マヌエル・リージョ(元ヴィッセル神戸監督)が愛して声をかけたように、そのスピードと並行したゴールへのアクションの精度の高さは利点になる。ただ、スコットランドリーグはスペイン2部と同レベルで、活躍するには監督に恵まれる必要がある。

 現在、浅野拓磨はマジョルカでユーティリティなアタッカーとして起用されている。猛烈なスピードや献身性は、彼を初めて見るスペインのクラブにとっては戸惑いがあった。しかし、ケガがあったにせよ、過去のFWと同じでゴールに恵まれず、序列を下げつつある。正体が見破られないうちにゴールしないと、戦況は悪くなるのだ。

(つづく)

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