【写真】これがセット!? 再現された九龍城砦がすごい
■じわりとヒットなるか!?
香港で広東語映画として歴代No.1の動員数を記録し、社会現象を巻き起こした本作は、80年代の九龍城砦(きゅうりゅうじょうさい)を舞台に、黒社会の覇権争いを描くアクション映画。
香港へ密入国した若者・陳洛軍(チャン・ロッグワン)は、黒社会の掟に逆らったことで組織に追われ、運命に導かれるように九龍城砦へ逃げ込む。そこで住民たちに受け入れられ、絆を深めながら仲間と出会い、友情を育んでいく。やがて、九龍城砦を巻き込んだ争いが激化する中、陳洛軍たちはそれぞれの信念を胸に、命を懸けた最後の戦いに挑むというストーリーだ。
監督を務めたのは、第34回東京国際映画祭で上映され、池内博之も出演する『リンボ』や『モータ―ウェイ』を手掛けたソイ・チェン。日本からは、アクション監督として、『るろうに剣心』シリーズや『レイジング・ファイア』などの谷垣健治が参加。音楽は、『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』などアニメからドラマ、CM、ゲーム、舞台、映画までジャンルを超えて数多くの劇伴を手掛ける川井憲次が担当する。
評判高い本作で話題になっているのが、登場キャラクターの濃さ。特にバイクとナイフを華麗に操るナイスガイの信一(ソンヤッ)を演じたテレンス・ラウは、本作の香港での大ヒットを受け「香港の国民的夫」という称号を得て大スターとなった。SNSでも「カッコよすぎ」「もう一度見たい」「マジで刺さった」と、日本のファンの心を一気にわしづかみにした様子。ちなみにテレンスは、バイクで走ってきて勢いそのままにバイクでジャンプしながら敵に突っ込むというシーンなど、ハードなアクションをこなしていながらも、バイクには乗れないというギャップも持つ。そんな背景を感じさせない、彼のアクションシーンに、香港の劇場では女性客から「きゃー!」と嬌声が上がっていたという。
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加えて、忘れられないのが、フィリップ・ン演じる、大ボスの組織の幹部・大九(ウォンガウ)。鍛え上げられた硬気功により、その肉体は刀や銃も寄せ付けない。そんなチートとも言える能力ゆえに、主人公の洛軍らは大苦戦。「気功すごい」「気功最強!」「無敵すぎる」「観た後はきっとみんな気功を習いたくなるはず」と、大九の能力に魅せられる人がSNSでも続出している。
また、製作費の6分の1とも言われる、5000万香港ドル(約10億縁)かけて制作された九龍城砦のセットにも注目が集まっている。美術監督のマック・コッキョンは「われわれはまず、たくさんの資料を集め、大勢のかつての住人たちに会った。難しいのは、皆が目にするような資料からかつての人々の生活を作り上げること。暮らしの細部に焦点を当てることだ。われわれが描きたかったのは治安の悪さではなく、情のある生活だ」とコメント。チェン監督も「この作品を作った動機は城砦へのイメージを変えたいと考えたこと、売春・賭け事・薬物の無法地帯と言われるが、80年代はそうじゃなかった。大工場のようで人々の暮らす場所だった」と、人が生きた場所であることに重きを置いて、本作を作り上げた。
チェンとコッキョンはリアルに再現するだけでなく、要素を拡大したという。それを象徴するものの一つが水道管と電線だという。チェン監督は「3階より下には多くの水道管が張り巡らさせれている。実際城砦に通っていた水道管は1本。つまり、2階や3階の水道管は全部“盗水”なんだ。上階を走る大量の電線は“盗電”で1戸に1本繋がる。“混沌の中に秩序あり”めちゃくちゃに見えるが全部秩序があるんだよ」と語る。コッキョンも「城砦はめちゃくちゃなわけじゃない、それぞれの建物はきちんと整ってる。密集して建っているから細い通路ができているだけ。我々はそれを利用して主人公が内部を知っていく様子を描いた」と魔窟と呼ばれた九龍城砦とはまた違う表情を彼らが描こうとしていたのが見て取れる。
その熱量は観客にも届いており「とにかく九龍城の再現が凄すぎた」「セットが美しくて生活音の拾い方もきれい」「セットがとんでもないクオリティ」「裏社会版海に眠るダイヤモンドを感じたり」とSNSで絶賛。アクション監督の谷垣は、自身のXに撮影の裏側を投稿しており、そちらにもファンの注目が集まっている。
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映画『トワイライト・ウォリアーズ 決戦!九龍城砦』は公開中。