妻とのセックスレスに悩む男に41歳俳優が適役だといえるワケ。うつろな表情の“お願い”姿が

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2025年01月22日 16:01  女子SPA!

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『それでも俺は、妻としたい』 テレビ大阪株式会社プレスリリースより
 風間俊介にとってテレビ大阪ドラマ初主演である『それでも俺は、妻としたい』が、毎週土曜日深夜24時から放送されている。

 風間は売れないシナリオライターで、妻とのセックスのことばかり考えている夫を演じる。これが、かなり面白い。全編が映画的でもある。

 イケメン研究をライフワークとする“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が、脚本家が描く脚本家のドラマである本作を解説する。

◆少ない情報量で的確に描く冒頭場面

 家族生活の拠点であるリビング風景が、ワンショット目としてパッと映される。カメラが引じりを作るのにも苦労するくらいせせこましいように見える。でもこの狭い空間ひとつ映せば、3人家族の生態を把握するには十分である。

 夫・柳田豪太(風間俊介)は、なんともいえない表情で食器洗い。息子は、ソファにだらだら寝そべり、大好きなどぶろっくの動画を見ている。食器洗いの音は慎ましく、「大きなイチモツをください」という動画内の音はやたら響く。

 妻・柳田チカ(MEGUMI)は、湯船につかり、週刊誌のページを素早くめくっている。『それでも俺は、妻としたい』第1話冒頭場面では、家族関係とそれぞれのキャラクター性が、少ない情報量で的確に描かれている。

◆風間俊介の顔が作品トーンを規定

 簡潔な状況説明がされたあと、売れないシナリオライターである豪太が、ぼそりとつぶやく。「今こうして皿を洗っている俺は、今晩妻とセックスをしたいのだが、そのお願いをどのようにしようかと、今日の夕方からずっと考えている」。息子が見ている動画からさかんに響く「大きなイチモツ」と絶妙にリンクするこのモノローグ。

 それをどこか人懐こいが、虚ろな表情を浮かべて、豪太の切実な「お願い」を表現する風間俊介がうまい。あぁ、そうか、この作品は基本的にこの「お願い」だけで押すつもりなのね。と、本作全体のトーンを風間の顔が規定する。

 状況説明が的確で簡潔なだけでなく、主人公を演じる俳優の顔ひとつで、視聴者を誘導する丁寧な描き方である。しかもその盤石な語り方は、映画的な設計に基づいている。そりゃそうである。原作、脚本、監督を兼任するのが、足立紳なのである。

◆売れない脚本家を描く面白さ

 足立紳は、趣里主演の朝ドラ『ブギウギ』(NHK大阪、2023年)で脚本を担当し、他にも『百円の恋』(2014年)などの代表作がある。2020年公開の映画『喜劇 愛妻物語』では、『それでも俺は、妻としたい』同様に原作、脚本、監督もつとめた。

 同作でも売れない脚本家・豪太を主人公として、妻・チカとのセックスレスに悩む。これがもし売れている脚本家がブイブイいわせる物語だったら、全然面白くならないだろう。間が抜けてこそチャーミング。人間味がある脚本家像を描くから面白い。脚本家が脚本家を描く面白さがある。

 足立作品ではないけれど、生田斗真主演ドラマ『書けないッ!?〜脚本家 吉丸圭佑の筋書きのない生活〜』(テレビ朝日、2021年)でも売れない脚本家が主人公だった。『三島由紀夫vs東大全共闘〜50年目の真実〜』(2020年)などの豊島圭介監督が演出を担当して、ここでもやっぱり的確で簡潔な描写が映画的に処理されていた。

◆映画的に計算された動作

『それでも俺は、妻としたい』第1話で、ひときわ映画的だなと感じる場面がある。冒頭場面のモノローグで規定されたように、豪太は基本的に家にいて、ほとんど一日中、妻とセックスすることばかり考えている。

 不登校ぎみの息子の目を盗んで、こっそり手慰みにふけるような人である。そこへ制作会社のプロデューサーから連絡が入り、再現ドラマのシナリオライティングを依頼される。

 久しぶりの仕事。今晩はご褒美にありつけるぞ。と意気込む豪太はアクアパッツァを作る。でもチカは全然とりあってくれない。リビングのソファで動画を見ている息子の様子をうかがうチカ。ひとり丸椅子に座る豪太。おねだりを続ける。

 まず両手を握り(手慰みの延長?)、お願いの合図。そのあと左手をすっと動かして耳の裏をかく。足元はかかとを浮かせている。なんとなく流動的な一連の動作が、映画的にこまかく計算されているなと思った。深夜帯に放送されるテレビ東京系列放送には、たまにこういう当たりドラマがある。

<文/加賀谷健>

【加賀谷健】
コラムニスト / アジア映画配給・宣伝プロデューサー / クラシック音楽監修「イケメン研究」をテーマにコラムを多数執筆。 CMや映画のクラシック音楽監修、 ドラマ脚本のプロットライター他、2025年からアジア映画配給と宣伝プロデュース。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業 X:@1895cu

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  • 風間俊介くんいい味出てるよ。最初は髪を伸ばしたえなりかずきかと思って間違えたけど、良い役も悪役もしっかりこなす素晴らしい俳優。
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