SNSで強盗などの実行役を集める闇バイト対策として、警察庁は23日、捜査員が架空の身分証を使って闇バイトに応募する「仮装身分捜査」の導入を決め、運用方法などをまとめた実施要領を公表した。実行役らの検挙と犯罪抑止につなげるのが狙い。
捜査には身分証の偽造を伴うが、警察庁は、刑法が定める正当業務行為に当たり、現行法の下で実施できると判断。「都道府県警で計画書を策定し次第、早期に行いたい」としている。
実施要領などによると、仮装身分捜査は都道府県警本部長が承認した計画書に基づいて実施。対象となる犯罪を、闇バイトによる強盗、特殊詐欺、SNS型投資詐欺・ロマンス詐欺などとする。犯罪グループから身分証の送信を求められた場合に限り、応募する捜査員とは異なる名前や顔写真が載った身分証の画像などを送る。架空の身分証は、運転免許証やマイナンバーカード、住民票などを想定している。
悪用を防ぐため、作成した偽の身分証の原本は施錠された設備での保管を徹底する。犯罪グループに原本を渡したり、グループ以外の第三者に提示したりすることを禁ずる。
捜査では、指示役から聞き出した集合場所で、強盗などの犯罪を起こす前に実行役らの検挙や職務質問を行う。警察庁の露木康浩長官は同日の定例記者会見で「被害の未然防止を図るとともに、指示役や首謀者の特定、実行役の募集そのものの抑止につながると期待する」と述べた。
国内では、薬物捜査などで、売人らへ売買を働き掛けて検挙する「おとり捜査」が行われている。警察庁によると、仮装身分捜査はこれとは異なり、捜査員は犯罪の働き掛けはしない。グループ内に入り込んで活動する「潜入捜査」も行わない。
仮装身分捜査は、政府が昨年12月にまとめた闇バイト問題の緊急対策で、ガイドライン作りと早期実施が盛り込まれていた。