山下葉留花、渡辺莉奈、正源司陽子、日向坂46四期生3人の物語【日向坂になる前に〜新世代のプロローグ〜】

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2025年01月24日 12:10  週プレNEWS

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(左から)日向坂46の山下葉留花、渡辺莉奈、正源司陽子


宮崎県での主催フェス開催に、グループ史上2度目の東京ドーム公演の成功......。大きな達成感とともに、次のフェーズへと向かう日向坂46。その未来を担う四期生3人の知られざるエピソード。彼女たちの未来とは。

【写真】学生風の渡辺莉奈

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「このメンバーでもう一度、東京ドームを目指します!」

グループ始動からキャプテンを務める一期生・佐々木久美が2023年に宣言したとおり、日向坂46は昨年12月末に東京ドーム公演2Daysを成功させた。

宣言からドームまでの約1年間、テレビやラジオなどのメディア出演や、宮崎・ひなたサンマリンスタジアム宮崎で開催した「ひなたフェス2024」、全国ツアーと、全力で駆け抜けてきた。

その間、彼女たちが日向坂46となる前からグループを守ってきた「けやき坂46」経験者のメンバー6名が卒業を決め、そして今月6日。佐々木久美、佐々木美玲、高瀬愛奈(まな)といった残りの一期生たちの卒業も発表された。

「グループも後輩たちも頼もしいほど成長し、もう大丈夫だなって」

佐々木久美は、ブログで次の世代への期待を綴(つづ)った。日向坂46は今、大きな世代交代の時期を迎えている。

その次世代を担うのが、2022年に応募総数5万1038人の中から選ばれた、日向坂46四期生。今回は彼女たちがここにたどり着くまでの道程から、日向坂46の未来を覗(のぞ)いてみる。

■山下葉留花の一度は諦めた夢


『日向坂で会いましょう』(テレビ東京)や『日向坂ミュージックパレード』(日本テレビ)などのバラエティ番組や、約1年間メインパーソナリティを務めたラジオ番組『日向坂46の余計な事までやりましょう』(TOKYO FM)など、どのメディアでも快活で天然なキャラクターでファンを楽しませる、山下葉留花(はるか)。

放課後は毎日、友達を大勢集めては公園で遊ぶ。そんな幼少期の彼女には、あるモットーがあった。

「基本的に私がみんなを誘うんですけど、逆に誰かに誘われたときは『絶対に断らない』って決めていました。とにかく常に誰かと一緒にいたかったんですけど、今振り返ればすごく寂しがり屋だったんだなと思います」

そんな孤独を怖がる山下だが、中学校に上がって人間関係に頭を抱えることがあった。「学校に行きたくない」。そう悩んでいる最中、欅(けやき)坂46の『不協和音』『月曜日の朝、スカートを切られた』に出会った。

「その頃の私に共感してくれたような気がしたんです。どんなに嫌でも学校に行こうって、なんだか救われる思いでした。それが、坂道シリーズを好きになったきっかけです」

当時、地元の愛知県で唯一放送されていた坂道シリーズの冠番組『乃木坂工事中』(テレビ東京系)は毎週兄と見ていた。けやき坂46の楽曲も調べていき、「はかなくてたまらなかった」と、『イマニミテイロ』が好きになった。

そうして3グループ全体のファンとなった山下は、中学3年の夏、「坂道合同オーディション」を受けることになる。

「結果は最終審査で落選でした。落選してしばらくはそこまで何も思わなかったんですけど、合格したメンバーをテレビで見たときは、悔しくてたまらなかったです(苦笑)。

最終審査までは行けたけど、逆に言えば最終から先には行けなかった。私はアイドルになる人じゃないんだなって思い知りました」

彼女は一度、アイドルになることはきっぱりと諦めた。普通の女子高生として高校生活を過ごし、地元の企業に内定をもらった。

そのまま普通の社会人になる直前の、高校3年生の3月。日向坂46の四期生オーディション実施が発表された。

「もう進路は決まっていたけど、最後のチャンスとしか思えないタイミングで発表があって。会社の研修期間が始まった頃だったんですけど、『これを受けないとずっと後悔する』と思って、迷わずオーディションに応募しました」

研修の勉強と、オーディションを勝ち抜くための準備で慌ただしい日々。もちろん合格を目指しているものの、いざとなったら研修中に退職することになる申し訳なさに、複雑な気持ちにもなった。

結果として、彼女は日向坂46の一員になることが決まり、数ヵ月で退職することになる。

「合格したその日に、上司や研修担当の先輩に連絡しました。謝罪しなきゃと思っていたのに、電話越しで泣きながら『おめでとう。うれしいね』って、送り出してくださって。今も温かく見守ってくださっています。

今振り返ると、こうしてたくさんの方に支えられながら合格して、活動させていただいているので、私は皆さんに恩返しできるように過ごさないといけないなと思います」

欅坂46の楽曲に助けられ、一度は諦めながらもアイドル活動をスタートさせた山下。今の彼女に、「今、大切にしたい日向坂46の楽曲」を尋ねてみた。

「ずっと『日向坂』です。日向坂46の歴史を歌うような歌詞で、自分が外から見ていた加入前は歴史を想像して聴いていたものが、メンバーになってリアルに感じられるようになって。私はこの曲で、日向坂46をずっと歌い継いでいきたいなと思ってます」

〈いつか歩きたかったんだ/どこまでも太陽に続く道〉
〈ちょっと遠回りをして/どうにかここまでやって来た〉

自分自身と重ね合わせるように、彼女はこれからも『日向坂』を歌っていく。

「今の夢は、地元のバンテリンドーム ナゴヤでライブをすることです。東京ドームに立たせていただいて、やっぱりより多くのおひさま(日向坂46ファン)と最高の時間を過ごすには大きなドーム会場なんだって。

グループ全員で『全国のおひさまに会いに行きたい』って話は常にしていて、私は地元のおひさまや、自分を応援してくださっている会社の先輩や、家族にも恩返しがしたいです。いつかかなえるまで、口にし続けます」

■渡辺莉奈が見つけた日向坂という場所


10歳離れた兄と姉、3人きょうだいの末っ子として育った渡辺莉奈。今でこそ、最年少ながら大人びた印象を持つメンバーだが、彼女に幼少期について聞いてみると、意外な言葉が返ってきた。

「やりたいことができないと大暴れする、頑固な子だったらしいです。ボールプールのボールが気に入らなければ部屋中にボールを全部散らかしたり、七五三の着物やランドセルも、自分が最初に『これがいい!』と決めたもの以外は絶対に嫌がったり......。

あとはとにかく負けず嫌いでした。兄と姉は陸上部で足が速くて、年も離れているので絶対にかなうわけがないのに、自分が勝つまでかけっこに付き合わせていました。『もしかしたら、小さい頃の私のほうが強い意志を持ってたんじゃないか』と思うくらいです」

そんな渡辺は、3歳から小学校高学年までキッズスクールでダンスに打ち込んだ。発表会や地域の小さなイベントに向けて、立ち位置を争うためにレッスンに励む毎日。負けず嫌いな性格はずっと変わらず、「誰が一番長くY字バランスを続けられるか」といった小さな遊びの勝負ですら、意地でも勝とうとしていた。

「『中学生からは別のことをしたい』と思ってダンスはやめちゃったんですけど、私は自分がやりたいことを見つけるのが苦手で。部活に入るわけでもなく、帰宅部でふらふらしていました」

そんな時期に、兄や姉の影響で応援していた乃木坂46に五期生が加入したことを知る。

「毎日お昼にひとりずつ、五期生のメンバーさんの動画が公開されていくのを、ファンとして楽しんでました。でもどこかで、『こんなにキラキラしたアイドルの世界に、なんで挑戦しないんだろう』って、何かもやもやした自分がいたんです」

その1ヵ月後、渡辺はSNSで日向坂46四期生オーディションのニュースを見つける。

「日向坂46も、デビュー曲の『キュン』を歌う小坂菜緒さん(二期生)の笑顔に心を撃ち抜かれてからずっと好きでした。

募集要項を見て、小坂さんのようなアイドルに憧れたことや、乃木坂46の五期生さんの発表を見て『受けなきゃ何も始まらない』と思ったことを思い出したんです。合格するとはまったく思っていなかったけど、まずは挑戦しようって、すぐに応募しました」

こうして、日向坂46に加入した渡辺莉奈。合格後の研修期間、ほかの四期生がすぐに仲良くなっていく姿に驚いたという。

「常に競い合うダンススクールの環境しか知らない私はすごく新鮮に感じました。最初の頃は自分がなじめるか不安にもなりました(笑)。でも、加入した今、先輩後輩関係なく明るい雰囲気をつくって、みんなでひとつの目標に向かう日向坂46は、やっぱりすごくいい場所だなと思います。ネガティブな私も、メンバーに引っ張られて徐々に明るくなってるかなって」

彼女は「自分とリンクする楽曲」として、『ときめき草』を選んだ。小さな恋心を草花にたとえ、その芽吹きをささやかに喜ぶ、『キュン』のカップリング曲だ。

「日向坂46はとにかく『明るくてハッピー』というイメージが強いと思うんですけど、そんな中にもはかなくて柔らかい曲があって、こういう曲だからこそ輝く瞬間もあるんじゃないかなって。『ときめき草』には、いつもそんな勇気をもらってます」

彼女の夢は、日向坂46が再び『NHK紅白歌合戦』に出場すること。

「最後に出場したのが2022年で、四期生は紅白のステージに立ったことがないんです。私も昔から家族で見ていましたし、1年通して活躍して、あの舞台に呼んでいただけるアイドルになって、その成果を家族にも見せたいです」

■正源司陽子を救った中学時代の優しさ


加入当初、「家族でピアノやチェロ、バイオリン、フルートなどの楽器を合奏するのが好き」というエピソードを話し、お嬢さまのイメージが先行していた正源司(しょうげんじ)陽子。

「3歳からピアノを習っていたり、中学の吹奏楽部でフルートをやっていたりしたのでいろんな楽器が弾けるんですけど、私はそれよりも、外で泥まみれになりながら木の棒を振り回すほうが好きでした。よく転んではケガをして、それでも走り回る。そんな、ただのやんちゃな小学生です」

彼女は加えて、当時の自分についてこう語る。

「今思い返すと、当時は性格や好みがコロコロ変わる人でした。小学校ですごく女の子らしい友達と仲良くなったときは、私も彼女に合わせて、三つ編みしたり、持ち物にピンクを増やしたり、『もっと女の子らしくなろう』って。より仲良くなるための方法だと思うんですけど、逆に言えば主体性がない子だったなと思います」

中学受験によってその友達とは別れ、再び「活発な女の子」に戻った。しかし、そんな他者優先の性格も影響したのか、中学生活ではストレスを感じることが多くなった。

「中1の終わり頃にコロナ禍に入って、休校が続いて、たまに友達に会えても、あまりしゃべれなくて。だんだん、友達が何を考えているか、どう接したらいいのかがわからなくなっていきました」

吹奏楽部の活動でも合奏ができる情勢ではなく、気持ちは満たされなかった。さらに思春期の女子特有のいざこざもあった。

「おうちからけっこう距離もあって、テストも毎日ある学校だったんです。なので毎朝、通勤ラッシュの満員電車に揺られながら勉強していました。

そういう、ひとつひとつのストレスが重なって、毎日ずっとつまずいている感覚でした」

その頃、頼れるものといえば音楽しかなかった。

自分の殻に閉じこもりたくて、イヤホンをし続けるために、髪型を耳が隠れるショートボブに変えた。休み時間を迎えるたびに、YouTubeで音楽や川のせせらぎなどの環境音を聴き続けた。

そんな逃げ場のない彼女を救ってくれたのは、中学3年時の数学の先生だった。

「なかなか勉強にも身が入らなくなって、成績もどんどん落ちていく中で、ノートの端っこに、気づくかどうかわからないくらいの大きさで『点数が取れません』と書いて提出しました。それに気づいた先生は、私を職員室に呼んで、『最近、何かあったんじゃないか?』と気にかけてくださったんです。

そこで3時間くらい、勉強以外の悩みも全部聞いてもらったら、すごくスッキリできて。あと、先生は担任ではないのに、私の親と三者面談のような場を設けてくださったんです。やっと両親にも悩みを言えて、ようやく時間が動き出したような感覚でした。先生が気にかけてくださらなかったら、私は今もふさぎ込んでいたかもしれないです」

同時期に、いとこの五百城茉央(いおき・まお)が乃木坂46に五期生として加入することを知った。三者面談がきっかけとなり、両親にも素直な気持ちを打ち明けられるようになった彼女は、直後に発表された日向坂46のオーディションを受けることを両親に伝えた。

「どんなことでも挑戦はいいこと。本気でやりなさいね」と、背中を押してくれた。

「茉央ちゃんが乃木坂46に入ることを知ってすぐ、坂道シリーズのことを調べながら、それぞれのグループに入った自分を妄想したんです。

後づけのように聞こえちゃうと思うんですけど、当時から、『明るくてがむしゃらな日向坂46に入った自分』が一番楽しそうに感じていました。合格したときは、『妄想って現実になるんだ』って、すごくうれしかったです」

こうして、日向坂46にたどり着いた正源司陽子。グループの中心で活躍し始めている彼女は、「日向坂46の将来」についてこう語る。

「私のこれまでの短い人生だけ見ても、人生は変化ばかりで。未来といっても、どんなささいなきっかけでどうなっていくか、まったく想像できないです。

でも、ライブ中、『JOYFUL LOVE』でおひさまが作ってくださるペンライトの虹色はずっと見ていたいです。あの光景を見ているときが一番、メンバーの頼もしさと、おひさまの温かさ、毎日の楽しさを実感できるので」

日々、満員電車でグレーの背広に囲まれていた苦しみはもう、どこにもない。彼女は、ファンが作る虹色だけを見つめている。

山下葉留花、渡辺莉奈、正源司陽子。3人が望む未来のために、新しい日向坂46は再び奮い立っていく。

また、新しい物語が始まる。

●山下葉留花 Haruka YAMASHITA 
2003年5月20日生まれ 
愛知県出身

●渡辺莉奈 Rina WATANABE 
2009年2月7日生まれ 
福岡県出身

●正源司陽子 Yoko SHOGENJI 
2007年2月14日生まれ 
兵庫県出身

*JASRAC許諾

取材・文/アオキユウ(short cut) 撮影/熊谷 貫(正源司陽子)、酒井貴弘(渡辺莉奈)、持田 薫(山下葉留花)

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