アルゼンチン最高峰のFFツーリングカー選手権として、同国のみならず南米大陸のモータースポーツ・シーンを牽引するTC2000が、この2025年よりSUVセグメントによる新時代の幕開けを迎える アルゼンチン最高峰のFFツーリングカー選手権として、同国のみならず南米大陸のモータースポーツ・シーンを牽引するTC2000が、隣国ブラジルのSCBストックカー・ブラジル“プロシリーズ”と刻を同じくして、この2025年よりSUVセグメントによる新時代の幕開けを迎える。
そんな創設46年目の新シーズンに向け、現地法人ホンダ・モーター・アルゼンティーナからファクトリー指定チームを拝命した強豪のプロ・レーシングは、このオフ期間に急ピッチで『ホンダZR-V』の製造を進行中。日本でもドライバーとして活動した経歴を持つチーム代表セバスチャン・マルティノも「ホンダの公式チームとしてTC2000に復帰することは極めて重要だ」と意気込みを語った。
従来より段階的な次世代モデルへの移行を表明し、すでに新型SUVモデルの開発テストを重ねているTC2000シリーズは、小型クーペSUV『VW Nivus SUV(フォルクスワーゲン・ニーヴァス)』をベースとした先行開発車両“プロトタイプ001”に続き、シボレー陣営のYPFエライオン・オーロ・プロ・レーシングが走らせる『シボレー・トラッカー』や、昨年末のテストに姿を現した『トヨタ・カローラクロス』の投入が予定されており、ともに500PS級の“直列5気筒”直噴ターボエンジンを搭載したSUVツーリングカーが導入される。
そんななか、コルドバ州カルロス・パスを拠点とする強豪チームを率いてきたマルティノは、新年度に向け2台の『ホンダZR-V』製造を進めるとともに、ディフェンディングチャンピオンとしてシリーズ連覇を決め、ルノー陣営で自身4度目のタイトルを獲得したリオネル・ペーニャと、2024年創設の中南米ルーキーカップ登録でタイトルを獲得した息子ティアゴ・ペーニャを獲得するなど、着々と準備を進めている。
「我々には大きな挑戦が待ち受けている。この段階での状況は異なるが、どのチームも、どのマニュファクチャラーも目的は同じだ。我々としても、つねにトップに立ち、ブランドを率いてチャンピオンシップを勝ち獲るよう努める」と続けたマルティノ代表。
現在のシリーズで最強の親子ドライバーを揃えたことに関しても「両者は理想的なチームを作るためのパズルに欠けていた理想的なピース」だと表現する。
「彼(リオネル)が勝つことは分かっている。私は2009年から彼を知っているが、彼はいつも約束を守ってくれた。彼は自分のしていることに対して強い忍耐力と信念を持っている。そして息子のティアゴに関しては、このカテゴリーでの最初の年に、彼も同じ道を歩んでいることを示したんだ」
ホンダ陣営にて、かつて6年間に渡って活躍した経歴を持ち、ブランドへの“カムバック”を果たす父リオネルと、昨季はフルシーズン初年度ながらタイトル争いにおける父親のライバルとして、目覚ましい活躍を演じた息子のティアゴだが、そのふたりがドライブする『ホンダZR-V』の製造はこの後も続き、開幕までに4台の車両を揃える計画だという。
「我々はすでに2台のホンダZR-Vで製作の作業を行っており、続く車体の受け取りを待っている。この夏(南半球のため)のオフ期間も仕事は止まらない。チームはふたつのグループに分かれて仕事を進めているよ」とマルティノ代表。
ライバル陣営のテストを見守ったホンダ・モーター・アルゼンティーナのコマーシャルマネージャー兼公式競技チームマネージャーを務めるビクトル・プルヴォストと同じく、新開発の強力な直列5気筒直噴ターボユニットを積んだ新規定SUV車両に関しては「サーキットでSUVが走るのを見るのは、人々にとって非常に素晴らしい光景となるだろう」と、シリーズの方向性にも歓迎の意を示す。
「世界でもっともパワフルな前輪駆動車のひとつを目にすることができるだろう。世界中のすべての自動車メーカーがこの分野(SUVのジャンル)に賭けており、それがTC2000の本質、つまり永続的なイノベーションなんだ」
その対抗馬として注目のトヨタ・カローラクロスに関しては、初号機製造を陣営内サテライトのコルシ・スポーツが担当し、さらに先週には塗装ブースから出てきた新世代モデルのホワイトシャシーを公開。
今後はこの2台目の製造と準備、シェイクダウンに重点が置かれ、この車体を2月上旬には完成させる予定だとし、その後もワークショップでの作業を続け、開幕までに3台のトヨタ・カローラクロスを用意する。
そしてブエノスアイレス州リンカーン市に拠点を置くシボレー陣営も、この年明けから2台目のシボレー・トラッカー製造に着手。1月上旬の作業では電気部品ユニットの組み立てや、シートやペダルなどレーシングアイテムの取り付けに重点が置かれ、その後、新開発エンジンとギヤボックスなどパワートレーン取り付けが続行されている。
すでに年間全12戦の“日程”を公開している新生TC2000だが、その歴史的開幕戦は同国コルドバに位置する代表的トラック、アウトドローモ・オスカー・ファン・カバレンにて4月13日にSUV時代の幕が上がる。