『エクストリームE』は、すべてのチームに男性ドライバーと女性ドライバーの起用を義務付ける"ジェンダーフリー(男女平等)"の精神を掲げてきた 昨季限りでその役目を終えたワンメイク電動オフロード選手権『エクストリームE』は、すべてのチームに男性ドライバーと女性ドライバーの起用を義務付ける“ジェンダーフリー(男女平等)”の精神を掲げてきたが、昨季も引き続き男女のパフォーマンス格差は36.5%縮まり、過去4年間でラップタイム平均の差はほぼ70%も短縮されたとのデータを公開した。
レース中のドライバー交代により両者が平等にシートタイムを共有し、世界選手権レベルでは男女に平等な機会を提供する唯一のシリーズとなっていたエクストリームEだが、2025年より開始される世界初の水素燃料モータースポーツ競技『FIAエクストリームHワールドカップ』でもその精神は引き継がれることから、昨季は予定の全10戦からわずか4戦へ短縮された事実も踏まえると、これは「印象的な数字だと言わざるをえない」と、創設者兼CEOであるアレハンドロ・アガグも自信を見せる。
「我々のスポーツフォーマットは単なる競技規則ではなく、意思表明でもあるんだ」と続けたアガグ。「エクストリームEはコースやトラックを平等にすることで、パフォーマンスにおける男女格差は『能力の問題』ではなく、機会と投資の問題であることを実証してきたのだ」
女性ドライバーの歴代最多勝記録を保持し、ニコ・ロズベルグが率いた強豪ロズベルグXレーシング(RXR)で開幕“シーズン1”を制覇したモリー・テイラーも、シリーズとその最新の成果を称賛し「エクストリームEは間違いなく私のキャリアの方向性を変えた。シリーズの女性ドライバー全員が同じことを言うと確信している」と同調した。
「モータースポーツがいかに難しいかは誰もが知っているけれど、このエクストリームEが証明したのは適切な機会、露出、開発、投資があれば女性がトップに立つことができるということね」と語ったオーストラリアの国内ラリー選手権で初の女性総合王者にも輝くテイラー。
「このサイクルを打破するのは難しい場合がある。自分の可能性を証明するにはシートタイムが必要だけど、そのシートにアクセスするために必要なサポートを引き寄せるには結果が必要。エクストリームEは自ら進んで変化を起こそうと、新しいことを試みた。このコンセプトの成功を証明するドライバーのひとりであることをとても誇りに思っている」
「私たちは強力な勢いを築き上げたし、モータースポーツの継続的な課題を軽減することはできないかもしれないけれど、変化を起こしている。これはかなり特別なことであり、モータースポーツがもっと広くそこから学べることを願っている」
■初年度からの男女タイム差は3秒以上縮まる
創設初年度である2021年は、男女の平均タイム差は4.5秒となっていたが、昨季の中断時(サルディニア後)には、その差はわずか1.1秒で、実に68.64%の減少を示していた。これはシーズン2で29.76%、同シーズン3で29.67%の改善があった事実を経ての達成となる。
その一例として、2024年サウジアラビアでの開幕戦Desert X-Prixでは、強豪アンドレッティ・アルタウィキラットに所属するケイティ・マニングスが全体で3番目に速いドライバーであり、中断直前のイタリア戦では男女の平均タイム差はわずか0.61秒となっていた。
「エクストリームEはドライバーに機会を与えることで何ができるかを、ストップウォッチを相手に証明してきたチャンピオンシップね」と語ったERCヨーロッパ・ラリー選手権出身のマニングス。
「シリーズが始まったとき、多くの女性はチーム内の男性よりも経験が浅かった。このデータはトップチーム内の最高のエンジニアやパフォーマンス・リソースへのアクセスと機会が、若いドライバーにとって実際に何をもたらすかを証明していると思うわ」
そのマニングスとはERC時代から好敵手だったイタリア出身タマラ・モリナーロをはじめ、テイラーや現女王のミカエラ・アーリン-コチュリンスキー、さらにはヘッダ・ホサスやアマンダ・ソーレンセン、ダニア・アキールなど数々の女性ドライバーにチャンスを提供してきたJBXE代表のジェンソン・バトンも、この「男女混合形式はゲームチェンジャーであり、データは平等な機会がいかに強力であるかを証明している」と応じた。
「過去4シーズンにわたって、女性ドライバーが格差を縮め、世界最高のドライバーと同等のパフォーマンスを発揮するのを見てきた。これは素晴らしい成果で、このフォーマットのもとで男女両方のドライバーが活躍するのを見るのは刺激的だよ。才能に性別は関係なく、輝くには適切なプラットフォームが必要なだけだということを思い出させてくれるよね」
前述のとおり、後継シリーズたる『FIAエクストリームHワールドカップ』でも、チーム内のドライバーの男女比を平等にし、格差をさらに縮める機会が提供される。
「Females in Motorsportは創設以来、エクストリームEをチャンピオンシップとして密接に追跡しており、主に機会均等の促進を通じて女性競技者をサポートしていることを誇りに思っている」と語るのは、同組織の創設者であるヘレナ・ヒックス。
「組織として、今回のデータに満足している。ジェンダーギャップレポートの透明性は大きな動きであり、女性の才能を向上させるための前向きな一歩として歓迎しています。今後数年間エクストリームHを追跡し、シリーズが何を達成できるかを見るのを楽しみにしています」