フランス最大の水素展示会『ハイボリューション・パリ』に展示されたH24EVO ACOフランス西部自動車クラブは、水素を燃料として利用するレーシングカーの研究を行う“ミッションH24”イニシアチブの『H24EVO』プロトタイプが、使用する水素を気体状態のものから液体水素へと切り替えると発表した。
『H24EVO』は2023年10月にまずレンダリングが公開され、その後2024年6月にル・マン24時間レースの現場で実物大のモックアップがお披露目された、ミッションH24プロジェクトの試験車両。ちなみに同プロジェクトのテストカーはこれが3代目となり、初代の『LMPH2G』と2代目の『H24』そして最新型の『H24EVO』を含め、いずれも水素と酸素の化学反応で発電し、モーターを駆動する燃料電池車(FCV)だ。
以前の発表では、H24EVOは300kWを発生するフューエル・セル(FC=燃料電池)で電気を生み出すため、700気圧で7.8kgの水素を貯蔵するタンクをふたつ組み込む予定だった。
しかし、今週28日に開幕したフランス最大の水素展示会『ハイボリューション・パリ』でふたたびクルマが展示された後、WEC世界耐久選手権の共同プロモーターは、このプロトタイプが液体水素を使用するようになると明らかにした。
ACOによると、この変更により11〜14kgの水素を貯蔵できることが可能となり、航続距離は推定25〜30分から「少なくとも」40分に延びるという。
水素を液体で貯蔵するには−253℃まで冷却する必要があり、同時にシンビオが供給する燃料電池と互換性を持たせるためには蒸発システムと熱交換も必要となる。
■当初は2025年第1四半期にシェイクダウンを予定
このクルマの目標重量は1300kgで以前の発表時から変わっていない。現在計画されている最高速度は時速340キロ。レースペースとしては「最高のGT3マシンと同等のレベル」がターゲットとなっている。
「レーストラックに(燃料として)水素ガスを導入した後、ミッションH24はコンペティションに液体水素を投入し、従来の(ガソリン)エンジンとの競争に対抗するという二重の課題を抱えた、重要な新たな段階に突入している」と語るのは、ACOのピエール·フィヨン会長。
「このミッションは、モーターレーシングでCO2排出量ゼロを達成するために不可欠だ」
水素展示会ではH24EVOの開発スケジュールの改訂も発表され、2026年2月に最初の実車が組み立てられる前に、今年10月から最高出力650kW(約883PS)を発生する電気モーターのベンチテストが開始されるという。
このマイルストーンの後には2026年4月に最初のトラックテストが行われる予定だ。
方針転換によりH24EVOで使用されることとなった液体水素。トヨタは日本のスーパー耐久シリーズでこの技術をすでにテストしているが、水素の利用方法はミッションH24のプロトタイプカーとは異なり、電気を作り出すのではなくエンジンで燃焼させている。なお、燃料電池と水素エンジンは、いずれも2028年の導入が予定されているWECの新しいルールの一部として認められている。