女性アイドルグループ・HKT48の元メンバーで、NMB48の兼任メンバーとしても活動した経歴を持つ村重杏奈さん(26歳)。2021年12月にHKT48を卒業してからは、持ち前の明るい性格を生かし、数多くのバラエティ番組や自身のYouTubeチャンネル、SNSなどで活躍中だ。
そんな村重さんが、ホラーサスペンス小説の映画化『悪鬼のウイルス』で映画初出演にして初主演。都市伝説を調査するため、神隠しのうわさがある人里離れた村を訪れ、悲劇に見舞われるYouTuber一行のひとりを演じている。
「最初、台本の読み方も分からなかった」と明かす村重さんに、現場の感想を聞いた。また最近の自身の話題から「実は料理がうまい」という村重さんに、よく作る料理を教えてもらった。
◆オファーに、初めて「大丈夫かな」とひよった
――主人公の日名子を演じました。オファーがあったときは?
村重杏奈(以下、村重):信じられなかったです。村重としてはバラエティ一本、たまにモデル業みたいな感じでやらせてもらってきて、演技とは無縁な人生だったので、「本当に村重でいいんですか?」と。
今までは「村重です。私が一番売れてます!」みたいにやってきたんですけど、初めて「大丈夫かな」とひよりました。
――お芝居をやってみたいとは。
村重:全く。誰かになりきるなんてしたことがなかったので。アイドル時代もキャラを作ることもなく、本当に自分自身だったんです。
プライベートでも「テレビのまんまだね」と言われることが多いですし、なんなら「テレビよりうるさいね」と言われます(笑)。だからそもそも演技なんてできないと思ってました。
◆台本を読んで「本当にこれやるんですか?」と
――しかし過去にドラマ作品にいくつか出られています。活動初期に出演した『マジすか学園』や、2023年放送の月9ドラマ『ONE DAY〜聖夜のから騒ぎ〜』ですとか。
村重:『ONE DAY』よりこちらの『悪鬼のウイルス』のほうが先に撮影しました。『マジすか学園』のほうは、日本語をほぼ喋ってないですし。ロシア語を話す役で、正解もないなかで「なんでもいいよ」と言われてました。出番も本当に少なくて、正直出たことも忘れていたくらい。
だから今回、最初は台本の読み方も分からなかったんです。なにから始めればいいかもわからない状態で、台本を読んで「本当にこれやるんですか?」と。
――というのは。
村重:ホラー独特の「グキッ」みたいな音も文字として書かれていたりして。「どうやってやるの?」と結構パニックでした。ただ何回か読んでいるうちに、「日名子ってこういう子なのかな」と自分なりに考えていくようになって、ちょっとだけ楽しかったです。
◆幽霊やたたりについては「考えないようにしています」
――日名子はどんな子だと感じました?
村重:ピリついた場所でも恋愛感情を持ってくるような、悪くイメージするところの「ザ・女子大生」というか。
YouTuberの智樹(太田将熙)のことが好きすぎて、周りが見えなくなって悪いことにも足を突っ込んじゃうタイプかなと。悪い純粋さもある子かなという印象でした。
――自分と共通点はありますか?
村重:真逆です。似ている部分がなさ過ぎて、逆に振り切れたところはあったかもしれません。
――いわゆるホラー作品ですけれど、村重さんは、お化けやたたりの存在は信じてます?
村重:信じないようにしてます。心霊ロケとか結構行くので、そういうときに「絶対いるな」と思う瞬間とかもあるんです。
ビビりで怖がりなので、それをプライベートな時間に考えちゃうと、何も手につかなくなるなと。だから考えないようにしています。いると思うんですけど。
◆休憩中にも役名の「日名子」と呼ばれてハテナ
――今回の撮影現場は?
村重:怖かったです。“鬼”が普通にいるので休憩時間も気が抜けないんですよ。
――(笑)。
村重:目も合わせられないですし、なるべく鬼とは離れた場所にいました。
――映画撮影現場を体験して、驚いたことはありましたか?
村重:皆さん現場でも村重のことを「日名子」って呼ぶんですよ。初めての経験で、それが当たり前だと知らなかったので、最初結構こんがらがりました。
撮影中は日名子だけど、休憩時間は村重だと思っていたので「村重は」とか言ってたんですけど、「日名子ね」と言われたりして。休憩時間からみんなスイッチを入れてるんだと。最初はずっと日名子のままでいるというのが大変でした。
◆いまは幅広い層に知っていただきたい
――詳しくは言えませんが、本作の中で「大人」というキーワードが出てきます。年齢関係なく、村重さん自身が「自分、大人になったな」と感じた瞬間を教えてください。
村重:一昨年くらいにアイドルを全消ししたことですかね。
――というと?
村重:10年くらいアイドル活動をしてたんですけど、分かりやすく言うと、メイクとかがどうしても可愛い方にいっちゃったり、アイドルのクセみたいなものがあったんです。そういうのをやめました。
SNSなどでも、昔からのファンの方が喜んでくれるのは、アップとか上目遣いの写真だったりすると思うんですけど、一気にガラッと変えました。
◆外見から入ることも内面が変化していく一歩
――それが大人になった瞬間。
村重:はい。たとえば加工アプリをやめるとか。些細な事ではあるんですけど、それでガラリと雰囲気が変わりました。考え方も、アイドル時代はいかにコアなファンに支持してもらえるかを大事にしていましたが、いまは幅広い層に知っていただきたい思いがあります。
そのための転換は結構勇気がいることで、時間もかかったんですけど、一昨年くらいに髪を切ったタイミングで、趣味とか服のセンスなども変わって、大人になったなと感じました。
――周りからの反応は?
村重:「大人になったね」と言われます。内面を変えるのって本当に難しいことですが、村重は外見から入ろうと思うタイプなんです。そうすればだんだん変わっていくだろうと。
浅はかな考えかもしれないけど、でも外見をちょっと大人の雰囲気にすることで、今まではため口しか使えなかったのが、ちょっと敬語を使えるようになったりとか、ちょっとした変化が自分を大人にさせていっているのを感じます。
だから外見をガラリと変えたのは、大人になる一歩だったと思います。
◆意外と料理がうまいことに、自分で驚いた
――『悪鬼のウイルス』での、日名子が大胆な行動をしようとする場面に驚きました。村重さん自身が、自分自身に驚いたり、驚かれたりした最近の出来事があれば教えてください。
村重:意外と料理がうまいことに、自分で驚きました。
――自分で驚いた?
村重:今まで、料理のセンスとかないと思っていました。アイドル時代も、これってアイドルバラエティ“あるある”だと思うんですけど、「料理してください」と言われたときに変なものを入れて、変なものを作っちゃうみたいなキャラだったんです。
自分でも料理はできないと思ってましたし、そう思われていたとも思います。でも最近は、意外とちゃんとやるんだなと思ってます。
◆大根のそぼろ煮や野菜たっぷりカレーが得意
――どこから発覚を?
村重:忙しい中で外食とかロケ弁が続いたときに、「自分のご飯を食べたいな」と思う瞬間があって、そのとき「あれ、そういえば、このところの村重って、時間あるときちゃんと自炊してるな」と。
――ふと気づいたと。
村重:はい、ふと気づきました。割としっかり栄養面も気にしてたり、こだわって材料や調味料とか、無添加のものを選んだりしているので、振り返ってみると、ちゃんと自分の体を考えて作ってるなと。
――どんな料理を作るのですか?
村重:大根のそぼろ煮とか。体に優しいものが多いです。手羽先煮とか、あと定番でよく作るのは野菜たっぷりカレーですね。日常で野菜を採るのが苦手なほうなんです。
食べなきゃと思うと食べられなくなっちゃうタイプなので、カレーに野菜をめちゃくちゃ入れて、ドライカレー風になるんですけど、すごい野菜を採れるのでお気に入りです。よく作り置きして冷凍してます。
◆きっかけは「イイ女になりたい」だった
――そうなんですね。村重さんはいつもご家族と仲良しですけど、そのカレーをご家族は。
村重:食べてますよ。前にもパパとママが東京に来たタイミングに、ちょうどカレーが作ってあって。次の日に自分が食べる分も取っておいたんですけど、パパに全部食べられちゃいました。
パパも「杏奈ってこんなに料理できるの?ビックリするくらい美味しい」と言ってくれてたので、そのときにも「自分、意外と料理できるんだな」と思いました。
――ちゃんと日常の料理なんですね。
村重:「料理しよう!」とかじゃないですね。でもきっかけは「イイ女になりたい」だったんです。料理できるイコール、イイ女みたいな浅はかなイメージから始まってるんですけど、でも結果的に自分の生活に必要なものになっていて、こういう始まり方もあるんだという驚きもあります。
――とっかかりはなんでもいいですよね。
村重:ミーハー心で始めたことが意外とちゃんと趣味になったり、仕事につながったりもするので、始まりってあまり関係ないんだなと思います。
◆スクリーンに自分が映った感動は忘れられない
――ありがとうございます。最後に、無事に映画初主演作が公開されました。改めてひと言お願いします。
村重:テレビを見ていて自分がそこに映っているというのは、ちょっとずつ慣れてきましたけど、スクリーンはまだ経験がなかったので、スクリーンに自分が映っているのを観た感動は、やっぱり忘れられないです。
大変ではありましたが、できると思わなかったからなんとも考えていなかっただけで、『悪鬼のウイルス』は自分の人生のすごいひと作品になりました。ステキな経験でした。
――では今後もお芝居は。
村重:『ONE DAY』と『悪鬼のウイルス』でお嬢様っぽい役を2回いただいたので、今度はそれこそ村重っぽいコメディメインとか笑いありの役をできたら嬉しいですね。
あとはヒロインのうるさい親友役とか。今回、まだ経験が必要だなと感じましたが、またやれたらとは思います。
<取材・文・撮影/望月ふみ>
【望月ふみ】
ケーブルテレビガイド誌の編集を経てフリーランスに。映画周辺のインタビュー取材を軸に、テレビドラマや芝居など、エンタメ系の記事を雑誌やWEBに執筆している。親類縁者で唯一の映画好きとして育った突然変異。X(旧Twitter):@mochi_fumi