「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」第四回「『雛(ひな)形若菜』の甘い罠(わな)」蔦重の着実な成長を描く森下脚本【大河ドラマコラム】

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2025年01月31日 11:10  エンタメOVO

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(C)NHK

 NHKで好評放送中の大河ドラマ「べらぼう〜蔦重栄華乃夢噺〜」。1月26日に放送された第四回「『雛(ひな)形若菜』の甘い罠(わな)」では、主人公の“蔦重”こと蔦屋重三郎(横浜流星)が、新たに錦絵『雛(ひな)形若菜』出版に奔走しながらも、思わぬ落とし穴にはまるさまが描かれた。




 前回、『一目千本』の出版で吉原に客を呼び戻した蔦重は、新たな集客のアイデアとして、吉原の親父たちから女郎の錦絵の出版を持ちかけられる。だが、その費用を再び女郎たちからの入銀で賄うわけにはいかず、頭を痛めていたところ、平賀源内(安田顕)との会話から、呉服屋の売り込みたい着物を女郎に着せて錦絵を作ることを思いつく。宣伝を兼ねることで、広告代として呉服屋に費用を出してもらおうというわけだ。

 第二回では既存のガイドブック『吉原細見』の改訂、第三回では完全に新規で『一目千本』を出版と、着実に歩みを進めてきた蔦重は今回、スポンサーを見つけて出版費用を賄うという新たなアイデアにたどり着く。

 このように、一つずつ課題を与え、それを着実にクリアしていくことで主人公の成長を描く展開は、脚本家の森下佳子氏が「おんな城主 直虎」(17)でも用いた手法で、カタルシスがあり、毎回気持ちよく楽しめる。そんなところも、この作品の面白さの秘訣(ひけつ)かもしれない。

 だが今回は、蔦重の思惑通りに事は運ばなかった。絵師に依頼した下絵が、誤って水にぬれてダメになるトラブルはあったものの、蔦重と共に働く少年・唐丸(渡邉斗翔)が寸分違わぬ下絵の模写を描き上げる隠れた才能を発揮して乗り越え、錦絵は無事に完成。ところが、呉服屋や吉原の親父たちにお披露目する場で、蔦重は思わぬ裏切りに遭う。




 蔦重に協力を申し出ていた地本問屋の西村屋与八(西村まさ彦)が、同業の鱗形屋孫兵衛(片岡愛之助)と鶴屋喜右衛門(風間俊介)を連れて現れ、仲間内で認められた者でなければ版元にはなれない、と告げたのだ。そのため、蔦重が版元では市中で錦絵を売ることができないので、自分が版元になるという。すべて自分が作業を進めてきたにもかかわらず、突然、はしごを外された蔦重は激怒するが、「吉原のため」と言われ、涙をのんでそれを受け入れる。

 スポンサーの獲得というアイデアを思いつく一方で、裏切りという苦い経験をした蔦重。この失敗をばねに一歩ずつ成長していくであろう蔦重を、森下脚本はこれからどのように描いていくのだろうか。森下氏は放送開始前の取材時、二度目の大河ドラマに挑む意気込みを次のように語っていた。

 「出版は時代を映していくものだと思うので、『直虎』の時は、その時代の中を生き抜く井伊家の話だったんですけど、今回はそこに“+時代感”。その時代がどういうふうに動いていったのか、というところは、今の私たちが生きる指針にもなると思うので、出せていけたら」

 森下氏の語る“時代の動き”はおそらく、田沼意次(渡辺謙)らを中心に進む幕府内のドラマで描いていくのであろう。その中で、生きがよく、陽気な江戸っ子の蔦重が、着実に成長を重ねながら、これからどんな指針を私たちに示してくれるのか。期待に胸を膨らませつつ、ひとまずは、思わぬ絵の才能を発揮した唐丸がキーになりそうな次回「蔦(つた)に唐丸因果の蔓(つる)」を楽しみに待ちたい。

(井上健一)


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