【栗山求(血統評論家)=コラム『今日から使える簡単血統塾』】
◆知っておきたい! 血統表でよく見る名馬
【デヴィルズバッグ】
1983年夏にデビュー。米G1シャンペンSを6馬身差で圧勝するなど、10月末までに5戦全勝の成績を残し、米最優秀2歳牡馬に選出されました。大きな期待を集めて3歳シーズンを迎えたものの、年明け2戦目のフラミンゴSで断然人気を裏切り4着。その後、弱敵相手に2連勝したものの、クラシックに出走することなく3歳春に引退しました。通算9戦8勝。
3歳時は重賞を勝てず、尻すぼみの競走生活だったとはいえ、カナダ年度代表馬グローリアスソングの全弟にあたる良血。種牡馬としての期待は大きく、巨額の種牡馬シンジケートが組まれました。しかし、大きな成功を収めることはありませんでした。日本で走ったタイキシャトル(ジャックルマロワ賞、マイルCS2回、安田記念、スプリンターズS)、アメリカのダート中距離路線で活躍したデヴィルヒズデュー(米G1を5勝)が目立つ程度です。
タイキシャトルは日本でスピード型の種牡馬として成功。メイショウボーラー、ウインクリューガー、サマーウインド、レッドスパーダなどを出しました。デヴィルヒズデューの息子ロージズインメイはドリームバレンチノやコスモオオゾラ、サミットストーンなどの父です。
基本的にはスピードを伝える血で、ダート向きの力強さもあります。全姉グローリアスソングの仔にラーイ、シングスピール、全弟セイントバラードは米チャンピオンサイアー。近親に多数の活躍馬がひしめいています。
ストレイトガール、ワンアンドオンリー、サトノダイヤモンド、ドゥラエレーデ、レーヌミノル、ユーバーレーベン、サークルオブライフといったGI馬はデヴィルズバッグの血を抱えています。血の影響力は優れています。
◆血統に関する疑問にズバリ回答!
「日本でミスタープロスペクター系が天下を取ることはありえる?」
日曜日に行われた2つの重賞、シルクロードSと根岸Sは、いずれもミスタープロスペクター系が1、2着を占めました。わが国でこの系統が総合リーディングサイアーの座についたのは、2010、11年のキングカメハメハ、2023年のドゥラメンテの計3回です。
サンデーサイレンス系は、1995年以降、上記の3回を除いてすべてリーディングサイアーの座にあります。ただ、昨年の総合種牡馬ランキング上位10頭の顔ぶれを見ると、サンデーサイレンス系3頭、ミスタープロスペクター系3頭、ロベルト系2頭、ノーザンダンサー系2頭と、群雄割拠といった状況です。
2024年は、キングカメハメハだけでなく、パレスマリス(ジャンタルマンタル、ノーブルロジャー)、レモンドロップキッド(レモンポップ、ガビーズシスター)、イルーシヴクオリティ(パンジャタワー)、ドバウィ(ヴァルツァーシャル、エトヴプレ)といったさまざまなラインから活躍馬が誕生しました。レモンポップは今年から種付けを開始し、ジャンタルマンタルもいずれ種牡馬入りするでしょう。
サンデーサイレンス系の牙城を崩すのは容易ではありませんが、長い目でみれば、ミスタープロスペクター系がわが国の主導的なラインとなる可能性は十分考えられます。