自民党の派閥裏金事件に関する参考人招致について、与野党は非公開での実現も含め調整を続ける。招致に反対する自民は、2025年度予算案の今年度内成立に向けた修正協議の機運に水を差すことを懸念し、軟化を余儀なくされた。ただ「新証言」を懸念する声も党内に根強い。予算案修正でも合意の糸口は見えていない。
「どうしたら(招致に)応じてもらえるか、手だてを講じ判断を待ちたい」。4日の衆院予算委員会で、旧安倍派会計責任者(当時)の招致について問われた石破茂首相(自民総裁)は、与野党の調整を見守る考えを示した。
会計責任者が招致に応じない意向を衆院に伝えたことを受け、衆院予算委は4日の理事会で対応を協議。自民がこれを機に「幕引き」に動けば、野党側が証人喚問などを求め審議日程に影響が及ぶ可能性もあった。安住淳委員長(立憲民主党)は7日を回答期限に、再び出席を求める文書を出すことを決定。「決裂」は避けられた。
理事会に先立つ4日朝、公明党との幹部会合に臨んでいた自民の坂本哲志国対委員長に安住氏から電話が入った。安住氏が歩み寄りを促すと、坂本氏は直後の自民、立民の国対委員長会談で「党として責任を持ち、どういうことができるか考えたい」と態度を変化させた。
「予算委員長の電話なら動かざるを得ない」。ある自民幹部はこう話した。この日の自公幹部会合の主要議題は予算案の年度内成立の道筋。参院への送付から30日で自然成立する憲法の規定を念頭に置けば、衆院通過の「最終期限」は3月2日だ。加えて野党の要求を反映した修正は不可避の情勢で、必要な手続きを考慮し「14日には(修正案が)出てこないと厳しい」との認識で自公幹部はおおむね一致。来週以降がヤマ場となる。
参考人招致を巡っては、質疑を公開しない「秘密会」や国会外での聞き取りなども検討されているが、会計責任者が応じるかは不透明。自民内でも旧安倍派議員を中心に「火にまきをくべることになるだけだ。筋が悪い」と抵抗が強い。党側から会計責任者に「出席」を働き掛ける可能性について、自民関係者は「ないだろう」と話した。
野党との政策協議も足踏みが続く。4日、与党は日本維新の会、国民民主党との政調会長会談を相次いで開いた。ただ首相はこの日の予算委で、維新などが求める所得制限を付けない教育無償化を「国民のご理解が得られるだろうか」と指摘。「年収の壁」見直しを巡り中断したままの国民民主との実務者協議の再開日程も決まらなかった。
「ボールは自民にある。こちらは待つだけだ」。維新幹部は自民に一層の譲歩を求めた。