HKT48の元メンバーで、バラエティを中心にモデルとしても活躍中の村重杏奈さん(26歳)が、公開中のホラー映画『悪鬼のウイルス』に出演しました。惨劇に見舞われる主人公・茅野日名子役を、体当たりで演じています。
村重さんにとって本作は、映画初出演、初主演。普段バラエティ番組で見せる元気いっぱいの明るい笑顔を封印して挑み、「今回はいい意味で“村重らしさ”がない作品になりました」と言います。お話を聞きました。
◆いい意味で“村重らしさ”がない作品に
――本作は、映画初出演にして初主演作となりましたが、まずはファンの方にはどのように受け取ってほしいですか?
村重杏奈(以下、村重):今回はいい意味で“村重らしさ”がない作品になったと言いますか、なるべく“村重らしさ”を出さないように頑張った作品でもあるので、バラエティ番組とはまったく違う一面が出ているなと自分で観ていても思いました。なのでその部分を楽しんでほしいですし、作品としてはドロドロした人間関係のドラマ、特に三角関係、四角関係などは若い人は観ていて重なるところもあるのかなと思っています。
――確かに人間関係の描写は、“あるある”みたいな共感を誘うかもしれませんね。
村重:そうですね。年配の方にとっては自分にも似たような若気の至りがあったなど、昔の感情を思い出させるような作品にもなっていると思います。悪ノリで始まって痛い目に遭うくだりは、今の時代に訴えるものがあると思うんです。悪ノリといっても本当にやってはダメなこともあるので、若者の好奇心を抑えるような作品にもなっているのかなと思います。
――日名子というキャラクターについては、どのように解釈して演じられましたか?
村重:日名子は村重とは正反対のキャラクターで、女の子らしいところがあり、ちょっと腹黒いところもあるんです。会ったこともないタイプの人間像だったので、演じる上で想像もつかなかったです。演じていて思ったことは、日名子は恐怖の中にも上品さが必要で、わたしは品があるほうじゃなかったので(笑)、怖い状況下でも品を保つことが大変でした。
◆「演じることを辞めないでほしい」の言葉に
――初めての現場での不安要素は、どのように乗り越えたのですか?
村重:不安なことばかりでしたが、松野友喜人監督が一緒の取材のときに「村重さんは撮影期間中にバラエティ番組も収録しながら、日名子になった瞬間に目つきが変わり、パッと役に変われるポテンシャルが高かったです」と言ってくださって。そんなに不安に思うことはなかったんだなと。お芝居は難しかったけれど、とてもよかったなと思いました。
――別の取材で俳優業よりもバラエティ番組を頑張っていきたいと言われていましたが、さまざまな表情が観られる村重さんの俳優業も楽しみにされているファンの方も多いのではないでしょうか。
村重:機会があればもちろん頑張りたいと思っています。わたしはやってみてダメだなと思うときは退くのですが、何でも一度はやってみるんです。今回俳優のお仕事をしてみてわからないことが多かったのですが、スタッフさんたちが「演じることを辞めないでほしい」と言ってくださって。そんなこと初めて言われたんですよ。もしかしたらポテンシャルがあるのかなと思ったりしたので(笑)、誰かが可能性を感じてくださるのなら、それに応えていきたいと思っています。
◆認知されてきていることを実感した一年
――2024年はテレビで姿を観ない日はないほど大変充実された一年だったと思いますが、この現状をどう受け止めていますか?
村重:さまざまなことに挑戦させていただきました。俳優のお仕事も何回かやらせていただきましたし、プロデュース業なども、分かりやすく村重を覚えていただいていると自分でも実感できた一年でした。それ以前は「村重?」となることがままありましたが、ロケをしていても村重の存在がみなさんに認知されてきていることを強く実感をした一年でした。
――バラエティ番組で村重さんの食レポを観たことがありますが、レポートの基本を抑えつつ、楽しそうにロケしている姿が印象的でした。
村重:それはうれしいです。テレビでのロケで意識していることのひとつに“村重らしさ”を絶対に忘れないようにしているんです。昨年は失った“品”を取り戻した一年でもあったのですが、そうは言っても明るさ、ハイテンションの“村重らしさ”を絶対に忘れたくないので、どのジャンルのお仕事をしていても「村重がいると明るくなるよね」と言われるようにマストで心がけています。なので、年齢的に大人になりつつも、村重独自の大人っぽさで頑張った一年でした。
◆「村重というブランドを確立させたい!」
――プロデュース業では、インナーウェアブランド「TOLEETY」が半年経過されたと思いますが、現状いかがですか?
村重:ブラのプロデュースはそれまでコンプレックスだったものを反対に長所に変え、それを掲げたブランドだったんです。プロデューサーという立場で考えるとお笑いの要素がゼロなので、わたしみたいにコンプレックスを持っている方がどれだけ前向きになれるか、どれだけ背中を押せるかを考えながら仕事をしていかないといけない。
わたしはまだ26歳ですが、わたしよりも若い方たち、反対にわたしよりももっと年上の方たちと意見をすり合わせながらひとつのモノを作ることって難しいんだなと思いました。人それぞれ意見がありますし、でもその中でブランドを作っていくことで、またひとつ大人になれた気がしています。
――ご自身の成長にもつながったという。
村重:今までは自分の意見が、という感じでしたが、「そういう考え方もあるのか」と思うようになりました。いろいろな人の意見をとり入れながらものを作り、それが終わったあと、今までは世間の声をとても気になっていたのに「そういう意見もあるよね」と思えるようになったんです。
――今年はどんな一年にしたいですか?
村重:この3年はみんなもびっくりするくらいの快進撃の一年だったと思います。48側も「村重が? あいつが?」と驚かせるくらいの年月だったので、次はひとまずキープの年にしたいと思っています。
現状維持と言っても忙しく、そんな毎日がとても幸せなんです。これを維持してもっともっとタレントとして上に行きたいです。誰々のようになりたいというのではなく、村重というブランドを確立させたいです!
<取材・文/トキタタカシ 撮影/塚本桃>
【トキタタカシ】
映画とディズニーを主に追うライター。「映画生活(現ぴあ映画生活)」初代編集長を経てフリーに。故・水野晴郎氏の反戦娯楽作『シベリア超特急』シリーズに造詣が深い。主な出演作に『シベリア超特急5』(05)、『トランスフォーマー/リベンジ』(09)(特典映像「ベイさんとの1日」)などがある。現地取材の際、インスタグラムにて写真レポートを行うことも。