男性にカラコンってあり? 「そもそもどんなモノなの?」から始まった開発の舞台裏

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2025年02月06日 06:11  ITmedia ビジネスオンライン

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「男性向けカラコン」が登場、開発のきっかけは?

 男性向け化粧品ブランド「uno(ウーノ)」を展開するファイントゥデイ(東京都港区)は2024年11月、男性向けのカラーコンタクトレンズ「アイスーツ」(全3種類、参考価格1箱1980円)を発売した。


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 カラコンといえば、若年層の女性をターゲットにしていることが多いが、男性向けを扱うことで、新市場の開拓を目指す。現在、約200店舗のドン・キホーテと通販サイトで販売している。


 ビジネスシーンをはじめとした“勝負時”に着用することを想定し、与えたい印象によって選べる3タイプのレンズを採用。 穏やかで親しみやすい「GENTLE(ジェントル)」、冷静沈着で知的な「SMART(スマート)」、ポジティブで行動的な「ACTIVE(アクティブ)」だ。いずれも1箱10枚入りで、度なしから-6.00まで販売している。


 新商品開発の裏側と販売戦略を、ファイントゥデイ 日本事業本部 ブランドマーケティング部 IMCグループ ブランドPRマネージャー 赤阪裕実氏、ブランド統括本部 ヘアケアBU+tmr G アシスタントブランドマネージャー 田中麻衣氏に聞いた。


●カラコンは、スキンケアの「次の提案」


 1992年から若年層の男性をターゲットに化粧品を販売しているウーノ。現在、展開するカテゴリーは「ヘアスタイリング」「スキンケア」「メーク」で、アイスーツの販売により、新たに「カラーコンタクトレンズ」を追加した。


 ヒット商品も多く、スキンケア商品の「ウーノオールインワン」シリーズは、男性用クリーム市場で売り上げ1位(※)のブランドに。メーク商品の「フェイスカラークリエイター」は、累計出荷数195万個(2019年の発売から2023年4月までの累計)を突破している。


 「近年、ウーノでは『肌は大人の勝負服』というキャッチコピーを掲げて、整った肌を男性の新しいスタンダードにするための取り組みを継続してきました。その結果、オールインワンシリーズや、毛穴やニキビ跡をカバーするフェイスカラークリエイターの支持が広がりました。そして、次の提案として着目したのが『カラーコンタクトレンズ』です」(田中氏)


 社内の有志メンバーが集まったディスカッションの場で、「男性向けのカラコンってないよね」という声があり、実際にカラコン市場を見てみると、女性向けが大半だった。「それならば、男性が堂々とカラコンを使える世の中をウーノがつくっていきたい」と市場開拓に挑むことにしたという。


 報道によれば、国内のカラコン市場は1000億円規模に成長しており、2022年ごろから伸長している。対面販売で市場を牽引するのはドン・キホーテで、2023年から「カラコンフェス」と称したイベントも開催。カラコンの実店舗販売において約6割のシェアを占めるという。


●ビジネスでの“印象アップ”を狙う3タイプ


 アイスーツの開発期間は約1年半に及んだ。市場に参考商品が少ないことから、「男性に特化したカラコンとは、そもそもどんなものなのか」を考えるところからスタートした。


 「まずは、男性の瞳の色の変化による印象変化を調べました。女性向けのカラコンは、色変化に加えて黒目のサイズ感を大きくしたり、うるんだ印象をつくったりして魅力的に見せるものが多いのですが、目周りの化粧をしない状態で装着する男性には、そうした変化だとオーバーに見えてしまう。顔全体の印象が良くなるバランスのいい色やデザインを、試行錯誤しながら開発しました」(田中氏)


 調べていくうちに、男性の瞳は女性に比べて暗く見えやすいことが判明。そこで、レンズに透明な部分を細かく配置して光を集めることで、明るく見えやすいようにした。開発段階では色やデザインを細かく調整し、大量のサンプルを作成。都度、男性社員が装着して評価するサイクルを繰り返し、結果的に3タイプに絞り込んだ。


 穏やかで親しみやすい印象を目指した「ジェントル」は、カラコン初心者でも挑戦しやすいデザインだ。実際に男性社員が装着した姿を見たところ、やや目の色が明るくなり、やわらかい印象に。照明によっては、気付かないかもしれないぐらいの変化だった。


 冷静沈着で知的な印象を演出する「スマート」は、瞳の縁に黒を、内側に紫色を使い、瞳をキリッと見せるようなデザイン。3タイプのうち、デザイン面が最も小さく、瞳がきゅっと締まって見えることが知的な印象につながるようだ。


 装着後の印象変化が最も分かりやすかったのが、ポジティブで行動力のある印象を狙った「アクティブ」だ。ゴールドブラウンの色により瞳の色がパッと明るくなり、顔全体をアクティブな印象に見せている。


 同商品は、1日使い捨てタイプのソフトコンタクトレンズで1箱10枚入り。店頭価格は1980〜2200円ほどで、カラコンの市場相場とほぼ同じだという。働く男性に役立つ機能として、ブルーライトバリアやUVカットも備えた。


●「どう変わるのか分からない」不安がハードル


 現在の販売チャネルは、約200店舗のドン・キホーテ、及びいくつかの通販サイトで扱っている。ドン・キホーテと組んだ理由は、カラコン市場で圧倒的に強い販売チャネルであることに加え、日用品や食料品など幅広い商品展開ゆえに来店ハードルが低いと考えたためだ。


 医療機器であることからコンタクトレンズ売り場でしか展開できない制約があるが、女性向けのカラコン売り場ではなく、クリアコンタクトレンズ売り場の近くで販売して、男性の認知を広げていく戦略だ。購入時は、個人情報とかかりつけの眼科など目にまつわる情報を用紙に記入する必要がある。


 売上額や販売数は非公開だが、順調に伸びているとのこと。直近で販売数が急上昇したタイミングがあり、それは年明けの1月4日と5日だった。今年の仕事始めは6日という人が多く、心機一転のタイミングで購入した人が多かったようだ。赤阪氏は「異動のある4月や10月のタイミングも、売上向上が見込めるのではないか」と話す。


 「カラコンを初めて付ける男性の心理として、『急にすごく変わった』と周囲に思われるのは抵抗があるが、心機一転のタイミングで印象を変えるならチャレンジしやすいのではないかなと思います」(赤阪氏)


 3タイプのうち、最も売れ行きがいいのは印象変化が穏やかな「ジェントル」で、特にこのタイプはトライしやすいのかもしれない。とはいえ、「カラコンを付けたときの変化がよく分からない」「付けたときに周囲にどう思われるのか分からない」といった不安を抱く男性は、少なくないと田中氏は指摘する。


 「多くの男性は『カラコンは女性のもの』というイメージを持っています。付けてみたいと思ったとしても、周囲の男性が装着していない環境では、装着した自分がどう見えるのか不安があるだろうと。そのハードルを自力で超えるのは困難だと思いますので、周囲に肯定してもらえるような印象変化が起こせる点を、いかに伝えていけるかが勝負かなと」(田中氏)


 前提として、カラコンという商材は、幅広い層に向けるより特定のターゲットに絞る戦略が有効だと同社では考えている。これまでにビジネスパーソンを狙ったタクシー広告などのプロモーションを実施したが、今後は実際に試せる場をつくりたいという。


 「私の主観になりますが、付けたときに誰かに褒めてもらうことが大事なのではないかと。例えば、最初は恐る恐る付けていた男性社員が、周囲から『すごくいいよ』と褒められてユーザーになったケースもありますし、周囲の声を聞いて気持ちが変わることもあるだろうと感じています」(田中氏)


 ウーノでは、引き続き男性向けカラコン市場の拡大に注力するとともに、男性美容の新たな提案を継続する方針だ。


(小林香織)



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  • 間違った使い方や期限を過ぎても使うとか、むちゃくちゃな使い方をしてトラブルも多いですよ・・・・ 目にいれるものなのですから
    • イイネ!7
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